宙畑 Sorabatake

軌道上サービス

【ポストISS時代を見据えて】ElevationSpaceとAxiom Spaceが高頻度な物資回収事業でMoU締結【宇宙ビジネスニュース】

2025年10月31日、ElevationSpaceが、Axiom SpaceとMOUを締結したことを発表しました。両社は、高頻度な大気圏再突入・回収サービスの実現に向けて協業を進めます。ポストISS時代を見据えた注目のニュースです。

2025年10月31日、軌道上の輸送サービスを手がけるElevationSpaceが、有人宇宙事業を手がけるAxiom Spaceと、基本合意書(MOU)を締結したことを発表しました。両社は、高頻度な大気圏再突入・回収サービスの実現に向けて、協業を進めます。

Credit : ElevationSpace

ElevationSpaceは、宇宙で得たサンプルを地球へ回収するために、大気圏再突入・回収技術の開発に取り組んでいます。最近では、豊田自動織機と熱防護材を共同で開発するほか、創薬ベンチャーのVardaと、実験サンプルを高頻度で回収するための業務提携を結ぶなど、様々な業界のプレイヤーと連携を進めています。

Axiom Spaceは、ISS退役後(ポストISS)の後継機として期待される、商業宇宙ステーション(Axiom Station)の建設を目指しています。最初は、ISSの1モジュールとして徐々に拡張させつつ、最終的に独立した宇宙ステーションとしての運用が計画されています。

また、宇宙飛行士である若田光一さんがCTOを務めているのもAxiom Spaceです。さらに、同社は、ISSへの輸送サービスから、PRADAと共同開発する先進的な宇宙服に至るまで、有人宇宙事業を幅広く手がけています。

宙畑メモ:ポストISS

長年運用されてきた国際宇宙ステーション(ISS)は、2030年末での運用終了が予定されており、その後の民間主導による宇宙ステーションやサービス全体を指す言葉です。これまでISSが担ってきた地球低軌道での滞在拠点、研究開発や実証の場を、今後どのように維持・発展させていくかという大きな課題があります。

宙畑メモ:Axiom Stationとは

Axiom Spaceが建設を進めている世界初の商業宇宙ステーションのこと。ISSにモジュールを接続する形で建設を開始し、将来的にはISSから分離して独立したステーションとして運用される計画です。民間企業や各国の宇宙機関が利用する、次世代の軌道上プラットフォームとなることを目指しています。

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今回の協業を通じて、ElevationSpaceが開発する宇宙ステーションからの高頻度回収機(ELS-RS)の実用化が進められる予定です。具体的には、ペイロード(積載物)運用および大気圏再突入・回収システムの技術実証が行われる見通しです。

これからのポストISS時代において、ISSが担ってきた宇宙利用の場をどのような形で継続するのかが大きな課題となっています。その後継機として期待されているのが、Axiom Stationです。それと同時に、ステーションと地上を結ぶ輸送機も求められています。

ELS-RSが完成すれば、Axiom Stationで得られた研究成果を、定期的に回収することができます。さらに、それらを地上の指定された地点へ、迅速かつ安全に送り届けることが可能になります。このアクセス性の向上により、宇宙利用への需要や頻度が増加していくと期待されます。

今回の発表に際し、両社の担当者は次のようにコメントしています。
ElevationSpace COO 宮丸 和成さん
Axiom Spaceとの協業は、当社の技術を実運用環境で発揮できる貴重な機会です。両社の連携によって、航空宇宙産業全体の発展に寄与する技術革新を推進できると確信しています。

Axiom Space CTO 若田 光一さん
今回のMOUは、Axiom Stationの顧客に対し、生命科学や材料科学のサンプルなどのペイロードを、適切に管理された環境下で地球へ迅速に回収できるカーゴ回収サービスを提供することを目指す上で、重要な意味を持つものです。

今回のMoU締結を第一歩として、両社はELS-RSの技術実証に向けた情報共有と開発協力を進めていく見通しです。

次世代の宇宙ステーションを開発するAxiom Spaceと、地球への回収サービスを開発するElevation Space。両者の連携は、ポストISS時代の宇宙利用を活性化する重要な一歩だと言えます。先日ISSへと到着した新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)も、同様に輸送を担いますが、SpaceXのDragonのような大規模な物資回収機能は持っていません。地上から宇宙へと行く往路だけでなく、宇宙から地上へと戻ってくる復路を実現するサービスも今後需要が高まると考えられます。今後の両社の動向に注目です。

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