2017年宇宙ビジネス業界で何が起こったか

2017年も様々な宇宙ビジネスニュースがありました。
ロケットの打ち上げ等華々しいニュースに目が行きがちですが、宇宙ビジネスの視点でみると注目すべきニュースは他にもたくさんあります。本記事では、宙畑編集部が厳選した2017年宇宙ビジネストレンドを紹介します。

【目次】

(1) アメリカの投資は減少、イギリスや日本は加速
(2) 衛星コンステレーションに向けた製造が本格化
(3) 低迷する既存通信衛星市場
(4) 過熱する打ち上げ競争は価格勝負の世界へ
(5) 宙畑人気記事ランキングTOP3
(6) 2018年は小型SAR、小型ロケット打ち上げに注目!
(7) まとめ

(1) アメリカの投資は減少、イギリスや日本は加速

 数年前は大きな投資が行われていたアメリカの宇宙ベンチャー界隈ですが、近年は減少傾向であり、宇宙ベンチャー自体のM&Aも盛んに行われています。宇宙分野は投資の割にリターンが少ないとも言われ、数多くの宇宙ベンチャーが生まれるフェーズから、本当に強い宇宙ベンチャーのみに淘汰される成熟フェーズに入りつつあると言えるでしょう。
Google子会社Terra Bellaを3億円超でPlanetが買収: 画像データの新時代(宙畑)

アメリカ国家地球空間情報局(NGA)が2017年7月、超小型衛星ベンチャーplanetに14億円の投資を行いました。今まで、超小型衛星の生む価値に懐疑的だった政府も超小型衛星に興味を持ち、ある部分で”使える”という見込みを持っているということでしょう。
アメリカの情報機関が選んだ宇宙ベンチャーとは(宙畑)
 
 上記のようなアメリカの流れもあり、アメリカでは新たな宇宙ベンチャーが大きな資金を得ることが難しくなりつつありますが、イギリスや日本など他の国では逆にそういったビジネスの種を支援する施策を打ち出している国も出てきました。
イギリスは宇宙ベンチャー誘致を狙う!(宙畑)

 日本でも、2017年複数の宇宙ベンチャーが資金調達に成功しています。アメリカと比べると周回遅れとも言える日本の宇宙ベンチャー投資”ブーム”を上手く活かすことができるのか、日本の宇宙ベンチャーの手腕が問われています。

日本の月面探査ベンチャーispaceが101.5億円の資金調達に成功
株式会社インフォステラは Airbus Ventures をリード投資家として総額8億円のシリーズ A ラウンドの資金調達を実施
INCJが宇宙ベンチャーへ出資 九大関係のQPSが総額23.5億円を調達
宇宙開発×ベンチャー企業一覧 日本編 2017(宙畑)

(2) 衛星コンステレーションに向けた製造が本格化

 通信衛星を2,000機に打ち上げ、地球上のインターネットがつながらない場所を無くす計画を立てているOneWebは、衛星の製造に着手しました。製造を請け負うのは、昔から衛星製造を行っていたAIRBUSです。従来、人工衛星は1機ずつ時間をかけて作られることが常識でした。しかし、2,000機製造するとなると話が変わってきます。自動車のように流れ作業の中で多くの衛星を一度に製造していく必要があります。
 AIRBUSだけでなく、フランスThales AleniaやアメリカのSpace Systems Loral(SSL)など、昔から衛星製造を行っていた企業が次々と新しいベンチャー宇宙企業の衛星を請け負っています。
 老舗企業の技術力と新規ベンチャーの発想力を組み合わせて、宇宙ビジネスの変革は本格化し始めています。

OneWeb衛星の製造ラインは自動車のような流れ作業
Image Credit: AIRBUS
OneWeb衛星の製造ラインの様子
Image Credit: AIRBUS

宇宙利用ベンチャーは大手衛星メーカーと組んで衛星を60機を製造(宙畑)
OneWeb hardware finally coming together

(3)低迷する既存通信衛星市場

 新しい衛星の大量製造が始まる一方で、既に成熟した市場と言われていた通信衛星の市場は苦戦を強いられました。近年20~25機前後で推移していた通信衛星の契約数ですが、2017年の契約数は10機に留まりました。
 原因は、大容量の通信が行えるHTS(High-throughput satellite)を見据えた買い控えや、アメリカの輸出入銀行が新興国相手の通信衛星向け融資を渋っているためと言われています。
 今まで宇宙ビジネス市場の多くを占めていた通信衛星の数が半減したことで、旧来からの企業各社は大きな痛手を受けています。2018年はどうなるのか注目です。

商用通信衛星契約数の推移(http://space.skyrocket.de/doc_sat/sat-contracts.htm よりキャンセル数も含めて算出)
Image Credit: 宙畑

(4) 過熱する打ち上げ競争は価格勝負の世界へ

 衛星打ち上げの手段であるロケットの価格競争はますます激しさを増しています。
 宇宙ベンチャーの代表格SpaceXは前年の失敗を乗り越え、2017年17回の打ち上げを成功させました。Amazonの創業者であるJeff Bezos氏率いるBlue Origin、小型衛星向けロケットのVector Space Systems、Rocket Labsなどがこぞって燃焼実験を行い、打上げサービスの実現を目指し日々開発を行っています。
 また、旧来のロケット打ち上げサービス会社も黙っているわけではありません。ヨーロッパを代表するArianespaceは次のロケットでは価格を40~50%削減するとしています。アメリカULAのAtras Vは、ロケットの打ち上げ費用がその場で見積もれるWEBサイトを開設するなど新たなユーザーを獲得する努力に余念がありません。
RocketBuilder(打ち上げ価格のシミュレーションが可能)

新型ロケットによる新しい宇宙開発時代の幕開け(宙畑)
小型衛星打ち上げ専用の小型ロケットの開発を目指すVector Space Systems(宙畑)
欧州も再使用ロケットに興味(宙畑)
衛星ビジネスのボトルネックは“小型衛星の打ち上げ機会”(宙畑)
小型ロケットベンチャーは成功するか~鍵となる3つのポイント~(宙畑)

(5) 宙畑人気記事ランキングTOP3

 今年2月にOPENした宙畑では、74本の記事を公開しました。
みなさんに読んでいただいた記事をご紹介します。

【第一位】宇宙開発×ベンチャー企業一覧 日本編 2017

https://sorabatake.jp/space-news/gn_20170514
日本の宇宙ベンチャーをまとめて紹介しました。

【第二位】キヤノン電子初の衛星打ち上げへ

https://sorabatake.jp/bn_20170508
キヤノン電子初の衛星であるCE-SAT-Iが2017年6月にインドのロケットで打ち上げられるニュースを紹介しました。

【第三位】北海道大樹町にロケット打ち上げ射場が検討されているワケ

https://sorabatake.jp/bn_20170507
北海道に打上げ場を作る計画が10年前からあったというニュースを取り上げました。

(6) 2018年は小型SAR、小型ロケット打ち上げに注目!

では、2018年はどんな年になるでしょうか。
宙畑編集部一押しのキーワードは”小型SAR衛星”と”小型ロケット”です。

小型SAR衛星

 “SAR”とはレーダを使って、昼でも夜でも雲がかかっていても、地表の様子を知ることができる技術です。一般的に用いられる光学センサー(いわゆる、カメラ)では観測できないところも観測することができるため、注目を集めています。観測に必要な電力が大きいことなどから、これまであまり小型化が進んでいませんでしたが、今年から小型化したSAR衛星群(コンステレーション)が続々打ち上げられる予定です。SAR衛星によるコンステレーションが組まれることで、天候や昼夜に関係なく、地上の様子が観測できるようになるのです。

宙畑注目企業

・ICEYE
今年の1/12に1号機を打上成功。来年までにあと8機を打ち上げ、どこでも6時間おきに観測できるようにする計画。
https://www.iceye.com/
・Urthecast
光学観測の衛星とSAR衛星を8機ずつ打ち上げ、地上を観測する計画。
分解能という観点ではまだ課題があるSAR衛星による観測結果だけでなく、高分解能で観測できる光学センサーによる観測結果と組み合わせることで、地上の状態をより詳細に把握できるようにする。
https://www.urthecast.com/
・XpressSAR
光学センサーでは観測ができない、雲が多い低緯度地域を中心に、4機体制で観測していく計画。
http://www.xpresssar.com/
・Capella Space
ICEYEやUrthecast、XpressSARは3 m程度の観測分解能を狙っているのに対して、Capella Spaceは1 mの観測分解能を狙う。
3年間で36機の衛星を打ち上げ、コンステレーションを構築予定している。
https://www.capellaspace.com/
・QPS研究所
九州発のベンチャー企業として、小型衛星を開発してきた実績有。
https://i-qps.net/

光学センサ・SARセンサについてはこちらから
人工衛星を用いた地球の調べ方(宙畑)

小型ロケット

 小型衛星を打ち上げるための手段として、小型ロケットも着々と準備が進んでいます。
先日、Googleが主催する月面探査レースに参加していたインドのベンチャーTeam Indusが、同じくインドのPSLVロケットの調達に失敗したとの報道がありました。 PSLVロケットの打上げ価格は、世界の他のロケットに比べて安く、1機30億円程度です。しかし、それでも1スタートアップ企業が調達するには高額です。
小型ロケットは打上げられる衛星は小さいですが、その分費用も安く数億円程度になると発表されており、小型衛星ビジネス成功の鍵を握っているとも言えます。

宙畑注目企業

・Rocket Lab
アメリカのRocket Labは昨年5月の打上げ失敗の後、2度目の打上げを昨年12月に予定していましたが、打上げ直前に中止となってしまいました。再チャレンジは今月下旬を予定しています。
https://www.rocketlabusa.com/
・Vector Space Systems
同じくアメリカのベンチャー企業であるVector Space Systemsも2018年中に初号機の打上げを予定しています。
https://vectorspacesystems.com/
・インターステラテクノロジズ
日本では、インターステラテクノロジズも昨年夏に失敗した観測ロケットMOMOの2号機を2018年春~夏頃に打上げ予定です。
http://www.istellartech.com/
・PLD Space
スペインでは小型ロケットベンチャーPLDスペースが欧州委員会から2.4億円を獲得。2018年中の初号機打上げを目指しています。
https://www.pldspace.com/maintenance/index.html
・Orbex Space
イギリスでも小型衛星打ち上げを目指すロケットベンチャーのOrbex Spaceが、昨年11月に開催されたRoyal Aeronautical Societyにて初めてロケット打ち上げの詳細を発表しています。
http://www.orbex.space/

(7) まとめ

2017年は宇宙ビジネスにとって、大きな変動がなかった印象もありますが、新しい宇宙ベンチャーがいよいよ本格始動し始めるのだなと感じられる1年でした。
さて、日本の宇宙ベンチャーはこの流れを追いかけられるのか、注目が集まります。

宙畑は、今年も国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑視点で発信してまいります。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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