イリジウム通信衛星コンステレーション年末完成【週刊宇宙ビジネスニュース10/15~10/21】
毎週宇宙ビジネスの気になる話題をピックアップする本連載! 今週は10/15~10/21までの話題です。
一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!
今週のキーワードは「通信衛星」。地球上どこでも通信できる環境が整ってきています。
1. さくらインターネット、第1回衛星データ分析コンテストを開催
さくらインターネットがSIGNATEと協力の下、第一回衛星データ分析コンテスト「Tellus Satellite Challenge」を開催 – さくらインターネットプレスリリース
宙畑でも「なぜ日本初衛星データPF『Tellus』のデータビジネスに期待が集まるのか」で紹介した「衛星データのオープン&フリー化及びデータ利用環境整備事業」の一環として、第1回衛星データ分析コンテスト「Tellus Satellite Challenge」の開催が発表されました。
第1回目のテーマは「SARデータを用いた土砂崩れ検出」です。2016年の熊本地震前後における陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)の観測データを使用して、衛星画像データから土砂崩れ領域をより高い精度で自動検出するアルゴリズムの開発が競われます。
これまで衛星データは研究者や専門機関に所属する一部の限られた人のみが触れるという印象があり、実際にそのような実情でした。その上、衛星画像データから土砂崩れの領域を判定することは専門家をもってしてもその判定が難しいようです。
そこで、衛星データプラットフォーム「Tellus(テルース)」の利活用促進のため、衛星データの利活用事例の可視化、優秀な分析人材の発掘、衛星データの種類の周知・啓蒙といった複数の目的を持って今回のコンテストが行われます。
コンテストにはAI開発・データサイエンティスト人材採用・育成サービスを提供する株式会社SIGNATEが協力しており、会員数は8000人以上。衛星データ解析の新しいスターが生まれることに期待が高まります。
賞金は1位の方が100万円、画像解析に自信のある方はぜひ奮ってご参加ください!
ご興味ある方はぜひ「コンテストの詳細」をご覧ください。
2.競争が激化する小型ロケットによる打ち上げサービス
Vector Secures Additional $70M in Series B Financing Led by Kodem Growth Partners – prnewswire.com
小型ロケットの開発を行っている米国のスタートアップ企業Vectorが約77億円の資金調達に成功しました。
VectorはSpaceXやVirgin Galacticなどの元社員が多い企業であり、今後の市場拡大が予想される小型衛星の打ち上げサービスを行う企業です。
今回の資金調達により、今までロケット自体の研究開発に焦点を当てていたものから、運用や収益性に向けた研究開発へのステップアップになると期待が寄せられています。
また、同じく小型ロケットの開発を行うRocket Labがアメリカのバージニア州に第2の打ち上げ場所を建設することを決めました。
Space startup Rocket Lab will build a second launch site in Virginia – theverge.com
ニュージーランドに世界初の民間の射場を建設し、テストフライトを行っていたRocket Labでしたが、早くも2つ目の射場の所在を決めたようです。
ニュージーランドの射場は最短72時間で次の打ち上げを可能とする射場ですが、今回バージニア州に2つ目の射場を建設するのは、毎回ニュージーランドからの打ち上げを希望する顧客だけとは限らないという、顧客のあらゆるニーズに対応することが目的のようです。
小型衛星の打ち上げ機数は今後4年間で約4倍になると予測されています。
多くの小型衛星を打ち上げるための安心・安定の打ち上げサービスが整備されることは急務と言えるでしょう。
日本でもインターステラテクノロジスが、開発中の小型ロケットモモ3号の打ち上げに向けたクラウドファンディングを今月末まで行っています。
どの企業がいかに安心安定の小型ロケットを作り、小型衛星の市場を支えていくのか、今後も各企業の動きに目が離せませんね。
3. 年末にイリジウム通信衛星コンステレーションの構築が完成予定
Final Iridium Next launch scheduled for Dec. 30 Falcon 9 mission – SpaceNews.com
今年の12/30に、66機目の次世代型イリジウム衛星が打ち上げります。
通信衛星であるイリジウム衛星を66機軌道上に配置することで、地球全域で常時通信が可能な世界が構築されます。
通信と聞いてパッと思いつくのは、私たちが携帯電話でかけることかと思われますが、この衛星による通信網が完成することで、例えば船や飛行機など、携帯の基地局がないような場所であっても、通信ができるようになります。
最近、どの航空機も搭乗しながらインターネットに接続することができますよね?それは衛星を経由してインターネットに接続しているからなのです。
災害時で基地局が故障してしまった場合にも、この衛星電話であれば通話可能なため、非常に有用です。地上のインフラの状態に左右されない、というのは地震の多い日本にとって、とても大きな利点のように思えます。
また、船や飛行機に関する位置情報や、人が入りにくい奥地にセンサを配置している(IoT)場合などでも、各種情報が取得できるため、非常に便利です。これにはもちろん他の衛星が取得した情報を受信する(要は衛星間通信)、ということも含みます。
私たちが日常的に利用している携帯電話での通信はできませんが、専用端末を利用することでイリジウム衛星を経由して、通信できるようになります。この電話を利用する代金を参考までに下記に示します。衛星を経由するので非常に高いのかな、と思われるかもしれませんが、おそらく皆さんが想像されるよりもずっと安く利用できるのではないでしょうか?
詳しくはKDDIのホームページをご覧ください。
今後、イリジウム衛星だけでなく、OneWebやFacebook、SpaceXなども通信網を構築する計画を発表しています。
多くの通信衛星が出てくることで、競争原理が働き、通信料金はますます手ごろになる可能性はあります。
10年前にスマホが出てきたときは衝撃が走りましたが、10年後にはもしかすると、「え、まだ地上経由でネットにつないでるの?」なんて言われる日が来るかもしれませんね。