ispaceが2022年に打上げ予定の着陸船にUAE宇宙機関の月面探査ローバーを搭載 【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/04/12〜04/18】
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ispaceが2022年に打上げ予定の着陸船にUAE宇宙機関の月面探査ローバーを搭載
月着陸船と月面探査ローバーを開発する株式会社ispaceが、アラブ首長国連邦(UAE)ドバイの政府宇宙機関であるMohammed Bin Rashid Space Centre(以下MBRSC)とペイロード輸送契約を締結しました。契約金額は非公開です。
今回の契約には、MBRSCが開発する月面探査ローバー”Rashid”の運搬だけでなく、月までの航行時における通信と電力供給、月面での無線通信も含まれています。Rashidを搭載したispaceの月着陸船は2022年にSpaceXのFalcon 9で打ち上げられる予定です。約10kgのRashidには高解像度カメラや赤外線カメラが搭載され、月面画像の収集などを行う予定です。
今回の契約締結にあたり、ispaceの担当者様に以下の質問に対してコメントを頂きました。
―民間企業として月面着陸を成功させる上で、現在特に注力している技術はありますか?
現在、ispaceが進めている月面探査プログラム「HAKUTO-R」では、ドイツのAriane Groupの施設で実施される予定であるランダーの組立・統合・試験フェーズに入る為の準備を進めています。また、ミッション1のランダーのSTM(熱構造モデル)の組み立てを予定通り完了し、環境試験を進めてまいります。
ーispaceとして初の海外の宇宙機関からのミッション契約となりますが、UAEとの契約締結に至った最大の決め手を教えてください。
MBRSCは、複数のペイロード輸送サービス事業者を検討した結果、技術的な信頼性の高さからispaceを選択しました。MBRSCは国籍や規模を問わず戦略的な協力関係を通じて、宇宙産業の国際的なバリューチェーンを有効に活用しており、今回の契約はその象徴的な事例だと考えています。
ー今回の契約をきっかけとして、今後どのような展開を期待していますでしょうか。
UAEと日本の宇宙開発における協力関係を発展させるとともに、世界中の官民の月探査に向けた協力関係をさらに発展させることができることを期待しています。
また、最後に宙畑読者へのコメントも頂きました。
10年前に少ない人数で月探査のための小さなローバーを開発しはじめてから、10年後のいま、130名を超える仲間とともに活動をすることができています。更にMBRSCがUAEにとって歴史的な瞬間を実現するための重要な役割を、ispaceのペイロード輸送サービスに託してくれたことを光栄に思います。
私たちの月面着陸ミッションを通して、宇宙や月の開発に関心を持っていただき、宇宙産業が発展するきっかけを多く生み出していきたいです。
ispaceがMBRSCのRashidを2022年に運搬するミッションは、HAKUTO-Rの中で”ミッション1”と定義され月面着陸の実証を目的にしています。翌2023年に実施予定の”ミッション2”では、自社開発を進める月面探査ローバーを運搬し、月面着陸だけでなく月面の情報収集を行う予定です。
NASAは、有人月面探査を行うアルテミス計画の一環として2023年に月面探査ローバーのVIPERを月の南極に着陸させ探査を行う予定です。このVIPERの着陸船を開発するのは、ispaceと同じくGoogle Lunar XPRIZEに参加していた宇宙ベンチャー企業のAstroboticです。※Astroboticは途中でGoogle Lunar XPRIZEから棄権しました。
このように、世界中の政府や企業が月面探査に注目し官民パートナーシップを推進している中で、日本の宇宙スタートアップ企業が海外の宇宙機関と契約を結ぶのは非常に大きなインパクトを持っています。
アメリカ・ロシア・中国に続き、探査機の月面着陸を目指すMBRSCとispaceに引き続き注目です。