インフォステラがスウェーデン北部に地上局を構築【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/2/1/〜2/7】
一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!
インフォステラがスウェーデン北部に地上局を構築
2月1日、地上局ネットワークサービスを提供するインフォステラは、同社がスウェーデン北部に設置する地上局をArctic Space Technologies(アークティック・スペース・テクノロジズ)がホストするという計画に合意したことを発表しました。
インフォステラが地上局を設置するのは、北極圏からわずか130km南に位置する地点で、設置すると極軌道周回衛星に対して1日あたり8~10回追加の通信機会を提供できるようになります。
これまでインフォステラは、アゼルバイジャンのAzercosmosやオーストラリアのCapricorn Spaceなど、地上局運用事業者とパートナーシップを締結することで、通信機会の増加を図ってきました。ところが今回、インフォステラが自社で地上局を構築することを発表し、同社の事業は新しいフェーズに入ったのではないかと考えられます。
同社は1月には、地上局プラットフォーム「StellarStation」を介して、SAR衛星の画像をカナダのC-COREが運用する地上局でダウンリンクし、ドイツのデータセンターにリアルタイムで転送することに成功したと発表しています。今後は、定常的にヨーロッパのSAR衛星からのデータダウンリンクを行うとのことで、顧客拡大が見込まれます。
新型コロナウイルスの影響を受けて、破産申請したSpeedcastが再編へ
1月25日、大手衛星通信プロバイダーのSpeedcast(スピードキャスト)の再編計画を米国の破産裁判所が確認したことが発表されました。
同社はAsiasatの子会社でしたが、2012年にプライベート・エクイティファンドのTA Associatesに買収されました。その後は、各地域の衛星通信プロバイダーを買収しながら事業を拡大してきました。
しかしながら、新型コロナウイルス(Covid-19)感染の世界的流行の影響で、クルーズ船向けの通信サービスをはじめとする市場が縮小し、2020年4月には破産(チャプター11)申請を申請する事態に追い込まれていました。
再編にあたり、破産申請前の債権者である投資会社Centerbridge Partnersが5億ドルを追加出資する予定で、この資金は債権者への返済やベンダー企業への支払いなどに充てられるとのことです。
2020年に社長兼最高商業責任者としてジョインし、2021年1月にCEOに就任した、ジョー・スパイテク(Joe Spytek)氏は、「顧客の需要が高いオペレーションやアプリケーションに対応するプラットフォームの構築に取り組んでおり、潜在能力を最大限に発揮できるような体制を整えています」とコメントしています。
破産申請以降もSpeedcastは、9月にコロンビアの農村部へ高速インターネットを提供するプログラム受注と、産業用LTE 4.9G ソリューション提供に向けてNOKIAと長期契約締結を発表し、12月にはIoTプラットフォームをリリースしています。新型コロナウイルスの影響による移動の制限は2021年も続くと見られていますが、衛星通信の新規市場開拓やアプリケーション開発で再起を図ろうとしている様子が窺えます。
Alba Orbital 夜間光を分解能24mでの撮像に挑戦
2月2日、衛星開発事業者のAlba Orbital(アルバ・オービタル)は、同社の衛星「Unicorn-2」に搭載されているセンサが最大24m分解能で夜間光データを撮像できることを明らかにしました。この数値は、現在一般に公開されている夜間光のデータの中では最大の解像度です。
宙畑メモ 夜間光
衛星が観測した夜間光データは、対象地域の人工分布や経済状況の調査に役立てられています。
参考 : 衛星が撮影した夜の地球「夜間光」がお金に変わる!? 概要と利用事例
Alba Orbitalは、2012年に設立されたベンチャー企業で、スコットランドを拠点としています。同社は、欧州宇宙機関(ESA)と提携して、5cm立方を基準としているポケットキューブ規格の衛星Unicorn-2を開発しました。
同社は現在、軌道上に6機の衛星を保有しており、2021年には9機打ち上げ予定で、実証実験は2021年前半に実施されます。
Unicorn-2は、打ち上げとオペレーションにかかるコストを3Uのキューブサットの半分程度に削減できる見込みとのことで、実現すれば夜間光データがより安価に利用できるようになるのではないかと期待されます。
また、プレスリリースではクラウドサービスやデータ分析を手掛けるNew Light Technologiesとの提携も発表していて、両社が提供する夜間光データを利用したソリューションにも注目したいと思います。
宇宙寺院が2023年に打ち上げへ
2月1日、衛星の企画開発を手掛けるテラスペースは、2023年に打ち上げ予定のIoT衛星内の区画を利用して、“宇宙寺院”の役割を持たせる計画に向けて、世界遺産の醍醐寺と業務技術提携を行ったことを発表しました。
宇宙寺院は「浄天院劫蘊寺」と命名されていて、6Uサイズの人工衛星のペイロードの半分に、大日如来様と曼荼羅を搭載しているそうです。地球低軌道で運用され、1時間半かけて地球を1周します。プレスリリースによると、宇宙寺院の現在地情報はスマホアプリで確認できるようになる予定です。衛星のもう半分はIoTゲートウェイとして携帯電話の電波が届かない山間部の文化財保護に役立てられるとのことです。
宇宙祈願に申し込むと、願い事は地上で祈願した後、宇宙寺院に送られます。データは宇宙寺院内のメモリに保管されるということです。
このプロジェクトには、技術顧問として和歌山大学教授で宇宙政策委員会専門委員の秋山演亮氏と宇宙機器の設計・製造を行うオービタルエンジニアリングの取締役社長の山口耕司氏が参画しています。技術実証と寺院がセットになった異色のプロジェクト、どのように利用されていくか楽しみです。
宙畑編集部のおすすめ関連記事
インフォステラ、英Catapult社とMOU締結【週刊宇宙ビジネスニュース 1/7~1/13】
OneWebが新しい衛星打ち上げを発表。買収が完了し再起を目指す【週刊宇宙ビジネスニュース 2020/11/16〜11/22】
今週の宇宙ニュース
ロケットベンチャーのAstraがSPACを活用して2021年中にNASDAQ市場に上場 【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/02/01〜02/07】
バイデン政権がアルテミス計画を支持。気候変動対策に向けての動きも【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/2/1/〜2/7】
参考
インフォステラとArctic Space Technologies、スウェーデン北部におけるインフォステラの7.3m地上局のホスティング計画に合意
インフォステラ、カナダの地上局を利用した実証実験に成功、同地上局は運用フェーズへ
Speedcast Announces Confirmation of Plan of Reorganization
Speedcast Deploys Nokia Industrial Private LTE 4.9G Solutions Globally
Speedcast Launches Next Generation IoT Platform