衛星データプラットフォーム、群雄割拠の戦国時代へ【週刊宇宙ビジネスニュース 9/16〜9/22】
一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!
衛星データプラットフォームに関する発表が相次いだ一週間
今週は、衛星データプラットフォームに関するニュースが数多く発表されました。
一口に“データプラットフォーム”と言っても、中身は様々です。
今回はニュース発表のあったプラットフォームそれぞれについてご紹介していきます。
Picterra、3.3億円の資金調達
衛星データ利活用が進んでいるのは欧州です。
スイスの企業で衛星データプラットフォームを開発しているPicterraは、9月18日約3.3億円の資金調達に成功したことを発表しました。
Picterraのプラットフォームでユニークなのはユーザーコミュニティがドライブする点です。彼らは自身のデータや深層学習アルゴリズムに関する専門知識を継続的にアップデートしながらプラットフォームにプールしていく仕組みになっています。
プラットフォームの一部は無料で使うことができますし、有料でストレージや解析の処理能力をあげることも可能です。
AIRBUSの衛星データプラットフォームUP42が公開
同じく欧州から、新しくオープンしたのがAIRBUSのUP42です。
スタートアップやアプリケーション開発者が農業や物体認識変化抽出のアルゴリズムにアクセスできるようになっています。
具体的には農地の中で水や肥料が必要な箇所を特定するツールを提供したり、自動車や船舶、風力発電や石油タンク検出のツールも提供しています。また、複数の画像を比較して、変化抽出のツールも含まれているとのこと。
プラットフォームの利用料金は、プラットフォームの使用量に応じて6万円から100万円のプランまで用意されています。
農業系に特化したプラットフォーム”EOS Crop Monitoring”
農業系のプラットフォームを同じ週に発表したのは北米の”EOS Crop Monitoring”です。
衛星画像をAIによって分析することによって、農業に関する様々な指標を算出できるプラットフォームとなっています。
同プラットフォームを開発するEOS社によると、農地管理をデジタル化することによって場所に寄っては5-20%のコストアドバンテージを得られるとのこと。
米空軍向けプラットフォームは衛星から直接受信
ここまでご紹介したプラットフォームは民間利用を想定したものでしたが、政府向けのプラットフォームも準備が進んでいます。
アメリカの空軍はCommercially Augmented Space Inter Networked Operations(CASINO)プロジェクトに、衛星データ利用の知見を持つBall aerospace社と世界中でクラウド”Azure”を提供するMicrosoft社を選定しました。
プロジェクトでは、Microsoft社のAzureクラウドと、Ball Aerospace社のアルゴリズムを使って、小型衛星のコンステレーションから撮影された世界中の画像を解析するプラットフォームを構築予定です。
この契約では、単なるデータプラットフォームではなく、Ball Aerospace社のアンテナを使って、Microsoft社のデータセンターへ直接伝送するというデモンストレーションも含まれており、空軍としてはデータを得るまでのスピード感も重視していることが伺えます。
中国初のリモートセンシングビックデータクラウド”SIWEI earth”
アメリカに並ぶ大国、中国でも衛星データプラットフォームの準備が進んでいます。
Luokung Technology Corp.社は中国初のリモートセンシングビックデータクラウド”SIWEI earth”サービスを発表しました。
特徴は何と言っても桁違いのスペック。
10PB規模の地球観測データを収録できるストレージや、2時間で20TBのデータを処理できるほどのプロセッシングを用意しているとのこと。
政府との関係は明言されていませんが、”SIWEI earth”は直接スマートシティプラットフォームと接続するなどとされており、政府系に利活用が進められていくのではないかと考えられます。
Microsoft社はアフリカ大陸の建物識別データセットを公開
データプラットフォームとは少し異なりますが、衛星データを使った事例として、災害対策としての地図作りが紹介されました。
現在、地球上では多くの人が災害で被害を受け、移住を余儀なくされています。災害を受けやすい地域を見える化に取り組むthe Humanitarian OpenStreetMap Team (HOT)という団体は、アフリカで地図作成に取り組んでいますが、全体の60%ほどという状況です。
衛星画像を対象にした建物の検出アルゴリズムは様々なところで開発が進められています。しかし、建物の様子は、アフリカとアメリカ・カナダとは大きく異なるため、アフリカ地域で地図作成を行うためには専用の教師データが必要となります。
そのような状況の中で、Microsoft社はウガンダで700万戸、タンザニア1100万戸合計1800万戸のアフリカ地域での建物識別のデータセットをGithubで公開しました。
Microsoft社は、データセットをオープンにし、研究や解析に自由に使ってもらうことで、新しい発見があると説明しています。
メタンガスの排出問題を可視化するプラットフォーム
地球規模の問題に取り組むことを発表したのはDescartes Labs社です。
同社はすでに衛星データ解析プラットフォームを有していますが、今週、New Mexico州と共同でメタンガスの排出問題に取り組むと発表しました。
空気中のガスを測定するということで、一般的に用いられる光学衛星ではなく、欧州のSentinel-5Pという衛星のデータを用いているそうです。
衛星データプラットフォーム、群雄割拠の戦国時代へ
今回ご紹介したプラットフォームをまとめると以下の通りです。
今回ご紹介したプラットフォームは今週ニュースのあった一部のプラットフォームであり、世界には多くのプラットフォームが存在します。
日本でも2019年2月に「Tellus」という衛星データプラットフォームがオープンしています。
まだどのプラットフォームもビジネスとして成功している段階までは来ていません。今後各社がどのようなビジネスモデルを見つけ出すのか、注目です。
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参考記事
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EOS Launches Digital Agriculture Platform/VIA SATELLITE
Ball Aerospace, Microsoft to Demonstrate Cloud Processing for US Air Force/VIA SATELLITE
Humanitarian OpenStreetMap Team (HOT)
Monitoring Methane in Our Home State — A Bold New Plan for New Mexico/Mediun