宙畑 Sorabatake

宇宙政策

アルテミス合意を軸とした米国防省の新施策「Space Catalyst Partnership」とは【宇宙ビジネスニュース】

米国務省の「Space Catalyst Partnership」は、アルテミス合意の署名国との関係を実際の協力へ広げる取り組みです。3つの手段と、ペルーでの初期案件を紹介します。

2026年9月10日、米国務省は宇宙協力の新たな取り組みの発足を発表しました。名称は 「Space Catalyst Partnership(以下、SCP)」です。発表の場は、SCPの初期案件の一つが予定されているペルーの首都リマでした。

国務省は、日本の外務省にあたる省です。米国では、宇宙に関わる省庁が役割を分担しており、軍事以外の宇宙開発は米航空宇宙局(NASA)、商業宇宙の振興と貿易は商務省、他国との交渉は国務省が担います。

国務省は、NASAとともにアルテミス合意を主導しています。2023年5月には、初の宇宙外交戦略枠組み(Strategic Framework for Space Diplomacy)を公表していました。

Credit : 宙畑編集部

SCPは、原則としてアルテミス合意の署名国を対象に、民生・商業宇宙協力を深める国務省の取り組みです。署名国は、2026年10月12日時点で76カ国に広がっています。

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宙畑メモ:アルテミス合意(Artemis Accords)とは
月や火星などの民生探査・利用に関する原則をまとめた文書です。NASAと米国務省が主導し、2020年10月に米国や日本など8カ国で発足しました。平和目的、透明性、相互運用性(機器やシステムを互いに使えるようにすること)、科学データの公開などを掲げます。法的拘束力を持つ条約ではなく、各国が署名して参加します。

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SCPでは、外交的働きかけ・対外援助・産業連携の3つの手段で協力を進めるとしています。

特に対外援助では、米国の宇宙関連製品・サービスを調達すると明記されています。初期案件の一つとして、ペルー南部への衛星インターネット導入(約650万ドル)も発表されました。

本記事では、SCPの仕組みと3つの連携方法、そして対外援助の具体例として示されたペルー案件を紹介します。

(1)アルテミス合意の署名国が対象。Space Catalyst Partnershipの仕組みと3つの連携方法

SCPはアルテミス合意そのものではなく、米国務省が運用する米国側の取り組みです。

国務省はこれを「flagship initiative(旗艦イニシアチブ)」と呼び、「米国の商業宇宙の優位を確保する」ための看板となる施策と位置づけています。

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各国の中でもSCPの対象となるのは、署名国の政府、産業界、宇宙機関、研究機関と幅広く、商業連携に限りません。「商業パートナーシップと科学協力」の双方を通じて、これらが米国の宇宙産業を活用する機会を広げることを目指しています。あわせて、宇宙の安全で平和的、透明な利用の確保もうたっています。

またSCPでは、外交的働きかけ、対外援助の重点的な活用、産業連携という3つの連携方法があるとリリースで紹介されています。全体像を図に、リリースに挙げられた活動例を表に整理しました。

Credit : 宙畑編集部
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中でも注目したいのが対外援助です。国務省は、新興宇宙国のために米国の宇宙関連製品・サービスを調達するとしています。

官民の組織に米国の宇宙能力を取り入れ、宇宙以外の分野の発展につなげる方針も示しています。対象として挙げられているのは、重要鉱物、農業、交通、通信、金融、エネルギー、医薬品などの分野です。

(2)農村の接続世帯は25.0%。ペルー南部で計画される衛星インターネット事業

対外援助の初期案件の一つとして発表されたのは、ペルー南部の地方部に衛星インターネットを届ける事業です。対象は地方の学校、中小企業、コミュニティセンター、公共機関で、規模は約650万ドルです。

国務省は議会と連携して事業の立ち上げを進めており、実施は資金の確保が前提です。サービスを担う事業者名は、まだ示されていません。

ペルーでは、都市と農村でインターネット環境に大きな差があります。ペルー国家統計情報庁(INEI)は、2026年1〜3月期の世帯のインターネット接続状況を公表しています。接続世帯の割合は、リマ首都圏の82.7%に対し、農村部では25.0%にとどまります。

ペルー議会でも、この格差への対策が議論されてきました。2024年5月には、インターネットを提供する衛星の導入を国の重要課題とする法案が、議会の委員会で可決されました。

米国との関係では、ペルーは同じ2024年5月にアルテミス合意に署名しています。

国務省はこの事業を、ペルーのような優先国が宇宙関連の技術やサービスを経済に取り入れるのを支援するものとしています。

今後の注目点は、ペルー以外の案件の中身と資金の裏付け、そしてサービスを担う事業者です。また、SCPは産業連携で、西半球(米国以外の南北アメリカ諸国)、東アジア・太平洋、その他の優先市場を挙げています。

アルテミス合意は、宇宙活動の原則を各国が共有する取り決めです。SCPは、その署名国との関係を、3つの手段を通じて実際の協力へ広げようとする取り組みと言えます。原則の共有にとどまらず、署名国と米国の宇宙産業を具体的に結びつけようとする姿勢を示した発表でした。

さらに、 宇宙の技術を農業や交通、通信、金融、エネルギーなど、宇宙以外の分野に取り入れることも掲げています。こうした分野に宇宙の技術が広がれば、食や移動、決済など、暮らしの身近な場面を支えることにつながると考えられます。ペルー南部の衛星インターネット事業も、宇宙の技術が暮らしを支える取り組みの一つです。

SCPが優先市場に挙げる東アジア・太平洋には、署名国である日本も含まれます。日本を含む署名国と米国の間で、SCPを通じた新たな協力が生まれることが期待されます。

参考

Launch of the Space Catalyst Partnership to Secure American Commercial Space Superiority

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