宙畑 Sorabatake

衛星

イーロン・マスク氏の大きな構想がさらに明らかに。SpaceX、100万機の衛星で「宇宙データセンター」、AI企業買収で宇宙×AI統合へ【宇宙ビジネスニュース】

現在の全衛星の約70倍、100万機を軌道上に配置。SpaceXの宇宙データセンター構想と、xAI買収によるAI×宇宙の垂直統合戦略をまとめました。

2026年1月30日、SpaceXはFCCに対して免許を申請しました。最大100万機の人工衛星を用いた「宇宙データセンター」の打ち上げ・運用が申請目的です。

宙畑メモ:FCC(米連邦通信委員会)への免許申請とは
FCCは米国の通信分野を管轄する独立規制機関で、電波の周波数割り当てや通信事業の許認可を担っています。衛星通信事業者が米国で電波を使ってサービスを提供するには、FCCから免許を取得する必要があります。

さらに2月2日にはSpaceXと同様にイーロン・マスク氏が創業したAI企業xAI(エックスエーアイ)の買収を正式発表。宇宙インフラとAI技術の統合に本格的に乗り出しています。

SpaceXは再使用型ロケット「Falcon 9」や低軌道衛星を利用したインターネットサービス「Starlink」を展開する宇宙企業です。Starlinkは2026年2月時点で約9,600基以上が稼働しています。

xAIは、対話型AI「Grok」を開発し、2025年にはSNSプラットフォーム「X」(旧Twitter)を統合しました。

なお、一部報道によると、SpaceXによるxAI買収後の合算企業評価額は約1.25兆ドル(約190兆円)に達し、史上最大規模のM&Aとなったとのことです。

宇宙データセンターの構想の背景には、地上のデータセンターが抱える2つの大きな課題があります。

1つ目は、AI需要によるデータセンターの電力消費の急増です。

IEA(国際エネルギー機関)によると、世界のデータセンターの電力消費量は2024年に約415TWhで、2030年には約945TWhへと倍増する見通しです。これは日本の2024年度の総電力消費量約860TWhを上回る規模です。

宙畑メモ:TWh(テラワット時)とは
1TWhは10億kWhに相当します。一般的な日本の家庭の年間電力消費量は約4,000kWhのため、1TWhは約25万世帯分の年間電力量にあたります。

FCC申請書でも2035年には約1,200〜1,700TWhに達すると言及されており、地上だけでは対応が困難になることが想定されています。

2つ目は、AI需要によるデータセンターの発熱問題に起因するものです。

AIチップは大量の熱を発生させ、地上のデータセンターでは上述した電力消費の約4割が冷却に費やされている可能性があります。また、年間数十億〜数百億リットルの水が冷却に消費されています。水資源や立地の制約がデータセンター拡大の大きな障壁になっています。

宇宙データセンターにより、これら2つの課題を同時に解決し得る構想です。太陽光発電により地上の電力網に依存せずに電力を確保でき、真空中では放射冷却によって水を一切使わずに放熱できるとのことです(ただし、宇宙データセンターの設計開発が進むにつれて更なる技術開発が必要となる可能性はあり)。

宙畑メモ:放射冷却とは
物体が赤外線を放射して熱を逃がす冷却方法。原理は地上も宇宙も同じです。ただし地上では大気が赤外線を吸収・再放射するため効率が下がります。宇宙空間は大気がなく背景温度が約3K(マイナス270℃)と極低温のため、実効的な冷却量は地上よりはるかに大きくなります。放射冷却は、放熱面が宇宙に向いてさえいれば自動で実施されるため、運用コストやメンテナンスがあまり必要ないというメリットもあります。

電力・冷却という地上データセンターの二大制約を一挙に解消し得る点が、宇宙データセンター構想の核心です。

FCC申請によると、SpaceXは高度500〜2,000kmの軌道上に最大100万機の衛星を配置します。太陽光発電で稼働するデータセンターとして運用する計画です。2026年2月時点で地球軌道上にある全衛星(約14,500基以上)の約70倍にあたります。

地上の大規模データセンターが100MW以上を消費するのに対し、衛星1機の太陽光発電能力は数kWから数10kW程度です。地上に匹敵する処理能力を得るには、膨大な数の衛星を束ねる必要があります。

さらに、低軌道 (高度2,000km以下) 衛星は高速で地球を周回するためカバーエリアが限られ、全世界へのサービス提供には密な配置が不可欠です。衛星の寿命による入れ替えも加わり、結果として100万機という桁外れの数が必要になると考えられます。

宇宙データセンターの実現には多くの機能が必要です。以下の表に課題となる主な機能と現時点のSpaceXの状態をまとめました。

そして、FCC申請のわずか3日後に発表されたxAIの買収も、イーロン・マスク氏が描く大きな事業構想の一環です。xAIのAI技術とSpaceXの宇宙インフラが一体化することで、AI・ロケット・衛星通信・データサービスを包含する垂直統合体制が構築されます。

各機能ともさらなる向上は必要ですが、宇宙データセンターが実現すれば、地上の電力網に負荷をかけずにAI計算基盤を拡張できます。例えば、世界中どこでも使えるAIサービスやドローン・ロボットの自律運用、気象・災害予測の高度化など、幅広い分野への応用が期待されます。

xAI買収により、Xによるデータ収集からAI処理、宇宙インフラまでを1つの企業体で一貫して手がける体制が整いました。この連携範囲の広さは他に類を見ません。

100万機は途方もない数字ですが、SpaceXはStarlink約9,600基以上の運用やStarshipの開発など、着実に技術基盤を積み上げています。

一方で、100万機規模の衛星がもたらすスペースデブリ(宇宙ごみ)の増大や天体観測への影響も懸念されます。国際的な軌道・周波数の規制調整への対応も不可欠です。

それでも、地上データセンターの制約を宇宙で解消するこの構想は注目に値します。AIの計算基盤を飛躍的に拡大し、産業や社会に大きなインパクトを与え得ます。宇宙×AIの動向は引き続き要注目です。

参考記事

xAI joins SpaceX to Accelerate Humanity’s Future

SpaceXの軌道上データセンターに関するFCCへの申請内容 (SAT-LOA-20260108-00016)

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