宙畑 Sorabatake

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衛星がもっと身近なインフラに?世界初「ディスク型衛星」DiskSatの商用ライセンス開始【宇宙ビジネスニュース】

Aerospaceが世界初のディスク型衛星「DiskSat」の商用ライセンスを開始。コンステレーション構築のハードルを下げ、通信や地球観測がより身近になると期待されます。

2026年2月5日、米国のThe Aerospace Corporation(以下、Aerospace)は、2025年12月に世界で初めて打ち上げたディスク型衛星「DiskSat」について、民間企業2社と商用ライセンス契約を締結したことを発表しました。

これらの契約には、Aerospaceと各企業間の技術文書やミッション計画、技術検証に関する調整が含まれています。

宙畑メモ:DiskSatとは
米国のAerospaceが開発した直径約1m、厚さ2.5cmの「ディスク型」衛星のこと。フェアリング(ロケット先端の円筒部分)に合わせた形状のため、従来の衛星(箱型)と比較して、搭載効率が非常に良い点が大きなメリットです。そのほか、薄く表面積が大きい形状のため、発電効率が高い点など多くの技術的な利点があります。(後述で詳細を記載します。)

2025年12月の打ち上げ準備前のDiskSat Credit : Aerospace

Aerospaceは、米国宇宙軍のFFRDC(連邦政府出資研究開発センター)を運営する非営利組織です。

宙畑メモ:FFRDC(連邦政府出資研究開発センター)とは
米国政府が資金を提供し、非営利組織や大学が運営する研究開発機関のこと。政府機関と長期的な関係を築きながら、独立した立場で研究開発や技術支援を行います。製品の製造や民間企業との競合が禁じられており、中立的な「技術の橋渡し役」として機能しています。

米国の国家安全保障宇宙プログラムの中核を担い、4,600人以上の専門家による知見や最先端のツールを用いて技術支援を行っています。最大の特徴は、「自社で製品を製造せず、民間企業とも競合しない」という中立的な立場です。この独自性により、官民の垣根を越えて最先端技術開発を進める大きな役割を果たしています。

2025年12月18日には、米国宇宙軍のSTP-S30ミッションの一環として、Rocket LabのElectronロケットにより4機のDiskSatを軌道投入することに成功しました。

今回SatlytとOrbotic Systemsの2社が、DiskSatのプラットフォームを活用するための非独占的ライセンスを取得しました。

Satlytは、DiskSatを用いたエッジコンピューティングや自律運用、軌道上データ処理の統合を進める予定です。また、Orbotic Systemsは、VLEOでの宇宙天候データを収集するためのセンサー「WIND(Wind Ion Neutral Density)」の試験運用プラットフォームとしてDiskSatを活用します。

大学やスタートアップが製造する10cm角サイズの超小型衛星(CubeSat)をはじめ、通常、衛星の形の主流は箱型(直方体や立方体)です。

DiskSatにはこれらの箱型の衛星にはない、以下のような特徴があります。

・搭載効率:直径1m、厚さわずか2.5cmという薄いディスク形状により、ロケットのフェアリング内に重ねて格納できます。これにより、一度の打ち上げで多くの衛星を放出でき、衛星コンステレーション構築を後押しします。

・発電効率:その薄い形状により、同じ質量でも太陽電池を貼り付ける表面積を非常に広く取ることができます。複雑なデータ処理や通信に必要な電力を十分に確保できます。

・超低地球軌道(VLEO)での運用:機体を横向きにする(薄い面を向ける)ことで、大気抵抗を大幅に減らします。同社は、高度400km以下で大気が残るVLEO、電気推進と組み合わせることにより、高度200km程度でも飛行を続けることができるとしています。より地上に近い分、通信や光学画像の取得に有利です。

これにより、地上に近い低高度でも飛行できることから、より高分解能な光学画像の取得が期待されます。また、軌道上で高負荷なデータ処理(エッジコンピューティングなど)への適用も見据え、今後実証が進められる予定です。

宙畑メモ:超低地球軌道(VLEO:Very Low Earth Orbit)とは
一般的な低軌道(高度2000km以下)よりもさらに低い、高度100km〜400km程度の軌道のこと。地上に近いため、光学画像の分解能や通信速度の向上というメリットがある一方、大気の抵抗が大きく衛星が落下しやすい。今回のような形状の工夫や燃費の良い推進系が求められる。

AerospaceのTechnology Transfer Directorであるデブ・サルヴァッジョ氏は次のように述べています。

「DiskSatは当初から産業界への導入を念頭に置いて設計されました。今回のパートナーシップは、この形状(フォームファクタ)が持つポテンシャルを示すものであり、政府・商用の両ミッションにおけるイノベーションを加速させます。」

Aerospaceは今後もDiskSatの技術移転や企業とのコラボレーションを募集しており、DiskSatをベースとした多様なミッションが展開される見込みです。

今回のDiskSatの登場により、衛星は「箱型」という常識が変わる可能性があります。単に搭載効率が高いだけでなく、発電効率や大気抵抗の削減といったメリットが多数あります。

コンステレーション構築のハードルが下がれば、いつでもどこでもつながる通信や、きめ細かな地球観測といったサービスが、より手の届きやすいものになる日が来るかもしれません。

参考

Following a successful launch, DiskSat attracts its first commercial adopters

Stacked Like Pancakes: The Aerospace Corporation’s DiskSats Ready for Launch

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