衛星データ活用アイデア考案のヒントと衛星データ民主化の片鱗を見たイベントレポート
2019/2/21に行われた「Tellus SPACE xDATA Fes.」の第3弾! 「アイデアワークショップ」であがったアイデアと、アイデアの生み出し方を紹介します。
今まで一般に開放されてこなかった人工衛星が撮影した画像などの宇宙データが開放され、誰でも無料で利用できるようになった2月21日──日本初の衛星データプラットフォーム「Tellus」のオープンに合わせて開催されたイベントが、東京タワーの真横にあるスターライズタワーで行われました。
本記事ではイベントの終幕、交流会の時間に行われた「アイデアワークショップ」の内容をまとめています。
(1)Tellusアカウント登録数7000個突破!!
今回のイベントには総勢200名以上の参加者が訪れ、記事執筆時点ですでにTellusのアカウント登録数は7000個超。
宇宙機器産業の従業員数が9000人弱であることを考えると、それに近い数がTellusの利用登録をしていただいたということになります。
限られた人のみが扱えた衛星データが、より一般の方の手の届くものになること(衛星データの民主化)により何が起こるのか。宙畑編集部は本イベントの「アイデアワークショップ」で、その片鱗を垣間見ました。
(2)衛星データの民主化の片鱗を見た「アイデアワークショップ」
「できることは無限大!?──トークセッションから“検出”する衛星データプラットフォーム『Tellus』の可能性」で紹介したように、衛星データ活用について様々な視点を持つ有識者の方々が当日のイベントでは語り合いました。
そこで、衛星データの可能性を知った参加者の方にも、ぜひ衛星データ活用についてアイデアを自由に出し合ってみようという趣旨で、交流会と並行して催された企画が「アイデアワークショップ」です。
以下、アイデアワークショップで実際に用いられたワークシートと、そこで生まれたアイデアの一部をご紹介しています。
ぜひ以下の記事を読んだあとに、読者の皆さんも参加者になった気持ちで、衛星データ活用のアイデアを考えてみてください。
できることは無限大!?──トークセッションから“検出”する衛星データプラットフォーム「Tellus」の可能性
(3)アイデアワークショップの進め方
衛星データを使って何ができるか考えてみましょう、と突如言われても、何ができそうか、発想できる方は少ないのではないかと思います。
そこで、今回のイベントでは下記のようなxData(クロスデータ)アイデアワークシートを用意しました。
考える幅を少し限定することで、アイデアが発想しやすくなるのでは?ということでこのような形となっています。
そして、「衛星データの〇〇な特徴を活かして、衛星データの〇〇と地上データの〇〇を重ね合わせることで、〇〇が分かるようになる」というシンプルな構文に落とし込んでいます。
サービス名までつけることで、データがどのように使われるのか、想像がしやすくなりますよね。
今回は、参加者の方々が考えたアイデアを、より形にし、参加者同士で共有いくという意味合いも込めて、グラフィックレコーディングも合わせて行いました。参加者が発したアイデアを、具体的なイメージとしてプロの方が絵に落とし込んでくれるため、楽しみながらアイデアがどんどん出てくることを狙っています。
皆さまもぜひ、アイデアシートをダウンロードして使ってみてください。
(4)実際に生まれたアイデア
さて、実際に出てきたアイデアをご紹介しましょう。
「空き家予想」サービス
衛星から「庭に生える植物の育成状態を観測」することで、空き家を検出することを目指します。不動産情報とも連動させることで、不動産には登録されていないけど人は住んでいなさそう、という家を検出できるようになるので、不動産の方も営業しやすくなるかもしれませんね。
「花粉危険地帯お知らせ」サービス
スギやヒノキが植えられている大まかな地域は分かっていることをうまく活用して、衛星から「風向きや温度」が取得できることを利用し、いつどの時期に、どの地域にどの程度の花粉が飛散してくるか、を教えてくれます。なるべくなら花粉が少ない地域に住みたい私にとっても、リリースが待ち遠しいアプリです……。
「ロットビルディング」サービス
1年間でビルが新たにどの程度建設されるかを予測し合うゲームです。高分解能な衛星データをうまく活用し、建設予定地を割り出すことで、どの程度のビルが増えるのか、予測することが可能だろう、ということを利用しています。衛星は広範囲を上空から撮影しているので、地上に住む私たちには気が付けないことであっても、気が付くことができるようになるかもしれません。
国内であれば頑張って回れるかもしれませんが、国外のどの都市にどの程度のビルが新たに建設されて、ということを実際に行って確認するのは難しいですよね。ただ、新たなビルの建設が何棟行われるのか、というのはその都市の活性度合いを測る指標だとすると、把握できることはビジネスを行う上で非常に重要かもしれません。
「スペースムー」
世界各国で生じている不可思議な現象を衛星データを通して見てみよう、という試みになります。たまに生じるバミューダトライアングル(やミステリーサークルなんかも)のような奇怪な現象も、定期的に観測する衛星ならば、いつどのように生じたのか見えるのではないか?ということが発端になっています。なぜそのような現象が生じるのかがわかっていないことであっても、観測した結果と様々なデータを組み合わせて分析することで、発生原理を明らかになることもあるかもしれません。
「おいしさキャッチ米」
実際にすでに実施されている事例です。宙畑編集部でも青森県へと取材に伺いましたので、「一等米比率99%の米「青天の霹靂」に学ぶ、農家のおいしい働き方改革」をご覧ください。
(5)まとめ
今回は限られた時間で行ったワークショップでしたが、参加者の方が「ビジネス」という枠に囚われすぎない自由なアイデアが当日は飛び交い、そのアイデアが結果的にビジネスに繋がる可能性を感じました。衛星データの民主化が進むことで、実際にそのアイデアが実現し、既存のビジネスをアップデートするかもしれません。
また、今回使ったワークシートのみならず、アイデアの発想方法はたくさんあります。
衛星データを利用したサービスは、まだ実際に広く普及しているわけではありません。
しかし、衛星データを使ったサービスを実現できれば、そのサービスは国内のみならず、国外にも応用できるものが多いかと思われます。
今回、衛星と地上で観測できる情報をいくつか提示していますが、これ以外にも取得できる情報はいくつもあります。また、今回は1つの衛星データと1つの地上データを組み合わせてみるアイデアワークシートになっていましたが、実際には複数のデータ同士を組み合わせることで、分かることも多くあります。
アイデアの組み合わせは無限大なxData。皆さまも衛星データを使ったサービスをぜひ考えてみてはいかがでしょうか。