宙畑 Sorabatake

ニュース

進む民間ロケット開発、それを支えるアメリカの官需【週刊宇宙ビジネスニュース 4/29~5/5】

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新! 今週は、連休中に打上げ成功が続いた大小様々なロケットのニュースをまとめてお届けします。

依然として安定した地上インフラの官需

今週は、ロケットベンチャーのニュースが盛りだくさんでした。

【小型ロケット】インターステラテクノロジズ・Rocket Lab

インターステラテクノロジーズ打上げ成功

ホリエモンが取締役を務める日本のインターステラテクノロジーズは、低価格かつアメリカからの規制を受けない民生品を利用した小型ロケットMOMO3号機の宇宙空間への打上げに初めて成功しました。同社は観測用ロケットと小型衛星などの軌道投入用ロケットを、低コストに提供することを目標に開発を進めています。

MOMO3号機打上げ Credit : 毎日新聞社

打上げや記者会見の様子はこちらからご覧いただくことができます。

MOMO3号機打上げカウントダウン

MOMO3号機打上げ記者会見

Rocket Lab、アメリカ国防衛星の打上げ成功

アメリカのRocket Labは、優れた柔軟性を持つ衛星打上げシステムとして提供するエレクトロンロケットでアメリカ国防衛星の打上げに成功しました。従来は中型以上のロケットが中心だった国防系のミッションですが、同社はさらに3つの同様のミッションを予定していることを発表しました。

Rocket LabのElectron打上げの様子 Credit : Rocket Lab

【中型ロケット】SpaceX

SpaceX、ISSへの物資調達のためFalcon9ロケット打上げ成功。

イーロン・マスク率いるSpaceXは、ISSへの物資補給ミッションとして同社のFalcon9ロケットの打上げに成功しました。現在、ISSへ物資補給ができる民間ロケットは同社とOrbital ATK、2019年より追加になったSierra Nevada Corporation(SNC)、三菱重工などですが、その中でも再利用が可能なロケットはFalcon9だけ。ISSでの実験結果を持ち帰ってくることが可能です。

SpaceXのFalcon9ロケット打上げ Credit : NASA TV

【有人ロケット】Blue Origin

Blue Origin、有人宇宙船New Shepardのテストフライトに再度成功。

ジェフ・ベゾス率いるBlue Originは、有人飛行を目指す同社の宇宙船New Shepardのテストフライトを再度成功させました。同社は1月にも同一機体で飛行を成功させており、今回が2回目の成功となります。同様のミッションを目指すVirgin GalacticやStarshipでは、すでに搭乗者募集をほぼ完了させている中、Blue Originは確実に安心・安全な宇宙船となるまでチケット販売をしない方針としています。

Blue OriginのNew Shepard実験機打上げ Credit : Blue Origin Webcast

適切なタイミングでのオープン化が、ロケット開発技術オープン化のカギ?

先日アメリカ空軍が、国内の民間打上げサービスプロバイダ向けに、国家安全保障宇宙打上げフェーズ2打上げサービス調達(LSP)を実施すると発表しました。LSPは、2020年から2024年までの打上げサービス調達を行います。5年間約25のミッションが予定されており、1社はそのうちの60%、もう1社は40%を担うことになっています。このミッションには年間およそ10億ドルが投入される見込みで、現在の国内セキュリティローンチプロバイダーであるUnited Launch AllianceとSpaceXにさらにBlue OriginとNorthrop Grummanも新規参入した中から2つのベンダーが選出される予定です。

ロケットは、大きく3つの種類に分けられます。
①観測ロケット
②輸送ロケット
③有人ロケット

観測ロケットであれば、「実験したい時にすぐに打上げられること」
輸送ロケットであれば、「機器が故障せず正確な軌道に輸送できること」
有人ロケットであれば、「安全・安心に人間が輸送でき、戻ってこれること」
と、目的が違えば、それぞれの要求仕様も変わってきます。

アメリカでは、コンステレーション計画の影響により民間需要の伸びていることだけでなく、従来国が開発・打上げしていた国防系の衛星の輸送も宇宙ベンチャーにオープンになってきているという流れもあり、特にここ数年は、輸送ロケットの競争が高まってきています。

①〜③の民需により宇宙ベンチャー企業の技術力の向上をしっかりと国が見定め、適切なタイミングで①〜③の官需もオープンにすることで、アメリカ以外の国でも、ロケット開発技術のオープン化が加速していくのかもしれません。

今週の週刊宇宙ビジネスニュース

参考記事

参考

Air Force requests bids for space launch services, will select two companies in 2020|SPACENEWS

Falcon 9 launches Dragon cargo spacecraft to ISS|SPACENEWS

Blue Origin reaches space again on latest New Shepard test flight|SPACENEWS

Rocket Lab to launch Air Force satellites|SPACENEWS

Rocket Lab successfully launches three R&D satellites to orbit for the U.S. Air Force|Rocket Lab

飛行中の姿勢制御は完璧、1号機の課題を克服しMOMOは次のステージへ|マイナビニュース

MOMO3号機の打ち上げは成功! 日本初の民間宇宙ロケットが誕生|マイナビニュース