衛星ベンチャー数社が資金調達に成功!【週刊宇宙ビジネスニュース 11/11〜11/17】
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Loft OrbitalがシリーズAの資金調達を発表
11月13日に、人工衛星の運営管理のワンストップサービスを提供している宇宙ベンチャーのLoft Orbitalが、シリーズAとして1300万ドルの資金を調達したことを発表しました。
今回の資金調達には、Foundation Capitalをリードインベスターとし、他にKima Ventures・Cendana Capital・Swell Partners・GFA Ventures・Uncork Capital・Ubiquity Venturesが参加しました。
Loft Orbitalの最初の衛星であるYAM-2(Yet Another Missionの略)は、以下に示す5つのペイロードを搭載しています。
・EutelsatのIoT通信センサ
・Orbital Sidekickのメタンセンサ
・Fugroの衛星測位センサ
・UAE 政府のイメージャ
・SpaceChainのブロックチェーン機器
宙畑のこちらの記事でも取り上げていますが、Loft Orbitalは2018年に、衛星メーカー・データ解析・衛星運用・打ち上げのチームで構成させるパートナーネットワークを設立しています。今回の資金調達によりこちらのネットワークによる動きも活発化する可能性があります。
Loft Orbitalのビジネスモデルは、同社が宇宙機器メーカーから衛星バスを購入し、同社が所有する衛星のスペースに複数の顧客が提供するペイロードを組み合わせて一つのペイロードとするものです。
Loft Orbitalは、2020年半ばまでに YAM-1と呼ばれるデモミッションと、YAM-2・YAM-3の2機の衛星を打ち上げる予定です。
今回調達に成功した資金を衛星打ち上げに上手く活用できるかどうか、今後のLoft Orbitalに期待です!
LeoSatが操業停止を発表
通信衛星のコンステレーションを構築しようとしてたLeoSatは11月13日に、投資家から資金を調達できないことが確定したのち、13人の従業員全員を解雇したことを発表しました。
初期投資をすでに実施していたスペインの衛星オペレーターHispasatと、日本のスカパー Jsatは、総額5,000万ドルのシリーズAでの資金調達を実施すると期待していましたが、2社とも資金投資を実施しませんでした。
今年の2月に、スカパーJsatは新しい最高経営責任者に米倉栄一氏を任命し、Hispasatはスペインの電力会社RedEléctricaに買収されました。LeoSatのCEO、Mark Rigolle氏によると、以上のような今年の両社の経営陣の変更により、低地球軌道の通信衛星ベンチャーに投資するという、以前の意図が白紙になってしまったとのことです。
LeoSatのターゲット市場は、光ファイバーレベルの少ないレイテンシーで大量のブロードバンドを構築すること望んでいる政府および大手企業でした。これらの顧客をつなぐことは、他のメガコンステレーションに任せなければならなくなってしまいました。
LeoSatが国際電気通信連合で使用する予定のスペクトルは、同社が衛星を軌道に投入しない限り、2021年1月に失効します。LeoSatはまだ法人として存在しており、Rigolle氏は引き続き新しい資金を探していますが、事実上LeoSatの操業は停止しています。
ベンチャーの世界は多産多死とも言われ、宇宙ベンチャーが1000社以上あると言われる米国では、このようなニュースが今後も増えるかもしれません。
BlackSkyがIntelsatから5000万ドルの資金を確保!
BlackSkyは11月12日に、通信衛星オペレーター大手のIntelsatから5,000万ドルの融資を確保したと発表しました。
BlackSkyは、シアトルに拠点を置くSpaceflight Industriesの子会社です。BlackSkyは、特定の地点の上空を1日に数回通過する小型衛星コンステレーション網の構築過程にあります。現在、4基の1m解像度の小型衛星が稼働しています。今回の融資により、同社が2021年までに16基による衛星コンステレーション網を展開するという目標達成に近づくと、同社CEOのBrian O’Toole氏は述べています。
O’Toole氏によると、BlackSkyとIntelsatは融資契約に加えて、Intelsatの通信サービスを介して配信されるデータおよび画像製品を共同開発するための商業的パートナーシップも結んでいるとのことで、同社の関係性の深さが垣間見えます。
BlackSkyのビジョンは”関心のある分野で起こっている事象について最初に知ることを可能にする”ことですが、今回の融資は同社のビジョンに対する信頼の証であるとO’Toole氏は述べています。
BlackSkyは、多くの画像を提供していますが、自社のことを世界規模の監視および警告サービスのプロバイダーと自負しているようです。それは、自社で取得している衛星データのみならず、他社の衛星で撮影した画像や、SNS・ニュース・その他のテーブルデータなどの情報を組み合わせることで実現しようとしているようです。
telsat CEOのStephen Spengler氏は、11月12日のプレスリリースで次のように述べています。
“BlackSky is well-positioned to be a significant player in the expanding earth observation sector, which we believe benefits from trends such as monitoring climate change and commercial and government reliance on remote intelligence gathering.”
(訳:BlackSkyは、拡大する地球観測市場で重要なプレーヤーになる可能性が高いと考えています。これは、リモートセンシングによる気候変動の監視に関心がある政府に恩恵をもたらすと信じているからです」
宙畑のこちらの記事で取り上げたように、BlackSkyは、アメリカ国家偵察局(NRO)から、安全保障に民間の衛星画像を利用できるかどうかについて研究するための契約の契約先のひとつとして選定されています。
競合が多数いる小型衛星コンステレーション市場ですが、この中で市場を獲ることになるのは誰なのか、注目です。
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参考文献
Loft Orbital raises $13 million as it prepares to bulk buy satellite buses