SARデータ×AIで海氷情報の精度向上。QPS研究所、ウェザーニューズ、九州電力らが実証へ【宇宙ビジネスニュース】
【2022年8月19日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。
8月9日、小型SAR衛星のコンステレーションの構築を進めるQPS研究所と大手気象情報会社ウェザーニューズ、九電ビジネスソリューションズおよび九州電力は、AIと衛星データから得た高精度な海氷の大きさや分布等の情報(海氷情報)を活用した、より安全で確実な船舶の運航を支援するサービスの提供を目的とした共同実証を開始したと発表しました。
今回の実証で、衛星事業者のQPS研究所は、自社の高分解能な衛星データ活用による海氷情報の精度向上を検証、ウェザーニューズは、海氷情報の精度や運航支援サービスにおける有用性等の検証を担当します。
もともとウェザーニューズは、海運業界向けに運航支援サービスを提供しています。
船会社から「海氷の融解が進んでいる北極海航路を使えないか」という相談を受けて、よりタイムリーに海氷情報を収集しようと、アクセルスペースと共同で衛星を開発し、2013年に「WNISAT-1」、2017年に「WNISAT-1R」と光学衛星2機を打ち上げました。
海氷情報の取得にSAR衛星画像を利用するメリットをウェザーニューズの担当者に聞くと、天候に左右されずに観測ができることが挙がりました。
「SARは空間解像度が高く、全天候型であることから、氷海航行においてよく参照される情報となっています。
しかし、SAR画像から定量的な海氷情報(密接度や厚さ、海氷の種別等)を知ることは簡単ではありません。
今回、AIの技術を用いて海氷の定量的な情報を得ることができれば、より氷海航行にとって有益な情報が得られるものと期待しています」(ウェザーニューズ担当者)
また、SAR衛星画像を利用した海氷情報の取得には、AI技術が鍵になるとのことです。
2021年6月にQPS研究所と提携した九州電力は、最適な衛星データの選定やAI解析技術、マッピング機能等を組み合わせた、より利便性の高い海氷情報の提供や有用性の検証を実施。
グループ会社の九電ビジネスソリューションズは、河川に設置したカメラの画像を識別して水位を計測するなど、AIによる画像識別の経験や知見を有していて、今回の実証では衛星データの分析と海氷情報のマッピングを担当します。