宙畑 Sorabatake

特集

2018年、宇宙ビジネス業界で何が起こったか~5つの注目ポイント~

2018年、宇宙ビジネス業界で起きたことやトレンドを、大きく5つのトピックに分けて紹介します。最後には2019年宙畑注目のトピックも

2018年、皆さんにとってはどんな年でしたでしょうか?

宇宙ビジネス業界の2018年は、新しい動きが多く見られました。

宙畑では、2017年の宇宙ビジネスニュースまとめで、2018年のキーワードとして「小型SAR」、「小型ロケット」の2つを挙げましたが、その2つが正に盛り上がった一年となりました。

本記事では、2018年に起きた宇宙ビジネス業界の5つの注目ポイントを振り返っていきたいと思います。

(1)人類初、民間月面飛行へ

イーロンマスク氏のロケットに乗り、前澤友作氏が月を目指す
Credit : CHRIS CARLSON/ASSOCIATED PRESS

2018年最も宇宙ビジネスニュースを騒がせたのは、ZOZOTOWNの前澤社長がイーロンマスク氏のロケットで月面旅行をすることを発表したニュースでしょう。

前澤氏は、6~8人の画家や歌手、映画監督などのアーティストを引き連れていくそうです。月に行くまでの情報発信や、月に行った際にどのようなコメントを残されるのか、帰ってきてからどのような催しがあるのか、などなど楽しみなことが盛りだくさん。

また、今年はSpaceXを始め、いくつかの民間企業が人を乗せて宇宙機を飛ばす予定。民間による有人宇宙開発の幕開けともなりそうです。

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(2)NEW SPACEいよいよ本格化

NEW SPACEと呼ばれる、宇宙ビジネスにおける新しい潮流がいよいよ本格化しました。

質量70kgの小型レーダー衛星 ICEYE-X1
Credit : ICEYE

宙畑でもたびたび取り上げている「小型SAR」、その代表格であるICEYEが1月に初号機を打ち上げ無事撮影に成功したのは大きな一歩と言えるでしょう。

続けて12月に打ち上げた2号機は、なんと打ち上げ後4日で初画像を公開するというSAR衛星としては異例といえるスピードを実現しました。

Rocket Labが公開した新しい工場。打ち上げを待つロケットが何機も並ぶ。 Credit : Rocket Lab

ロケット界隈では、そんな小型衛星を打ち上げるための「小型ロケット」と呼ばれる開発が進められています。

こちらも数多くのスタートアップが乱立している状況ですが、その中でも頭一つ飛び出しているのがRocket Labです。

2018年1月に初めて衛星を搭載したロケットの打ち上げを成功させました。その後順調に打ち上げ・顧客獲得を行っており、ここまでのところ上手くビジネスを進められていると言えそうです。

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(3)変化を迫られる既存ビジネス

旧来からの重厚長大な静止軌道向け通信衛星 Credit : CNW Group/Maxar Technologies

NEW SPACEの機運の高まりを受けて、既存の宇宙ビジネスは変化を迫られています。

2017年のまとめでもお伝えした、静止軌道の通信衛星需要の減少ですが、この煽りを受け業界大手のSpace Systems/Loral社が静止衛星市場からの撤退を発表。

静止衛星市場から地球低軌道市場への転換というSpace Systems/Loral社の判断に、業界全体に激震が走りました。

今後、Space Systems/Loral社に追従する動きがみられるのか、注目です。

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参考

Maxar trying to sell GEO business as defective components compound troubles

Maxar considering exiting GEO satellite manufacturing business

(4)SaaS化する宇宙ビジネス

Credit : sorabatake

IT界隈で近年良く耳にするSaaS。「Software as a Service」の略でクラウド上で動くソフトウェアのことです。GmailなどもSaaSにあたります。

旧来では各個人のPCにソフトウェア(ex. メールソフトなど)をインストールして使っていましたが、オンラインで提供することでユーザー側にとっては①導入コスト削減②専門知識が不要③セキュリティの向上などのメリットがあります(※1)。

宇宙ビジネスでも同様の動きが起きています。

これまではサービスを提供したい会社が衛星を所有し打ち上げロケットを手配、衛星を運用するためのアンテナを所有・運用し、得られる衛星画像などのデータをそれぞれのデータサーバに保管していました。

これに対しAWSは今年、アンテナやデータサーバをサービスとして提供するビジネスを開始すると発表しました。それぞれを自前で用意すると大きなコストが必要となるため、宇宙ビジネスへの参入障壁を大きく下げる要素となりそうです。

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また、打ち上げた後の衛星に対してサービスを提供する試みも始まっています。

「軌道上サービス(In-Orbit Servicing)」と呼ばれるサービスで、例えば軌道上の衛星に燃料を給油し寿命を延長させたり、衛星を修理したりといったサービスを提供するビジネスが計画されています。

これらの動きはこれまでの衛星ビジネスにおけるバリューチェーンを大きく変える可能性を秘めており、目が離せません。

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(5)宇宙利用がいよいよ実ビジネスへ

宙畑でもたびたび紹介してきました「衛星データが我々の生活にどう役に立つのか」について、2018年は一つ大きな動きがありました。

世界の最新金融ニュース、マーケット情報、市場の分析や、マーケットデータ、金融情報を提供するBloomberg社が、衛星データ解析を行うOrbital Insight社の情報を自身のサービスの一つとして提供し始めたニュースです。

これまで衛星画像がよく用いられていた農業などの一次産業分野に加えて、金融市場が衛星データを商品として取り扱い始めたことは、宇宙ビジネスとして一つの変化点と言えるでしょう。

参考

Orbital Insight Data Now Available on the Bloomberg Terminal

(6)2019年、注目ワードは「民間月探査」「衛星データプラットフォーム」

上記のような2018年の動きを受けて、2019年宙畑が注目するのは「民間月探査」「衛星データプラットフォーム」の2つです。

民間月探査

2019.1.3に月裏側へと人類初着陸に成功した嫦娥4号(Chang'e-4)からの映像 Credit : China National Space Administration

2007年から2018年の期間で開催されていた月面レース「Google Lunar XPRIZE」は、月面にたどり着くプレイヤーがいないままに幕を閉じました。

しかしながら、レースに参加していた各企業はそれぞれ独自に月面を目指すことを宣言しました。実際に、いくつかの企業は2019年に月面に着陸予定であり、2019年は月探査の話題が多くなりそうです。

早速1月3日には中国の探査機が月面裏側へと人類初着陸に成功、同日に着陸時の映像を配信しています。2月にもイスラエルの探査機(SpaceILとIsrael Aerospace Industries (IAI))が月へと着陸予定です。

その他にも、昨年NASAが選定したCommercial Lunar Payload Services(CLPS)の選定プレイヤー9社も、続々と月へ宇宙機を送り込む予定です。この9社以外にも、月への輸送機を開発している企業はあり、今後盛り上がること必至です。

資源探査はビジネス化が難しいと言われていますが、各プレイヤーがビジネス化を目指して前進し続けています。何をどう売るのか、いくらぐらいで売れるのか、どのようなビジネスモデルとなるのか、ということが未知数な資源探査分野ですが、そのビジネスとしての成立可能性が今年分かるかもしれません。

日本のベンチャーであるiSpaceも2020年に月へと宇宙機を送り込む計画です。XPRIZE財団による月面レースは終了したものの、盛り上がりを見せている月探査分野が今後どうなるか、注目しましょう。

探査分野に関連する企業をリストにまとめていますので、よろしければご利用ください。

衛星データプラットフォーム

衛星利用が本格化し始め衛星画像を扱えるプレイヤーが増えてきたことによって、プラットフォーマーが出現し始めています。

Credit : sorabatake

アメリカではGoogle Earth Engineが非商用利用限定ながら地球全域の様々な政府系衛星画像を扱えるプラットフォームを整備、商用では世界最高解像度の衛星を所有するDigital GlobeがGBDXというプラットフォームを用意しています。

ヨーロッパでは、Copernics(コペルニクス)と呼ばれるプログラムが開始しており、5つのデータプラットフォームが展開しています。

また、日本では宙畑も公式メディアとして参画する衛星データプラットフォーム「Tellus」の整備も進められています。

共通するポイントは、「衛星データを使う」ことのハードルを如何に下げるか。単に衛星データが触れるだけでは、利用が爆発的に増えることはありません。宙畑として、メディアとしてできることを考え、実行していきたいと思います。

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