Spire 衛星間通信機能を搭載。データ配信までの時間短縮を目指す【週刊宇宙ビジネスニュース 9/21〜9/27】
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Spire 衛星間通信が可能な次世代型の打ち上げを発表
超小型衛星を打ち上げ、船舶の位置情報(AIS)や気象情報などを提供するSpire Global(以下、Spire)は、今後数カ月の間に「衛星間通信機能」を備えた衛星を打ち上げ、すでに90基を超えているコンステレーション衛星群を、最終的に同機能を持った衛星に置き換えていく計画を明らかにしました。
衛星は、データを取得してからすぐに地上に送信できるわけではありません。データ受信用の地上局を通過してはじめてデータを送信(ダウンリンク)することができるのですが、この地上局、どこにでもあるわけではないので、一部の顧客にとってはデータの提供がおそすぎる、とCEOのPeter Plazer(ペーター・プラッツエル)は話しています。
しかし、衛星1基のみの場合はその衛星が地上局の上空を通過する際ということで通信時間に待ちと限界がありますが、、地上局と通信可能になる衛星に、衛星間でリレーのようにデータを転送することで、通信時間の拡大を図ることができます。
他分野の衛星ベンチャーに目を向けると、通信サービスを提供しているIridium Communications(イリジウム・コミュニケーションズ)が2017年より打ち上げおよび運用を開始した次世代型衛星「Iridium NEXT」には衛星間通信機能が搭載されています。さらにSpace Xは、Starlink衛星で衛星間通信の試験を実施しています。
また、Spire CEOのプラッツエル氏は、過去1年間にも衛星の設計寿命を2年から3年に延長したほか、機械学習機能を追加して、衛星が地上にデータを転送する前に処理を行い、データ量を抑えられるようにしたと説明しています。
さらにシアトルに拠点をおく宇宙ベンチャーのBlackSkyは、9月24日に、次に打ち上げる衛星の観測分解能を1mから0.5mに上げる他、夜間にも撮影することができるようになる予定だと発表しました。数年間で目覚ましい発展を遂げるSpireやBlackSkyのように、各社のサービスは日々アップデートされており、市場競争が激化していくかもしれません。
ICEYEがシリーズCで8.7千万ドルを調達。2021年は8基打ち上げへ
9月22日、フィンランドに拠点を置くスタートアップ企業ICEYE(アイサイ)が、8,700万ドルを調達し、シリーズCラウンドを終了したことを発表しました。
同社は2014年に創業し、衛星コンステレーションの構築を目指しながら、衛星画像の商用販売や衛星画像を活用したソリューションを販売。2018年1月に打ち上げた実証衛星「ICEYE X1」以降、定期的に衛星を打ち上げ、現在はICEYE Xシリーズは5号機まで軌道上で運用されています。
さらにICEYEは、違法船舶を検出することができるソリューション「DARK VESSEL DETECTION」をリリースしているほか、SAR衛星によって生成した、1m程度の解像度で10FPSのビデオを発表し、技術力や事業開発力の高さを示してきました。
今年2月には、米国・サンフランシスコに拠点を開設したことから、ヨーロッパに止まらず北米地域でもサービスを拡大していこうとしている様子が見受けられました。
そんなICEYEのシリーズCラウンドを主導したのは、シリーズAおよびBラウンドと同じ、シリコンバレーのベンチャーキャピタルであるTrueVenturesです。また、今回の資金調達では新たに、ルクセンブルクを拠点とするNew Space CapitalとLuxembourg Future Fund、European InvestmentFundが加わりました。
ICEYEの累計の調達総額は1億2,500万ドルに上ります。ICEYE Xシリーズを2020年には4基、2021年には8基打ち上げる計画とのことで、サービスの拡充が期待されます。
スカパーJ-SAT 宇宙ゴミ対策を目的とした光学望遠鏡を2022年に打ち上げか
9月24日、JAXAとスカパーJ-SATは、技術試験衛星9号機(ETS-9)に関する協定書を締結したことを発表しました。
ETS-9は、通信コストを削減するための最先端技術を各種搭載し、その実証に向けて開発が進められているJAXAの技術試験衛星です。三菱電機がプライムメーカーとして設計・開発を担当しており、スカパーJ-SATは実証期間後の通常運用業務を委託されています。同衛星は2022年にH3ロケットによって打ち上げられる予定です。
また、スカパーJ-SATは相乗りペイロードとして、静止軌道上のスペースデブリを撮像する光学望遠鏡を搭載することを明らかにしました。日本政府と連携しながら、宇宙環境を把握することで、スペースデブリと人工衛星の衝突を回避し、宇宙の安全に寄与したい考えです。
同社は2020年6月に、JAXAと理化学研究所、名古屋大学、九州大学と連携して、対スペースデブリ用の衛星の設計開発に着手したことを発表しました。
同衛星は、世界で初めてレーザーでスペースデブリを除去する方式を採用していることで注目されています。サービス開始は2026年の予定です。
今回発表された相乗りペイロードの光学望遠鏡は、スペースデブリ除去衛星と併せて活用されるのではないかと考えられます。
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参考
Spire adding cross links to cubesat constellation