宙畑 Sorabatake

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平成までの宇宙ビジネスを振り返る!【週刊宇宙ビジネスニュース総まとめ 1989/1/8~2019/4/30】

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!

いよいよ平成から令和へと和暦が変わりますね。時代の移り変わりを機に、平成でどのような出来事が宇宙分野であったのか振り返ってみました。

皆さまは、どのような出来事が印象に残っていますか?

例えば私がパッと思いついたのは、

  • 日本人(秋山氏)が初めて宇宙へ行った(1990年)
  • GPS携帯が誕生した(2001年)
  • 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が誕生した(2003年)
  • 小惑星探査機はやぶさが打ち上げられた(2003年(帰還は2010年))
  • 国際宇宙ステーションが完成した(2011年)

でした。

宇宙開発史というと幅が広いので、宇宙データビジネスという切り口に絞り、「地球観測・気象編」「通信・放送編」「位置情報編」の3編でお届けします。

(1) 衛星データ利用の変遷:地球観測・気象編

まずは地球観測・気象データの話題から。

98年にアメリカで商業宇宙法が成立したのを皮切りに、99年に高性能(地上分解能1 m)な光学衛星であるIKONOS-1がGeoEye社により打ち上げられ、民間でも衛星画像の利用が始まったのです。

つまり、平成に入ってから地球観測データを活用した宇宙ビジネスは始まった、とも言えます。

欧州では無料な衛星データプラットフォームを展開しているCopernicusプログラムが始まり、それまではアメリカが運用しているLandSatプログラム一択だった無料で利用できる地球観測衛星のデータの選択肢が大きく広がりました。

現在のGoogle Earthの基となったKeyhole Earthviewも誕生し、衛星データと衛星データ解析プラットフォームを一括でユーザに提供する、という試みが始まったのも、つい最近です。

また、多くのスタートアップが平成に入ってから創業したことも平成を語る上で欠かせません。

高性能な光学衛星を多数有するDigitalGlobe社や、現在350機以上の超小型衛星を運用しているPlanet社、Googleに買収されたことで有名となったSkybox Imaging社(現在はPlanetに売却されている)などがあります。

日本でも、2003年に打ち上げられたCubesatと呼ばれる10cm立法の超小型衛星を開発したメンバーが中心になって創業したアクセルスペースの他、QPS研究所やSynspectiveと言ったスタートアップも誕生しています。

総じて、従来までは国主導だった中で、平成に入ってからは民間主導の宇宙開発の動きが多くありました。

(2) 衛星データ利用の変遷:通信・放送編

通信衛星は地球観測衛星に比べると早い段階で商用化が進んでおり、例えば1964年の東京五輪の様子も、衛星を介してアメリカで中継されていました。

通信サービス関連のスタートアップとしては、ロケットの分野でも宇宙ビジネスをけん引しているSpaceXは2002年、ソフトバンクの大型出資で注目されたOneWebは2012年、衛星によりIoTデバイスから情報を回収しようと試みているKepler Communicationsは2015年に、それぞれ創業しています。
令和は、多くの通信衛星が打ち上ることで、地上に携帯の基地局は不要だね、と世論が中心になる時代となるかもしれません。

日本では、2008年に初の国産商用通信衛星であるSuperbird-C2が打ち上げられました。スーパー301条の影響もあり、なかなか国産の商用衛星が採用されていなかった、という背景もあります。

(3) 衛星データ利用の変遷:位置情報編

GPSが世界的に本格的に利用可能になったのは1993年。これに先行して、1990年には、パイオニア社が世界で初めてGPSを利用したカーナビを販売しました。

位置情報を取得する機能が携帯に組み込まれ始めたのは2001年と平成に入ってから。スマホが誕生した1996年以降は、位置情報を利用した地図やゲームなど、一般にも広く普及していきました。

日本版GPSと呼称されることも多い、みちびき。この初号機が打ち上げられたのは2010年。本格運用開始は2018年でした。センチメートル単位で位置を特定可能なみちびきを用いたサービスは今後も増えていくと期待されており、農機の自動運転のみならず、自家用車などの自動運転も令和では行われているかもしれません。

(4) 平成宇宙ビジネス史まとめ

以上、宇宙データビジネスという切り口に絞って国内外の出来事をご紹介しました。

ご紹介した以外にも、多くの出来事はありますので、一部ロケットや有人分野なども含めて、以下の図にご紹介します。

平成は民間主導の宇宙ビジネスの種が多く芽を出した時代でした。
令和は、その芽が成長し、宇宙ビジネスがどのように社会実装されるのか、評価する時代となりそうです。

衛星で地上を撮影する頻度は1日1回以上となり、民間人も宇宙旅行ができる、さらには人類が月や火星に降り立つ時代になるだろうと言われています。

衛星データの価格も徐々に下がり、中には無料な衛星データも多く出てきています。更新頻度も地上分解能もあがってきており、衛星データ(などを含めたビッグデータ)を利用したビジネスもどんどん創出され、私たちの生活を便利にしてくれることでしょう。
(実際に、衛星データのみならず、地上データのオープン化も、近年各国で進んでいます。)
余談ですが、少子高齢化が加速している日本では、労働人口が減るため、今まで人手をかけて解決していた仕事が徐々にこなせなくなるかもしれません。人手不足を補るための各産業のデジタル化は喫緊の課題と言え、このような観点からも各種データを利用したビジネスは、世界に先駆けて日本で広く浸透していくかもしれません。

いまだ衛星データを利用したビジネスについては主役・王道がでてきていない状況です。
この主役に、読者の皆さんもアイデア次第ではなれるかもしれないのです。

誰が主役になってもおかしくない時代、どのような変遷が今後あるのか、楽しみですね。

参考記事