H3ロケットが打ち上げ延期。搭載予定ALOSシリーズの運用計画は見直しか【週刊宇宙ビジネスニュース 9/7〜9/13】
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今週は、ロケット関連のニュースが立て続けにリリースされました。
H3ロケット初号機の打ち上げは2021年度に延期
9月11日、JAXAは2020年度内の実施を予定していたH3ロケット試験機初号機の打ち上げを2021年度に延期したことを発表しました。
H3ロケットは、柔軟性・高信頼・低価格の3要素の実現を目指し、H-ⅡAロケットおよびH-ⅡBロケットの後継機として開発が進められています。自動車などの民生品を活用することで、打ち上げ価格は従来のおよそ半額にあたる50億円を目標としていることで期待されています。
プレスリリースによると、第一段エンジン用として新たに開発中のLE-9エンジンに技術的課題が確認されたのが延期の原因とされています。5月に実施された燃焼試験で、エンジンの燃焼室やタービンの一部に亀裂やひびが確認され、設計を見直す必要があるとのことです。
また、先進光学衛星「だいち3号(ALOS-3)」はH3ロケットに搭載される予定です。今回の延期によって同機や陸域観測技術衛星「だいち2号(ALOS-2)」の後継機にあたる、先進レーダ衛星「だいち4号(ALOS-4)」のスケジュールに影響が出るのではないかと懸念されます。
2014年に打ち上げられた現行機のだいち2号の設計寿命は5年。モーリシャス沿岸油流出事故の支援活動など、情報把握に幅広く使用される観測衛星の配備に穴があいてしまわないよう、運用計画も見直されるのではないでしょうか。
元NASA長官チャーリー・ボールデン氏がSLSロケット開発中止を示唆
過去4回の飛行経験を持つ元宇宙飛行士で、オバマ政権にNASA長官を務めたCharlie Bolden(チャーリー・ボールデン)氏は、Space Launch System(以下、SLSロケット)プロジェクトの中断を示唆しました。
SLSロケットは、世界最大級のロケット。アルテミス計画では、オリオン宇宙船を打ち上げ、月面に宇宙飛行士を送り込むのに使用される予定です。8月26日には、有人宇宙飛行部門の準管理者を務めるKathy Lueders(キャシー・ルリーダーズ)氏がNASAの公式ブログで、SLSロケットと地上インフラの開発費を引き上げたことを発表しました。
その一方でボールデン氏は、民間企業がSLSロケットよりもはるかに安い価格での打ち上げを実現させるため、SLSロケットの開発意義や需要が低減するのではないかと説明しています。
さらに、NASAはISSへ宇宙飛行士を輸送するロスコスモスの宇宙船・ソユーズの2021年春分の座席を購入しないことを決定したと一部のメディアが報道しました。SpaceXの有人宇宙船クルー・ドラゴンは5月に試験飛行を成功させ、民間企業による輸送サービス安定の兆しが見えてきたことにより、NASAや政府の役割は変わっていくことでしょう。
ロケットベンチャーAstraが最初の打ち上げ試験を実施
9月11日、カリフォルニア州に拠点をおくロケットベンチャーのAstra(アストラ)が打ち上げ実験を実施しました。
同社は2016年に創業後、目指す「最低限の性能のロケット」の製造開発に取り組んできました。小型ロケットベンチャーのRocket Labのおよそ半額にあたる250万ドルで打ち上げが可能であることから、市場からも注目を集めています。
Astraは今回を含む3回の試験打ち上げで軌道到達を目指しています。2月には「Rocket3.0」の打ち上げ実施をアナウンスしていましたが、悪天候によって延期し、さらに火災で機体を損失する事態に陥っていました。そして迎えた今回の「Rocket3.1」の打ち上げは、打ち上げ自体は成功したものの、残念ながら第一段階のエンジン燃焼で終了する結果となりました。
次回打ち上げ予定の機体についてはすでに製造が進められているとのことですが、今後数週間にわたってフライトデータの分析を実施することが発表されているため、打ち上げは数カ月後になるのではないかと見込まれます。
ボールデン氏のコメントでもあった通り、米国のロケット市場は民間進出が目立ち、国としてのロケット開発の立ち位置が変わりつつあります。H3ロケットの前身であるH-ⅡAロケットは、三菱重工業が海外への販売に苦戦していたこともあり、H3ロケットで目指す柔軟性・高信頼・低価格が、世界の需要に対してどれだけの価値を提供できるかが、今後の鍵となりそうです。
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参考
Charlie Bolden says the quiet part out loud: SLS rocket will go away
NASA Decided Not to Buy Seat on Russia's Soyuz for Astronaut's Flight to ISS, Roscosmos Says