「GOSATデータには隠された情報や知見がまだまだある」国立環境研究所に訊く、GOSAT(いぶき)シリーズの成果と展望、使い方
大気や温室効果ガスの動きには、まだ解き明かされていない仕組みが数多く残されています。国立環境研究所の3名の研究者にGOSAT(いぶき)シリーズの成果と展望、使い方を伺いました。
「温室効果ガスが増えれば地球温暖化が進む、地球温暖化が進めば自然災害の激甚化が増える……地球環境のメカニズムは、科学がすでに明らかにしているのではないか」
そう思う人は少なくないかもしれません。少なくとも宙畑編集部はそのようなことをどこかで思ってしまっていました。
しかし、今回宙畑編集部が温室効果ガス観測技術衛星「GOSAT(いぶき)」シリーズについての取材機会をいただいた国立環境研究所の3名の研究者の話を聞くと、その考えがいかに安直だったのかを思い知りました。
少なくとも、大気や温室効果ガスの動きには、まだ解き明かされていない仕組みが数多く残されています。
その最前線についてお話を伺いました。
今回お話をうかがった皆様
・地球システム領域(衛星観測センター)/センター長:松永 恒雄さん
・地球システム領域(衛星観測センター)/主任研究員:佐伯 田鶴さん
・地球システム領域(衛星観測センター)/主任研究員:八代 尚さん
(1)国立環境研究所の設立と役割の拡大
宙畑:まずは国立環境研究所の歴史から伺いたいと思います。当初の設立目的はどのようなものだったのでしょうか。
国立環境研究所(以下、環境研):国立環境研究所は、環境省の下にあるほぼ唯一の研究機関で、昨年に設立50周年を迎えたところです。
1974年の設立当時は国立公害研究所という名前でした。その名の通り、公害に関する研究を行っていたところから、気候変動を含め国内の公害に限らない研究を行うことになり、1990年に国立環境研究所と名前を変えて現在に至っております。
宙畑:1971年から1973年にかけて四大公害裁判(新潟水俣病裁判、イタイイタイ病裁判、四日市公害裁判、熊本水俣病裁判)の判決が続々と出た時代ですね。環境というとかなり幅広い印象もありますが、どのような区分けがされているのか教えてください。
環境研:私たちが所属する地球システム領域のほか、資源循環領域、生物多様性領域、地域環境保全領域……など、対象や目的に分かれた領域で研究が進んでいます。
人数は正規の研究職が200名強、さらに特別研究員といった若い方や、高度な技能をもった技術者、研究を支えるスタッフの方もいて、全体で1000名弱ぐらいの体制となっています。
宙畑:環境研が人工衛星を扱うことになったのはいつ頃からでしょうか。
環境研:衛星を用いた砂漠化や海面水温の観測については、昔から扱ってはいました。そのうえで、環境研で衛星搭載用センサーを作り始めたのは1996年に打ち上げられたNASDAの「みどり(ADEOS)」衛星による成層圏オゾンを観測するプロジェクトからでした。
その後、2002年にみどりIIが打ち上げられ、それまでの観測結果もあって、衛星自体の運用期間は短かったものの成層圏オゾンの観測はある程度研究の目途がつき始めていました。
宙畑:2025年9月16日には国連の世界気象機関(WMO)の報告書で、オゾン層の回復が進んでいるとの見解も示されました。当時の観測もあって、対策が示され、その効果が比較できるようになっているということは素晴らしいですね。
環境研:では、オゾン層の次は何か。そこで温室効果ガスを観測しようとなって始まったのが「GOSAT(いぶき)」プロジェクトです。2009年に1号機、2018年に2号機を打ち上げ、2025年6月末に3号機(GOSAT-GW)が打ち上げられました。
(2)環境のモニタリングに人工衛星が必要なワケ
宙畑:環境研の皆様にとって、地球観測衛星は環境の研究にどのように役立っていますか?
環境研:まず、CO₂やメタンといった温室効果ガスの観測は、地上で1950年代から始められています。有名なのがハワイのマウナロア観測所や、南極での観測で、非常に長い期間、高精度に続いています。その後、地上の観測点は世界中に増えています。
ただ、これらの観測方法は精度は非常に良いものの、人間が現地に行って装置を置いてこないといけないため、設置できる場所が非常に限られています。例えば、南米、ロシアのシベリア地域、アフリカの中央地域、森林地帯や湿地が多いところなど、地球上には人間が行きにくいところが少なくありません。
その点、衛星観測、例えばいぶきの場合は地球の周りをぐるぐる飛び回りながら、3日に一度同じ場所に戻ってくるので、世界中をくまなく高頻度で観測できます。私たちはもともと地上観測の濃度から地表面のフラックス(吸収排出量)を推定する研究をやっておりましたが、衛星観測により、全球規模でこれまでの地上観測では得られなかった情報を使って推定できるようになりました。
宙畑メモ:CO₂フラックスとは
地球上の陸や海が二酸化炭素(CO₂)を大気から吸収したり、大気へ放出したりしていること。
参考:https://cger.nies.go.jp/cgernews/202211/384004.html
環境研:これは研究対象としても非常に面白いものなのですが、この研究成果が今後は政策やネットゼロに向けてのCO₂、メタンの排出量削減など社会実装の方向に向かっていくでしょう。この点は地球観測衛星の大きな強みだと思っています。もちろん、地上に比べて精度は劣りますので、地上観測と衛星、両方を一緒に使っていくことが重要です。
(3)求められる精度は0.1%の誤差!? 大気観測の面白さと難しさ
宙畑:衛星データというと最近は農業や不動産、インフラ監視のような地表面(陸域)を観測する衛星にも注目が集まっています。陸域を観測する衛星と、いぶきのように大気を観測する衛星について、研究者の目線ではどのような違いがあるのでしょうか。
環境研:陸域と大気の観測で決定的に違うのは、必要な観測頻度の違いでしょう。陸域は昔であれば1年に1回、今でも1ヶ月に1回など、大きな変動が頻繁には起こりづらい対象に合わせた観測が主流です。
一方で、大気観測は1年、1ヶ月という時間ではなく、数日や数時間で観測対象が変化します。例えば、雲の分布であれば、本当に数分から数時間変われば移動してしまいますし、二酸化炭素の濃度も昼夜で変化していますので、観測時刻が3時間ずれれば計測される二酸化炭素濃度も変わってくる……そういった時間方向のダイナミックな状況というのが陸域観測と大気観測では決定的に違うと思います。
海洋観測は、陸と大気の中間に来るような時間スケールではないかなと思います。そういった時間変動の激しさは研究者としては大気観測の非常に面白いポイントです。
宙畑:温室効果ガスの衛星観測ならではの、求められる点はありますか?
環境研:誤差をいかに小さくできるかという点で、非常に高い精度を求められるのが大きな違いかもしれません。例えば、いぶきが観測するCO₂のバイアス(系統誤差)は数ppmのオーダーです。これは、今の地球大気の平均CO₂濃度が400ppmを超えているぐらいの値なので、1%程度の誤差までは精度を詰めることができているということ。その上で、私たちは地表面の吸収排出量の推定精度をより向上させるために、今の1%の誤差をもうひと桁、0.1%まで落とせないかと奮闘しています。
宙畑:とんでもないレベルの精度を求められているように思いますが、それほど温室効果ガスの濃度というものがこれから地球にとって大事になるデータであるという期待の裏返しかもしれませんね。
環境研:大気観測の中でも、CO₂は特異的に要求される精度が高いと思います。雲や雨、エアロゾルの観測はそれほどの精度は求められません。CO₂はある地点の周囲での絶対量に対しての変動の幅が小さいのです。
(4)人類はまだまだ地球のことを知らない。精度の高いデジタルツイン構築に衛星観測が役に立つ
宙畑:いぶきによる観測結果から分かった成果について、教えていただけますか?
環境研:例えば、降水量に関連して、南米のメタンの排出量が変化していることが分かりました。これは南米で降水量が増えて河川の水位が上がると、洪水の面積が広がり、メタンの排出源である湿原が増えた結果、メタンの排出量が増えたということになります。
参考記事
衛星観測が捉えた南米亜熱帯地域のメタン放出量と気象の関係 ~温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」によるメタン推定値と降水データの解析~|2021年度
環境研:このように実際の世界における温室効果ガスの濃度と、気候変動の関係というのは、いぶきのような全球を観測している衛星でないと全貌がつかめないものでした。
宙畑:降水量で湿原が増えたことによってメタンの排出量が上がったという事例について、どのようにして、仮説が立てられ、研究が始まったのでしょうか。
環境研:この研究は、世界で同時期に3つのグループが手掛けていた研究でした。環境研のグループとしては衛星観測でしか分からないような事象といった観点で、地上観測点が少ない南米で、かつ、メタンで大きな変化が見えている、という事例に注目したことがきっかけでした。
その変動がなぜ起きているか、他の気象データと見比べていたら冠水面積であるとか河川流量であるとか、そういったところと相関があることがわかり、研究として本格的に動き出したというものです。
宙畑:メタンの排出量が増えているが、原因が分からない。様々なデータと照らし合わせたらその原因が分かったということですね。人類はある程度地球のメカニズムが分かっているものだと思っていましたが、まだまだ人類は地球のことを分かっていないのだなと思わされました。
環境研:特に湿原というのはメタンの排出量を把握する上で非常に重要です。雨が降って洪水が起きて急に湿地になってしまうことや、人間活動により水田が増えており、同じメカニズムでメタンの放出が増えているなど、自然的要素と人為的要素が絡み合っていますが絡み合っています。そういった要素を総合的に把握して良いアルゴリズムを作るためにも衛星観測が重要です。そのアルゴリズムをしっかりと把握することで、精度の高いデジタルツインも作れるようになります。
宙畑:今後、こういったことも衛星観測を通して把握できると良いと期待されていることはありますか?
環境研:例えば、永久凍土です。シベリアやカナダの永久凍土からメタンの排出量が急増しているといった証拠はまだ私たちの観測データからはまだ見つけられていませんが、今後観測できる可能性があります。できれば見たくない現象でもありますが、もし観測できたならば、科学的には非常に興味深い事象です。
(5)世界最長のCO₂の衛星観測データ、データを研究し尽くす前に新しい衛星が打ち上がっている
宙畑:これまでのお話をうかがって、2009年のいぶき1号の打上げから15年以上が経過した今も、様々な研究結果が発表されており、今後も興味深い成果が出てくるのだろうなと思いました。「環境問題にデザインからアプローチ! COP29で展示される『GOSAT(いぶき)』の温室効果ガス濃度3D可視化プロジェクトはなぜ立ち上がったか」でお話をうかがったバスキュールの岩渕さんも、いぶきのデータは非常に開拓のしがいがあるデータだと話されていました。
環境研:実は、私たちもデータを研究し尽くしたとは言い切れない状況で、その中で2号機が打ち上がり、3号機が打ち上がり……と、新たな観測は次々に始まり、それに対応し続けている状況です。まだまだGOSATデータには隠された情報なり、知見なりがかなりあると思っていると思っています。
宙畑:データを研究し尽くしたと言える状況が100%だとしたら、今はどのくらい研究できているという実感がありますか?
環境研:1号機、2号機を区別しないで言うならば、とても80%という数字ではありません。50%は研究できていると思いたい、というところです。だからこそ、私たちのような研究者以外にもデータを配布して世界中の人に使っていただくのが良いのかなと思っています。
いぶきによって、過去16年間の温室効果ガスの観測データが蓄積されており、いぶきGWが無事打ち上がったことで、その設計寿命を考慮すると2032年までの23年間のデータレコードを作ることができます。この期間のCO₂データを出せるのは、世界の中でもいぶきシリーズしかありません。
環境研:過去に衛星が観測したデータは二度と取れないもので、過去に戻ってセンサを改良することもできませんが、データから精度よくCO₂の濃度を取り出すアルゴリズムであったり、得られたCO₂の濃度からCO₂の排出量を逆推定するところの計算は、これまでは計算量が莫大であるために簡略化していた部分もあります。それらの高精度化を進める余地はたくさん残っているので、研究のやりがいはまだまだあります。
(6)Tellusを介したいぶきのデータ提供に期待する未来
宙畑:研究者の方以外もいぶきのデータをより気軽に利用できる未来に向けての施策のひとつとして、Tellusとの連携があると思います。
参考記事
環境省と連携し、温室効果ガス観測データ(GOSATシリーズデータ)をTellusから公開へ
宙畑:この連携によってどのような事例が生まれることを期待されていますか?
環境研:今までいぶきのデータを主に使っていただいてきたヘビーユーザの方々は、国内外の研究機関や宇宙機関にお勤めで、基本的には全データをダウンロードするような方々でした。そういった方々にとってはデータインターフェースの問題は基本的には発生しません。
一方で、もう少しローカルな解析をしたい、期間を限定した解析をしたいといった方々にとって、これまではひとまず全データ全種類ダウンロードしてください、そこから自分でデータを選んでくださいという状況でした。
その点、このたびTellusさんからのデータ提供を開始していただき、さらにAPIを用いた部分的なデータ選択が出来るようになったということで、今まで我々が直接やり取りしていたヘビーユーザではない方々や、ローカルな解析をされる方々へのアプローチが、Tellusさんによって可能になったと期待しているところです。
宙畑:今後、実際にこういった方々、例えば、特定の業界や特定のスキルを持っている方に使っていただけると面白い事例が生まれるのではないかと期待されていることはありますか?
環境研:特に、いぶきGWの精密モードについては、世界の大都市サイズにフォーカスした温室効果ガスのより精密な観測が可能になります。そういった大都市の研究をされている方や、大都市を含む地方自治体の関係者の方、また、そういった方々へのアプローチができる方のデータ利用が進むと面白いかもしれません。
また、今までいぶきのデータと比べられる他の衛星観測データというのは、全球の海面温度であるとか降水量であるとか、比較的解像度が粗いデータセットでした。GWの精密観測モードのデータが配布されれば、キロメートル単位での温室効果ガスの観測結果を利用できるようになりますので、より解像度が高い各種観測データとの比較ができるようになると思います。そうなると、Tellusに蓄積されているいぶき以外の衛星データとかけ合わせてさらに面白い研究や事業が生まれる可能性もあるでしょう。
宙畑:ありがとうございます。最後に、これからの展望についても教えてください。
環境研:近々にはいぶきGWのプロダクトを私たちも解析し、その解析結果を皆様に公表していくというのが一番大きなポイントです。その先としては、いぶきGWの観測データや解析データが国内外の民間企業に限らず、国連であるとかWMOであるとか、そういったところで活用される日をいち早く迎えたいと思っています。
より具体的な研究テーマについてお話しすると、長らく温室効果ガスの研究をやってきたものとしては、いぶきGWでは広い観測幅(約900km)をもって観測するので、3日ごとに全球をカバーした観測ができることが非常に重要です。それからシミュレーションモデルと逆解析システムを用いて地表面における吸収排出量が計算できると楽しいと思っておりますし、わからないことも見えてくるだろうと思います。
さらには、最近は民間企業の利用や、脱炭素に向けて他国の吸収排出量の検証に使えないかといった行政的な利用など、問い合わせの種類も多くありますので、サイエンスの研究に限らない、幅広い利用が進むことを期待しています。
以下、おまけとして解析をされる際に押さえておきたい内容についても環境研の皆様に教えていただきましたので、解析してみたいという方は参考にしていただけますと幸いです。
(7)いぶきデータの解析Tips①:レベルの違いは何?
宙畑:いぶきのデータセットを確認するとレベルが1から4まであります。それぞれ、どのようなデータなのでしょうか?
環境研:いぶきのデータでは、レベル1、レベル2、レベル3、レベル4と4段階のプロダクトを作っていますが、この区分けはいぶき固有というよりも、衛星分野でほぼ一般的に使われているレベルであり、その定義となっています。
まず、レベル1プロダクトは観測データそのものです。いぶきの場合は、衛星に搭載された受動型の光学センサが、地表面の方向から来る太陽光の反射光の強度を観測したものとなっています。より正確に言うと、センサーに搭載された検出器からの電流であるとか、電圧であるとか、そういった電気信号なんですけれども、レベル1プロダクトの中では、そういった電気信号を最終的に光の強さにまで変換したものになっています。放射輝度ともいい、いぶきプロジェクトの中では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)さんがプロダクトの作成を担当しています。
そして、レベル1プロダクトの放射輝度のデータを使って実際に必要としているCO₂などの濃度を求めるところがレベル2処理と言われているものです。基本的には、観測された光の強度から地球大気または地表面に関する物理量を求めます。レベル2の段階では、空間方向はレベル1と同じで、レベル1プロダクトが取った緯度、経度、取った時刻について、CO₂濃度がこうだという結果が出てきます。
続いて、レベル3プロダクトというのは、源泉となるデータを100キロ四方ごとに平均したり、1ヶ月の平均をとったり、そういった時空間方向で平均処理または内挿処理、外挿処理をすることによって、ほぼ世界地図のような形にします。データの欠損領域を無くしたり、時空間的に連続的なデータにするような処理で、それをレベル3と呼んでいます。
そして、レベル4プロダクトはレベル1からレベル3のプロダクトをモデルに入力して計算された出力になります。いぶきシリーズの場合はレベル2プロダクトのCO2やメタンなどの濃度を入力して、あとはその濃度情報から何年、何月にどの地域からはCO₂が何トン、メタンが何トン排出されていたか、吸収されていたかといった吸収排出量の推定結果が、レベル4プロダクトに格納されています。
宙畑:教えていただいた降水量とメタンの排出量の関係に気づくきっかけとなったのはどのレベルのプロダクトからだったのでしょうか。
環境研:メタン濃度のレベル2プロダクトではなくて、メタンの排出量をまとめたレベル4プロダクトの時系列データを見て気づきました。
おそらく、レベル2の濃度で見ていても分かったと思いますが、濃度だと風向きや天候など、さまざまな影響を受けます。そういった影響をすべて取り込んだ上での吸収排出量1ヶ月に何トン出しているかというようなレベル4の数字を見て私たちは気づくことができました。
宙畑:イメージとしては、レベル1やレベル2など、生データに遡れば遡るほど多くの情報が得られるような印象があったのですが、レベル4のより具体的な、くっきりとしたデータになったものも、まだまだ研究の種が隠れており、見つけやすいという可能性を感じました。
(8)いぶきデータの解析Tips②:データを確認する際に高度は重要?
宙畑:もうひとつ、いぶきのデータは、高度別にデータを取得することができます。データを確認するうえで、まずはどの高度を見るのが一般的かについて、いかがでしょうか。
環境研:私たちのような研究者は、鉛直方向の平均濃度を見ることから始めます。ただし、鉛直方向で平均するとさまざまなものが薄まってしまいますので、まず可視化するという際は、L4Bプロダクトでの最下層のデータを見ていただくと、CO₂やメタンの吸収排出源は地表にあるため、濃淡の分布が一番はっきり出てくるので良いかと思います。
地表面付近を見ていただくと「この場所でいっぱい温室効果ガスが出ているな」とか、「海では出ていないな」とか、「季節で温室効果ガスの吸収排出量が違うな」と確認できると思います。
宙畑:事業目的、研究目的に限らず、小学生の自由研究用途としても非常に面白いかもしれませんね。
Tellusでは、環境省・国立環境研究所と連携し、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」シリーズのデータが提供されています。本取材を通して、いぶきのデータを見てみたい!という方はぜひTellusをさわってみてください。
(9)編集後記
今回、国立環境研究所のお三方のお話をうかがって、宙畑編集部が衝撃を受けたのは「まだまだ人類は地球環境が変動するメカニズムのすべてを分かっていない」「だからこそ、いぶきのデータは研究者に限らず、民間企業や一般の方でも新しい成果が今後も見つかるかもしれないしゃぶり尽くす価値のある非常に面白いデータである」という2点。現在も年間50~60の論文が国際学術誌に掲載されているそう(2025年は10月時点で77本の論文が出版!)です。
そして、いぶきGWが今年打ち上がったことで、ますます研究し甲斐のあるデータを日本が世界に先駆けて保持し続けることになったということ。
本記事をきっかけに、いぶきのデータを今すぐにでも触ってみたい!とうずうずされる方がひとりでも多く現れ、論文の発表やビジネス事例が生まれましたら幸いです。

