宙畑 Sorabatake

環境・持続可能性

【加速する衛星事業の拡大】IHIが超小型ハイパースペクトル衛星「IHI-SAT2」打ち上げに成功、森林管理や炭素クレジット事業推進【宇宙ビジネスニュース】

IHIは脱炭素化を推進すべく超小型ハイパースペクトル衛星「IHI-SAT2」の打ち上げに成功しました。SpaceXによる打ち上げや海外製衛星を柔軟に活用する姿勢からは、衛星コンステレーションの構築が加速しているIHIの事業計画が見て取れます。

2025年12月1日、IHIおよびIHIエアロスペースは超小型ハイパースペクトル衛星「IHI-SAT2」の打ち上げに成功したことを発表しました。

今回打ち上げられた「IHI-SAT2」は、リトアニアのKongsberg NanoAvionicsによって開発された6Uサイズ(約10cm×20cm×30cm)の超小型衛星です。これは同社が進める地球観測衛星コンステレーションの構築に向けた動きの一つです。

これにより、樹種や森林の状態を詳細に把握できるようになります。高精度な炭素クレジット開発など、林業のDXと脱炭素化の推進が期待されます。

IHIは、ジェットエンジンやエネルギー・産業プラントなど幅広く手掛ける重工業メーカーです。宇宙分野においてはイプシロンロケットやH3ロケット、固体ロケットエンジンやISS(国際宇宙ステーション)関連機器の開発・製造で長年の実績を持ちます。

近年は自社衛星の運用やそこから得られるデータの利活用ビジネスへも領域を広げています。

2021年にはAIS(船舶自動識別装置)受信システムを搭載した「IHI-SAT」をISSから放出し、運用に成功しています。今回の「IHI-SAT2」はそれに続く自社運用衛星となります。

加えて、IHIは将来的な地球観測衛星コンステレーションの構築を目指し、世界的なSAR衛星メーカーであるICEYEとも衛星調達契約を締結済みです。今回の「IHI-SAT2」運用で得られるノウハウは、ICEYEとの衛星コンステレーション運用にも活かされることになります。

宙畑メモ:AIS(船舶自動識別装置)とは

船舶が船名、位置、針路、速度などの情報を無線で自動的に送受信するシステムのこと。一定の大きさ以上の船舶には搭載が国際的に義務付けられており、主に見通しの悪い海域での衝突防止や、港湾での交通整理に利用される。本来は船同士や陸上の局との通信を目的としているが、人工衛星でこの電波を受信すること(衛星AIS)で、地上の設備が届かない外洋の船舶も追跡・監視できるようになる。

「IHI-SAT2」は米国のヴァンデンバーグ宇宙軍基地から、SpaceXのロケット「Transporter-15」に搭載されて打ち上げられました。

超小型ハイパースペクトル衛星(IHI-SAT2)
超小型ハイパースペクトル衛星(IHI-SAT2)
Credit : IHI

今回打ち上げられた「IHI-SAT2」は、数百もの波長帯で詳細に観測できる「ハイパースペクトルセンサ」を搭載しており、以下の実現が期待されます。

・森林の詳細な解析: 樹種(木の種類)、生育状況、病気の兆候などを高精度に識別。
・炭素クレジット事業への貢献: 樹種ごとの炭素固定量の違いを考慮した、精度の高い炭素クレジットの開発。(※炭素クレジットとは森林などが吸収したCO2の量を「価値(クレジット)」に換算し、企業間で売買できるようにする仕組みのことです。)
・迅速なデータ取得: IHI自らが衛星を運用することで、必要なエリアのデータをオンデマンドで取得可能に。

宙畑メモ:ハイパースペクトルセンサとは

人間の目に見える光(可視光)から赤外線までの光を、非常に細かく数百ものバンド(波長帯)に分けて観測できるセンサのこと。通常のカメラが「色」を見るのに対し、ハイパースペクトルセンサは物質ごとの「指紋(スペクトル)」を見るようなもので、植物の種類の判別や健康状態、土壌の成分などを詳しく分析できる。

IHIは、「IHI-SAT2」を通じて衛星データ解析と衛星運用におけるノウハウを蓄積します。また、本衛星で得られた知見は住友林業株式会社との合弁会社である「NeXT FOREST」における森林施業技術の開発に活用される予定です。

さらに、今回の打上げには「IHI-SAT2」に加え、超小型衛星事業を手掛けるアークエッジ・スペースが開発した技術実証衛星も搭載されていました。これはIHIが幹事企業として採択された「経済安全保障重要技術プログラム(K Program)」の一環です。IHIは国内スタートアップとも連携し、海洋状況把握における通信衛星コンステレーションの構築も並行して進めています。

今回のニュースで注目するべき点はコンステレーション構築へ向けた他社との連携です。

海外メーカー(Kongsberg NanoAvionics)から衛星を調達し、国内スタートアップ(アークエッジ・スペース)とは技術実証で連携するなど、適材適所のパートナーシップで衛星事業を加速しています。

「自社の技術」「国内の技術」のみにこだわらず国内外の優れた技術を持ち寄り、最速で事業化を目指す姿勢は日本の大手企業の新たな挑戦として注目です。

参考記事
超小型ハイパースペクトル衛星「IHI-SAT2」の打ち上げに成功 ~高度な衛星データ利活用による森林管理・炭素クレジット事業の推進~

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