宙畑 Sorabatake

Tellusのアップデート

できることは無限大!?──トークセッションから“検出”する衛星データプラットフォーム「Tellus」の可能性

2月21日、日本初の衛星データプラットフォーム「Tellus」が公開されました。それに合わせて開催されたイベントの模様をお届けします!

今まで一般に開放されてこなかった人工衛星が撮影した画像などの宇宙データが開放され、誰でも無料で利用できるようになった2月21日──経済産業省からの委託を受け、日本初の衛星データプラットフォーム「Tellus」を開発した「さくらインターネット株式会社」によるイベントが、東京タワーの真横にあるスターライズタワーで行われました。

本イベントでは、「Tellus」が秘める無限の可能性について考えるトークセッションほか、様々な趣向をこらしたイベントが目白押し(※)でした。

※本記事では、以下4つのセッションで語られた内容をまとめました。
・衛星データプラットフォーム「Tellus」2/21にサービスローンチ!
・トークセッション①:「Tellus」で実現される宇宙データビジネスと期待すること
・トークセッション②:SPACE xDATAで当たり前になる未来社会の話
・衛星データ解析コンテスト「The 2nd Tellus Satellite Challenge」開催結果の講評

衛星データプラットフォーム「Tellus」2/21にサービスローンチ!

『Tellus』は「すでにある」という「前提」で使ってほしい!

Tellusについて説明する山崎秀人(さくらインターネット株式会社)

さくらインターネット株式会社の「xData Alliance project」シニアプロデューサー・山崎秀人さんによる「Tellus」の紹介から始まったリリースレセプションは、参加者総勢200人以上という盛況ぶりでした。

山崎さんがこの場で最も熱く語ったのは「Tellusは『できる』ではなく『すでにある』、すなわち『前提』であるということをご報告したい。たとえば、皆さんがスマートフォンでGoogleマップを使用する際は、『これでなにができるか』を考えるのではなく、当たり前にある便利なツールとして必要なときに使うといった感覚なのではなのではないでしょうか。

そういった皆さんの生活の身近なところにあるプラットフォームを目指しています」という、Tellusに寄せる想い。

「とにかく多くの皆さんに使っていただくことによって、一緒に成長していくプラットフォームであり、何回でもチャレンジできるスピード感とコストを魅力とするプラットフォームでありたいとの願いを込めて、システム開発に努めています」と、イベントの参加者に呼びかけていました。

トークセッション①:「Tellus」で実現される宇宙データビジネスと期待すること

何事も「YES」から入っていく否定のないプラットフォームに

さて! いよいよトークセッションがスタート。最初のセッションのタイトルは「Tellusで実現される宇宙データビジネスと期待すること」──『Tellus』を使った「少し先の未来」について考えるという主旨で、パネラーは、慶應義塾大学大学院特別招聘教授の夏野剛さん、株式会社B Inc. 代表取締役社長の福野泰介さん、株式会社Ridge-i 代表取締役社長の柳原尚史さん、シャープ株式会社 常務・研究開発事業本部 本部長の種谷元隆さん、それに、司会進行役を務めるさくらインターネット株式会社 フェロー兼、京都造形芸術大学教授の小笠原治さんの5人。

登場するなり小笠原さんが「平日の昼間なのに、宇宙系のイベントでここまで多くの人たちが集まってくださるのは珍しい…」と驚嘆の一言を漏らしたのを皮切りに、なごやかな雰囲気で行われました。

このセッションの自己紹介は、パネラーの方の「宇宙データ専門領域」をテーマに行われました。

トップバッター、夏野さんのトークテーマは「宇宙データ×ビジネス」。

慶應義塾大学大学院特別招聘教授の夏野剛さん
日本の宇宙産業ピラミッド。衛星やロケットの製造などを指す「宇宙機器産業」を拡大するためには、宇宙データの利用促進を行う「宇宙利用産業」のすそ野が広がる必要がある

まずは、日本における宇宙ビジネスの「宇宙機器産業」の規模が約3,500億円という現状について言及。この数字はなんと! 日本の畳産業と同程度なのだそう。

このささやかすぎる規模を拡大するには、宇宙データの利用促進によって宇宙ビジネスの周辺産業「宇宙利用産業」の規模を広げること、それにリスクマネーの供給を促進しなければならないと指摘。

「こうした問題提起から経済産業省も参加しての研究会を通じて、今回『Tellus』が立ち上げられたのは、まるで我が子が生まれてきたくらいに嬉しいですね」(夏野さん)

 

【宙畑メモ】
夏野さんは経済産業省が立ち上げた「政府衛星データのオープン&フリー化及びデータ利用環境整備に関する検討会」の座長を務められていました。

 

小型のドローンを飛ばしながらトークを始めたのが福野さん。テーマは「宇宙データ×オープンデータ」です。

株式会社B Inc. 代表取締役社長の福野泰介さん

福野さんは、2010年からオープンデータの推進に取り組んできました。そして、2012年に日本初の地方自治体によるオープンデータ公開が福井県鯖江市で始まったのは、福野さんがきっかけ。昨年の2018年には全都道府県にオープンデータがある状態になって、今は300以上の都市でオープンデータの公開が開始されています。そして「これらのデータをいかに使いやすくするかが今後の課題になる」とのこと。

最近は、IoTを使って、さまざまなリアルタイムオープンデータを収集し、様々なデータとデータとを組み合わせる試みを行っているそうです。

「IoTやドローンなどの地上データは『ミクロなデータ』、ここに衛星による『マクロなデータ』を組み合わせることによって新たなステップを踏み出せるよう、一緒に取り組んでいきたい」と、司会進行役でTellusの開発にも携わっている小笠原さんも、今後の展望を語ってくれました。

 

【宙畑メモ】
妄想ですが、著名な公園の桜の開花状況をIoTで把握し、衛星データで取得した広範囲のデータを組み合わせることで、Webサービスに載っていないようなマイナーな近所の公園の桜の開花状況も分かるようになるかもしれません。

 

ディープラーニングのコンサルティングと開発を行っている柳原さんのトークテーマは「宇宙データ×ディープラーニング」。

株式会社Ridge-i 代表取締役社長の柳原尚史さん

日本ではわずか50億円程度しか使われていないリモートセンシングの費用を大きく伸ばすため、課題となるのは「データの大きさと解析の難易度」。

Tellusに入っている画像データのサイズは10テラバイトだとか250テラバイトといった膨大なもので、しかもそれらが一日で飛んでくる。これが複数日だったりすると、とんでもないデータ量になってくるので、とてもじゃないが一人では扱えないのが実状。そうしたなかで、今後Tellusに期待するのは「センシング手法を多様化していくこと」だと柳原さんは言います。

「SARにかぎらず、ドローンのデータだってTellusに入ってくるのかもしれない。それが時系列的に拡大したり、または光学データと人流データ、または作付状況……と統計情報などが混ざることで、さまざまな知見が生まれてくるのではないか──とくに多次元化していくデータから新しい知見を出すところで、AI・ディープラーニングというものは、じつに有効ではないかと思っています」(柳原さん)

 

【宙畑メモ】
様々なデータと組み合わせ、美味しいお米を作っている事例が日本にもあります。興味のある方はぜひ「一等米比率99%の米「青天の霹靂」に学ぶ、農家のおいしい働き方改革」をご覧ください。

 

種谷さんのトークテーマは「宇宙データ×画像解析」。午前に行われた記者発表でも「本当ですか?」との声が多かったシャープの「xData Alliance(※)」への参画。トークが進むにしたがって、その理由は明らかになります。

※「xData Alliance」とは「Tellus」の開発への貢献と利用促進を目的として組成したもの。ほとんどが宇宙産業関連企業以外の、様々な事業者・研究機関・団体が、現在行っている事業の知見を生かし、主にユーザー視点からの提言(プラットフォームの使いやすさ向上のための提言など)をする場を作ることで、「Tellus」の開発をより良いものとしていきます

シャープ株式会社 常務・研究開発事業本部 本部長の種谷元隆さん

SHARP 8K Lab」という戦略のもと、研究開発事業の一環として、すでに受像器としてテレビ放送だけではなく、他のさまざまな分野にも8Kで培ってきた技術を積極的に提供していきたいと考えていた矢先の話。Tellusの取り組みを耳にして、「これはもしかして我々と同じような方向性なのではないか」と感じ、参画を決定したのだそう。

たとえば、2Kで送られてきた画像を8Kにするには、1枚の絵を16倍に引き伸ばす「超解像」という技術が必要。そのとき「自然に」、人間の目に美しく見せる動画処理をリアルタイムで行う独自のIPやLSIを、シャープではつくっています。

では、この技術をTellusの世界でどう活かせば良いのか? 静止画データが多いTellusに関しては、従来の超解像技術とAIを組み合わせれば(AI超解像)、衛星から撮ったクルマの画像もぼやけたものではなく、極端に言えば「クルマとクルマの隙間」までが見えるようになるのも可能とのこと。

「新しいビジネスをつくっていく上では、AIもたしかに重要だが、その手前にはやはり人間の発想、それに『こういうモノを創りたい』という真摯な気持ちが大切なのではないでしょうか」(種谷さん)

 

【宙畑メモ】
宙畑がとりあえずこういうことできないかな~と衛星データを使って実験してみる連載「宇宙データ使ってみた-Space Data Utilization-」のアイデア募集中です。

 

次に、パネラーの皆さんから「今後Tellusに期待すること」を一部紹介しましょう。

「Tellusは、ユーザーが載ってきて、はじめて有効活用できる性質のものなので、なるべく使いやすいかたちでアップデートし、そこにどれだけのアプリケーションが載ってくるかが重要になってきます。ただ、その法則性を供給側がなるべく限定せず、極力自由に、いろんなモノが載ってきて、新たなビジネスプランが生まれるところまで展開してくれたらいいなと期待しています」(夏野さん)

「『小学生でも使えるように』をモットーにしてほしい。なにかに興味を持った人が、それを突き詰めてステップアップする際、TellusからのAPIが気軽に使えるような環境づくりをお願いしたい。たとえば、私たちの身近にある消火栓。消火栓って鯖江市だけでも4000箇所以上あるんですよ。そして、それを地道に整理しようとすると10ヶ月もかかってしまう。そんなのは衛星でできるのであればやりたい。さらにはそれを子どもたちが自分でつくった端末で実際に探しに行く……ちょっとゲームっぽくすると、もっと街が楽しくなるのでは? 私が期待しているのはそういうことです」(福野さん)

「海外では、デジタルグローブ(※)とGoogleが共同でGoogleマップをつくっていたり……と、ビッグプレイヤーがすでに凄まじい勢いで進出してきています。なので、日本も総力で衛星を持っている人たちが必要な情報を出し合い、解析をできる人たちが一つのプラットフォームに集まって、どんどんと事例をつくっていく。そういったプラットフォームを目指すという意味では、私自身も解析事例をつくるという点で協力できれば……と考えています」(柳原さん)

※Maxar Technologies社傘下にあり、商用で取り扱われる衛星画像の中では最も解像度の高い衛星World Viewシリーズを所有し、画像販売を行う、政府ご用達の老舗企業。

「実際に触ってみて『こんなすごいデータがタダなんですか?』と驚くだけではなく、利益が出た分はきちんと還元する仕組みにまで落とし込むことができれば理想ですね。3年でそこまでは行き着きたいと考えております」(種谷さん)

さらに、種谷さんは「何事も『YES』から入っていく否定のないプラットフォームにしてもらいたい」とも『Tellus』に要望を加えます。

「我々も8Kは最初、放送にしか使わないと思っていたけど、インフラ関係や土木関係で引き合いがあったりとか……。しかし、それらも先方からの申し出があったわけではなく、我々が『こんなことで困っているんじゃないかな?』と“仮説”を立てて、仮にその仮説が100%は当たらなくても『じゃあ、こういうことはできますか?』と問いかけをいただき、ビジネスが進んでいきました。そういう役割をTellusには果たしてもらいたいですね」(種谷さん)

トークセッション②:SPACE xDATAで当たり前になる未来社会の話

ぬか床の研究と衛星データ利用の意外な?共通点

トークセッションの第二弾は、「もっと先の未来」のワクワクするような話題が満載で、タイトルは「SPACE xDATAで当たり前になる未来・社会の話」。

「私たちが生きる世界を、テクノロジーから切り取ること」をコンセプトとするメディアWIRED日本版編集長の松島倫明さんが司会進行役を務め、早稲田大学文学学術院・表象メディア論系准教授のドミニク・チェンさん、株式会社SPACE FILMS代表取締役兼クリエイティブディレクターの高松聡さん、さくらインターネット「xDataAllianceProject Alliance bussinesgroup」プロデューサーの牟田梓の4人が参加して行われました。

テーマはズバリ!「How do you use it?〜Tellus? ぼくならこう使うね〜」。
たとえば、イベント前にWIREDの取材を受けたPARTYクリエイティブディレクター・CEOの伊藤直樹さんは、こう答えています。

「個のモビリティについて語られる時代において、データを活用して『集団のアイデンティティ』について、あえて観察・思考してみるのはいかがだろうか。人間や動物など、移動体の群像を超俯瞰的に捉え、その形状を定常的に機械学習することで、AIがその人間や動物の種類を識別する。草原を移動する渡り鳥の群れ。それら群像には集団的な自己同一性があり、集団と社会の動向における関連性について新たな発見があるに違いない」

この提案をきっかけにトークは、自然と盛り上がっていきます。以下、会話形式でお届けします。

ドミニク:伊藤さんのアイデアは社会学者っぽい発想だな、と。人口動態というのは一般的には都市レベルの話に聞こえるけど、こうした技術がパーソナルで使えるとなれば、それこそ社会学者の研究にも十分応用できると思います。

高松:大規模な屋外アートフェスティバル、たとえばヨーロッパの『ミュンスター彫刻プロジェクト』(ドイツ)なんかでは街中のあちこちに点々と展示があって、それらのどの展示が見応えがあるか……などをいずれはリアルタイムでわかるようになればうれしい。今でもツイッターである程度はわかるんだけど。

WIRED日本版編集長の松島倫明さん

松島: 21世紀は「国」よりも「都市」の時代で、国と国ではなく都市と都市でつながっていく。その「都市」のなかでもう一度生活圏を組み立てていく時代になったとき、「地球」というものを示すことによって、「ああ、僕たちはみんな同じ地球に住んでいる人間同士なんだ」というパーセプションも変わっていくのではないでしょうか。そして『Tellusの解像度でもって都市を括っていくと、また人間の帰属意識も大きく変わってくるのかな……と。そこに伊藤さんの話がつながれば面白いですね。

同じくイベント前にWIREDの取材を受けたライゾマティックスクリエイティブディレクター兼テクニカルディレクターの齋藤精一さんはこう答えています。

「Smart Cityの実装やモビリティの効率化、安全・安心文脈での利用は誰でも考えることなので、私は違った角度から衛星データを使いたい。それは誰もが幼い頃に夢見たタイムマシーンだ。衛星データをアーカイヴしておけば、それは過去を見ることができるタイムマシーンにもなり得る。場所には人が存在し、そこには必ずその人の思いや記憶が存在する。そんな人類のアーカイヴプラットフォームとして使用して、多くの人の思いをとどめておきたい。いつでも過去から学べるように」

松島:「Tellusで時間軸を自由にできる」、これは牟田さん、可能なのですか?

牟田:できると思います。人工衛星という技術自体はずいぶん前から実在する技術なので、東京の20年前30年前の写真もちゃんと残っている。昔のオリンピックと次のオリンピックを重ね合わせるようなことも可能になるかもしれません。

 

【宙畑メモ】
TellusではASNARO-1という衛星データで現在建設中の新国立競技場の様子を時系列に見ることができます。
人工衛星から人は見える?~衛星別、地上分解能・地方時まとめ~

 

ちなみに、ドミニクさんは「都市の緑地や河川部の微生物叢(びせつぶつそう)を把握して、発酵との関係を知りたい」とのこと。

早稲田大学文学学術院・表象メディア論系准教授のドミニク・チェンさん

なんでもドミニクさん、最近はぬか漬けに使用する「糠床」の研究をしており、糠の表面を1ヶ月以上撮影したデータを見ていたら、乳酸菌やその他の菌の状態変化に合わせて、表面が膨張したりヘコんだりすることに気づいたのだそう。こうした発見に感動し、より深度を高めた研究を続けているうち、「もしかすると、糠床とインターネットでは同じことが起こっているのではないか?」と妄想し始めたと言います。

ドミニク:米糠は精米するとき、普通は無駄な物として処理される。それをたくさん集めて水と塩と麹を入れると、そこに乳酸菌だとか酵母菌だとか、じつに複雑な生態系が生まれてきます。そこに野菜を入れると、美味しい漬け物が出来上がるわけです。ずっと定点撮影していると、糠床がまるで呼吸しているように動いている。赤外線カメラモードで撮っているものもあって、これを機械に解析させると、人間が気づかないなにかがデータとして出てくるのではないでしょうか。

(宙畑の心の声):これは……まさに宇宙データの世界……。

 

【宙畑メモ】
衛星では通常私たちが見ている赤緑青(RGB)だけではなく、赤外線の領域でも撮影をしている衛星が多くあります。赤外線の領域を使うと私たちが目で見えるものだけではないものが見えているのです。
光の波長って何? なぜ人工衛星は人間の目に見えないものが見えるのか(宙畑)

 

2015年から800時間の宇宙飛行士訓練に入り、同年9月に訓練を終了しているという、きっての宇宙通である高松さんは、「ISS(国際宇宙ステーション)からの写真、他の衛星、探査機からの写真、航空写真とを組み合わせて、丸い地球の写真をアート作品として制作したい」と眼を輝かせます。

株式会社SPACE FILMS代表取締役兼クリエイティブディレクターの高松聡さん

高松:宇宙から見る地球の美しさを50%でも再現した写真も動画も存在しない。ISSにアーティストやフォトグラファーが撮影に行く。地球撮影を主目的とまでは言わなくとも、重要な目的とするカメラを搭載した探査機を地球軌道外に送り出し、アポロ計画の宇宙船のように遠くから地球を撮影し、Tellusで高分解能な光学センサーを持った衛星の画像データをつなぎ合わせてみたいですね。SAR画像や可視光以外の波長のデータなど衛星のデータは様々ありますが、可視光の分野でもまだまだできることがあると僕は信じています。

じつは今、丸い地球の一枚モノの写真はないんですよ。なぜなら、地上から400kmの位置にあるISSから撮影した地球は球面の一部しか見えないから。アポロ計画時代に撮った丸い地球写真は、4mほどに大きくプリントアウトしたらボケボケで画像もかなり粗くて……。

宇宙から丸い地球を目で見て帰ってきた多くの宇宙飛行士は、よく「意識が変容した」などとコメントしていますよね。その後、環境について真剣に考え、環境系の活動家になったり……。僕が言いたいのは、宇宙に行けないほとんどの人たちが、宇宙に行ったとの寸分違わない……とまではさすがに厳しいけど、「せめて90%くらいは同じ“地球”が見られたらいいな」ということなんです。

牟田:何mくらいの解像度だったらご満足いただけますでしょうか?

高松:う〜ん……1mくらい?

牟田:1mならいけると思います。今の技術だと1の解像度だと10㎞ほどで一枚のデータになるため、日本列島だと数千、数万枚といったレベルになってきますが(笑)。

 

【宙畑メモ】
衛星データの解像度とお金の話は以下の記事でご紹介しています。
日本全域で0円~38.87億円!? 衛星画像・データの価格まとめと今後の展望

ドミニク:たとえば、Googleのストリートマップの画像だけを切り出してミュージックビデオをつくっている映像作家の作品が話題になったり……。素材をどう料理するかはわからないけど、「とりあえずは開いておいて、あとは料理人の想像力に任せる」という姿勢が大切。「実利」を無視した意見なのかもしれませんが、こうして地球の文化が進化していくことも立派な「実利」だと、僕は思っています。

衛星データ解析コンテスト表彰式

コンペ形式のコンテストで人材を発掘

最後に、衛星データプラットフォームの利用促進の一環として開催された『第2回衛星データ分析コンテスト』の講評も行われました。

本コンテストは『The 2nd Tellus Satellite Challenge』と銘打ち、2019年1月18日から2月14日にかけて開催。

報告してくれたのは、16,000人ものAI人材が登録しているSIGNATEというコミュニティを運営する斎藤秀さんです。

これらのコンテストは、コンペティションの形式でそのAI技能の精度を競い合うもので、Tellus Satellite Challengeの賞金総額は200万円です。

コンペティションの形式にするメリットは以下のとおり。

●競い合うことで高精度なAIができる
●活用の限界がわかる
●人材が発掘される
●とにかく経験ができ、勝者からいろいろ学ぶことができる
●ここからアプリをつくるためのAPIをつくることが可能となる

第2回の課題は「高分解能光学衛星(ASNARO-1)データによる水域における船舶検出」

島国である日本において、海域・水上における船舶活動の網羅的な把握は、水運・漁業などの産業活動や安心・安全につながる重要なテーマ。広域を観測可能な衛星データの特性を活かし、水域における高精度な船舶検出アルゴリズムの開発を目指すことを主旨とする、「海洋大国日本」ならではのチャレンジです。

今回は448人が参加し、575件の投稿がありました。そして、1位のモデルは、半数以上の船舶の認識と船種の判別に成功したそうです。

コンテストの講評を行うSIGNATEを運営する斎藤秀さん

「参加できてうれしかった!
データの質が高い!
他の参加者とも交流したい」

「入賞できてうれしい!
TellusにおけるAPI公開や
次のコンテストに期待!」

……ほか、入賞者からの喜びの声も続々と。

ちなみに、衛星データを使ったコンテストは、世界ではすでにたくさんあるとのこと。日本でも、これからはこういった催しが活発に行われることによって、衛星データ活用の裾野が広がることを斎藤さんは心から願っていました。

イベントを終えて

以上、全8000文字以上にも及ぶイベンレポートでした。時間にして約4時間。衛星データについて、様々な分野の方々が思い思いに楽しそうに語る「Tellus SPACE xData Fes.」というイベント名にふさわしい、まさにお祭りのようなイベントでした。

このイベントをきっかけに、「Tellus」が多くの方の目に届き、実際に使っていただいている今、よりよいデータプラットフォームとして活用されるよう、宙畑も利用事例や実験結果を紹介していきたいと思います。

ぜひまだ「Tellus」を試されていない方はお試しいただければと思います。

※Tellusの利用登録はこちらから
https://www.tellusxdp.com/ja/

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