宙畑 Sorabatake

衛星データ入門

オンラインツールを使ってリモートで衛星データ利活用アイデア創出~実践編~

本記事では、無料のツールを使いながらオンラインで衛星データ利活用のアイデア出しを試みました。アイデア出しの具体的な手順と、アイデア出しした結果も紹介していますので、読者の皆さまもぜひ試してみてください。

過去に慶應義塾大学の白坂先生にインタビューした「衛星データをビジネスに活かす鍵は「専門家バイアス」の打破」という記事では、衛星データをビジネスに利活用するアイデアの思考法についてお聞きしました。

今回は白坂先生の研究室で研究されている思考法の具体的な手順を教えていただき、その思考法に沿って宙畑編集部でアイデア出しを行った結果をご紹介します。

対面でアイデア出しするのが通常ですが、アイデア出しで重要なのは多様性。前回のインタビューでも、「様々な分野の専門家やバックグラウンドの人が参加することで多様性が生まれ、認知バイアスを打破し、良いアイデアが創出しやすくなる」という言葉がありました。様々なバックグラウンドの方が参加できるようにするためには、オンラインで参加できるようにした方が良いでしょう。

例えば、都市部と地方と島、それぞれ異なる環境で暮らしている方がオンラインでアイデア出しをした方が、異なる視点で議論ができますよね。ということで、今回は無料のツールを使いながらオンラインでアイデア出しを試みました。具体的な手順も下記で紹介しているので、読者の皆さまもぜひ試してみてください。

末尾には宙畑でオンラインホワイトボードにアイデア出しした結果を公開しますので、参考にご覧ください。

1.オンラインでのアイデア出し

以下でご紹介するアイデア出しは一人で行うよりも、5~10名程度のチームでアイデア出しする方が効果的です。
※「専門家バイアス」を打破するためには、専門性の異なる複数名で実施するのがおすすめ

今回のアイデア出しはオンラインで行う、ということでオンラインビデオ通話ツールであるzoomと、オンラインホワイトボードであるmiroを利用しました。どちらも上限はあるものの、無料で利用できますので、試してみてください。

宙畑編集部でzoomを使って通話しながらmiroを使ってアイデア出しをしているイメージ図

1.1 オンラインホワイトボードmiroとは

オンラインビデオ通話は分かるけれども、オンラインホワイトボードという言葉に馴染みがないよ、という方が多いかもしれません。

オンラインホワイトボードとは、文字通り、オンラインで複数人で書き込むことができるホワイトボードのことです。同じ画面上(ホワイトボード)で文字を同時に書き込めるので、あたかも同じ場にいながら付箋を貼っているかのように体感できるのです。

ご自身でボードを作る場合には、ユーザ登録をして自分のプロジェクトを用意し、一緒にアイデア出しをしたい方を招待しましょう。

オンラインワイトボードは、上記のように文字を書き込んだ付箋を好きなところに貼り付けることができます。付箋以外にも、作図やデータの埋め込みもできます。
ご自身でボードを作成して他の人とシェアしたい場合には、右上にあるShareというボタンから共有できます。

1.2 ブレインストーミングのルール

アイデア出し(ブレインストーミング)する際には、重要なポイントが4つあります。

①実現できることに縛られない自由な発想
思考を発散することで、新しいアイデアが出てきやすくなります。
一見、非現実的のように思えるアイデアであっても、工夫することで実現できるような場合もありますし、非現実的のように思えるアイデアが新しい視点として目新しい発想を生み出すきっかけになるかもしれません。

②大胆なアイデアを歓迎し、否定しない
1つ目は自身が発想する時の心構え。こちらは他者の意見を聞く際の心構えです。
ディスカッション、と捉えてしまうと何か矛盾はないか?間違っているんじゃないか?ということを気にしてしまいがちですが、ブレインストーミングではすべてのアイデアを肯定的に捉える、ということが重要になります。他者の意見を否定するのは、自分のバイアスの外を否定することにもつながってしまい、自分のバイアスを超えづらくなります。

③人のアイデアに乗っかる
上記と同様ですが、他者の意見を肯定的に捉えることで、新たな発想が生まれやすくなります。他者のアイデアを起点に、何か新しいアイデアがないか考えてみましょう。これが自分のバイアスを超えるためのきっかけになります。

④質よりも量を重視する
ブレインストーミングは、洗練された情報を抽出する作業ではなく、思考を発散させるためのツールです。誰も否定する人はいないので、自由な発想で多くの意見を出していきましょう。量で質を担保するのがブレインストーミングのアプローチです。

これ以外にも、オンラインの場合には黙々と作業しがちになるので、
・ビデオをオンにする
・一つ一つ声に出す
・発声が被った場合も気にせず、聞こえなかったら遠慮なく再度発言を促す
・相槌を打つ(ただし大きな相槌を打ちすぎると発言が聞こえなくなるので注意しましょう。動作は少し大げさなくらいがいいです。)
・笑顔で楽しみながら
・予めどこに何色の付箋を使うか決めて、すぐに使えるように準備しておく
といったことを工夫をすると更に良いでしょう。

2. 思考の流れ

アイデア創出に向けた思考の流れを下図に示します。
興味のある方は本テーマに関する白坂先生の論文も併せてご覧ください。

Step1:対象を決める

アイデア出しする対象を決めます。対象は衛星データから見えるモノで選ぶとやりやすいでしょう。

下図に低分解能と高分解能それぞれの衛星から見えるモノの例を示します。まずは対象としたいモノを1つ選んでみましょう。

この際に、対象を何にするか、下記のように実際の画像を見ながら決めてみるのも良いですし、ブレーンストーミングのような形式で決めてみるのも良いでしょう。

低分解能な観測結果から見えるモノの例
高分解能な観測結果から見えるモノの例

宙畑編集部では「建物」を対象に選んでみました。

Step2:対象の状態を決める

対象の状態を決めます。1で決めた対象を表す状態を列挙しましょう。いくつか挙げて、8つぐらいに絞るとアイデア出しを進めやすいです。この際に、衛星から分かりそうなパラメータを選ぶのが良いでしょう。

対象だけ決まっていざアイデア出し、となってもなかなかにアイデアは出にくいものです。何も視点を定めないと自由に発想できる分、自由すぎるがゆえにアイデアが生まれにくくなります。そのため、対象への視点を定めることで、アイデアを発想する方向性が定め、アイデアを出やすくします。

例えば下記のように状態を定めます。他には、深さや形、湿度や大気状態などが候補にあります。

Step3: [対象の状態]が影響するもの(結果)/に影響するもの(要因)を列挙する

1と2のステップにより、[対象の状態]を検討する際の視点を規定できました。

それぞれに沿って、例えば下記のようにアイデアを発想し、記載していきます。発想する際には、対象物・状態に加えて「変化」の3つの側面から考えると良いでしょう。変化には例えば「増減」「動静」「大小」などの項目があります。

Step4:列挙した情報をグルーピングする

列挙したアイデアに対して、近い話題のものを近くに寄せる、つまりグルーピングします。モクモクとグルーピングするのは難しいので、ここらへんにこういう要素をまとめましょう、とお互いに声かけしながらすると早く終わります。この際に、ポジティブな話題とネガティブな話題を分けて整理すると理解しやすくなります。グルーピングした後には、それぞれが何のグループなのか命名しましょう。

グルーピングしていると、欠けていたアイデアが思いつくこともあるかと思います。主眼はグルーピングですが、そのような場合にはアイデアを付け足すのも良いでしょう。

濃い黄色で対象を、紫で状態を、黄色いで[対象の状態]が影響するもの(結果)/に影響するもの(要因)を、ピンクでグルーピングした結果を記載しています。

グルーピング結果の外観

例として、材料に関するアイデア出しの結果を下記に紹介します。他の状態に関して詳細を見たい方はこちらにアクセスして見てみてください。

材料の状態に関するグルーピング結果の詳細

Step5:因果関係を整理する

似た要素をグルーピングした後は、因果関係を整理します。因果関係を整理することで、影響を与える組織と影響を受ける組織を考えやすくなり、次の工程であるステークホルダの洗い出しがしやすくなります。

下記の例では因果をそれぞれ明示していますが、グルーピングし、因果関係を矢印で示すだけでも良いでしょう。

miroで材料に関して因果関係を整理した結果は下記のようになります。

Step6:ステークホルダを洗い出す

ステップ5に対して、下記例のように関連するステークホルダを列挙します。各事象を売買する人/組織は誰か、ということを考えて各自ブレインストーミングの要領でアイデア出しします。

miroで材料に関してステークホルダを書き込んだ結果は下記のようになります。

Step7:シナリオグラフを作成する

ステップ6では多くのアイデアが出てきているかと思います。このままでもビジネスをのアイデアとなりますが、さらにアイデアを発散させることも可能です。その場合には、シナリオグラフという手法を活用します。

今回作成するシナリオグラフは、whyとhowを除いた4Wで定めます。基本的には衛星画像を用いることは決まっているのでhowは省略します。whyについては、4Wを定めた後になぜそのシナリオが良いと考えたのか、その理由を考えて、共有しましょう。

ステップ6で定めた事象とステークホルダの関係を発展させて4Wを考えても良いですし、一度紐づけをといて新たに考えても良いです。下記の例では、一度紐づけをといた場合をご紹介します。

今までのステップで挙げたすべての項目を並べると膨大な量になるので、各自が良いと思ったアイデア3~5つずつを並べるようにすると良いでしょう。

what ステップ3で挙げた事象を並べます。
who ステップ6で挙げたステークホルダを並べます。
where ステップ3で挙げた事象の中で場所に紐づく項目を並べる、

もしくはwhat/whoの項目から、どのような場所が候補としてあり得るか新たに付け加えると良いでしょう。ランダムに思いついた場所を入れることも可能です。

when ステップ3で挙げた事象の中でタイミングに紐づく項目を並べる、

もしくはwhat/whoの項目から、どのようなタイミングが候補としてあり得るか新たに付け加えると良いでしょう。ランダムに思いついたタイミングを入れることも可能です。

以上でアイデア出しの流れの紹介は終わりです。

3. オンライン実践結果の紹介

今までのステップを通して、下記のように8つのアイデアが出てきました。この中から、アイデアを3つご紹介します。

3.1. 星空案内人サービス

衛星からは夜間の明るさを知ることができます。明るさが分かるということは、星空の見やすさも分かるはず!ということで本サービスを考えました。

農村部など、星空を見やすい地域を観光地化し、特別なツアー旅行を企画できるようにすることを提案しました。

流れ星が見える場所はどこ? 衛星データで近場の星空観光スポットを探せ!」や「衛星が撮影した夜の地球「夜間光」がお金に変わる!? 概要と利用事例」でもどのように場所を探すか、ご紹介していますので興味を持たれた方はぜひ。

3.2. 犬(猫)好きのための家探しサービス

衛星データからは緑化度合いや大気の清浄度が分かります。

このことを活かして、犬の散歩のしやすさを指標化し、犬好き・犬を飼っている方が散歩しやすい地域を可視化し、不動産の検索をしやすくさせます。

もしも住宅情報のプロ「LIFULL HOME’S」が衛星データを使ったら 住まい探しの新時代が到来する!?」という記事でも紹介しているように、これをきっかけに新たな指標を作ってみるのも面白いかもしれません。

3.3. カウンセリングアプリのシナリオ

ひまわりのデータなどを利用することで、各地域の日照時間を知ることができます。

日照時間はビタミンDやメンタルなど、心身の健康に影響を与えるもの、と言われています。

このことを活かして、ここらへんの地域は日照時間が短そうなので、栄養やメンタルケアをしっかりしましょう、ということをサポートするサービスを考えました。

最近は外出を自粛する日々も続き、窓からの光だけが日光浴の経路になっていることもあろうかと思います。日常的に出歩かないことが増えると、健康維持のためにも日光に浴びやすい住居かどうか、というのも重要な指標になりますね。

日照時間の求め方については、「みかん農家に聞いた「美味しいみかん畑の4つの条件」を衛星データで検証してみた」や「【コード付き】衛星画像を使って青森県の水田割合の変化を比較する~考察編~」をご覧ください。

4. さいごに

本記事では、衛星データ利活用アイデア創出に向けた思考法を、宙畑で実際にやってみた結果と合わせてご紹介しました。オンラインツールについては今回ご紹介したzoomやmiro以外にも、様々にあります。

いろいろと触ってみながら、ご自身がしっくりとくるツールを使って、身の回りの様々な方々とオンラインでのアイデア出しをお楽しみください。

こちらのリンクでは、宙畑でアイデア出しをした結果を紹介しています。

皆さまも付箋を追加できる状態としてありますので、ぜひ思いついたアイデアがありましたら追加してみてください!

追加したら、ぜひTwitterで私たちにも教えてくださいね。ハッシュタグは「#衛星データ利用アイデア」です。