オープンデータを利用して理想の恋人は見つかるのか!? 結婚したいOLのクリスマス直前カレシ探し 【前編】
オープンデータを利用して、理想条件をすべて満たした恋人候補は探せるのかを検証しました
こんにちは! 宙畑の城戸です。
突然ですが私の夢は、20代は仕事に熱中して、そこで出会った男性と30歳で結婚。式場は逗子のシーサイドリビエラ。海の見えるハーバー系の結婚式場で、真っ白なドレスを着て、大好きな友達に囲まれて祝福されることです。
今年で27歳。宙畑の運営者のひとり。カレシができない。
20代後半の今。式場もドレスも決まっているし、費用も工面できる貯金がある。でも、27歳の唯一足りないもの……。
そう、カレシができないこと。
12月に入り近づくクリスマス。街がキラキラして恋人たちが浮かれる季節。マッチングアプリとかを使うのはちょっとこわいし、効率よく楽しく相手探しできないかなぁ、ウーン……。
そうだ! 衛星データと他のデータを組み合わせてカレシを探したら良いんだ!
衛星データと地上データを組み合わせて、紅葉スポットを探したり、ディズニーランドの混雑を推定したりというのは宙畑でもやってるし!
衛星データの何が良いかって、クチコミのデータよりも客観的な事実から予測ができることですよね~!
オープンデータで理想のカレシ探しを
城戸:というわけで早速、衛星データと地上データを組み合わせた解析が得意な西野さんにお越しいただきました! 西野さん、 今日はよろしくお願いいたします!
西野:こちらこそよろしくお願いいたします。
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科に所属する研究者。「城戸の同級生」という不幸な運命が理由で、休日のカレシハントに駆り出された。
城戸: もうすぐクリスマスなので、カレシを見つけたいです! 無料のオープンデータを使って!
西野:正直だね~(笑)。えっと……きどちゃんのカレシをオープンデータで……なるほどね! なんでかは微妙にわからないけど、オーケー!
城戸: やった!
オープンデータとは、インターネット上でだれでも入手や閲覧、利用が可能な公共データの総称。営利目的の利用も可能で、近年は複数の異なるデータを組み合わせることによって、新たな発見を生み出す「マッシュアップ」という手法に注目が集まる。
西野: じゃあまず、きどちゃんの好みのタイプを洗い出してみようか。
城戸:まず第一に「センスが合う」人でしょ、知的な人がタイプだから「カフェで読書しがち」な人、オシャレな感じに「ノマドで働く人」がいいよね! 私にあわせて「休日は結構アクティブ」な人がいいな~!
西野:パリピ感がすごい。
城戸:でも、こんな条件でいったいどうやってわたしの理想のカレシを探すんですか?
西野:そういう条件の人が行きそうな場所や使いそうな移動手段を地図の上に可視化して、その人がいる可能性が高そうなエリアを特定してみるよ。地理情報システム(Geographic Information System, GIS)を使えば簡単に可視化や分析ができるし、今回はオープンデータとかネット上でフリーで入手できるデータだけを使ってチャレンジしてみよう。
城戸:なるほど~。
西野:それじゃあ今日聞いた話を元に調査しておくよ。
城戸:よろしくお願いします~♪
GISデータを活用して理想のカレシを探そう!
西野:さーて、きどちゃんの未来のハニーハントのために一肌脱ぎますか。どんな条件だったっけ。あの後新たに聞いた条件も追加してまとめると……。
- ・読書が好き
- ・休日は車で一時間くらいのビーチで本読んでる
- ・車はカーシェアリング
- ・平日は都内のスタートアップで遅くまで働いてる
- ・レンタサイクル使いがち
- ・家の近くのカフェで作業とかしちゃう
西野:謎だ。でもこんな人いそう。六本木一時間くらい歩いたら捕まるんじゃない。
西野:……ちゃんとやろう。GISでやれないことはない(何でもできちゃう、という意味じゃなくて、できなくもないかな的な)。
西野:まずはデータ収集。何から手をつけようか。こういう場合、データ量の少なそうなものから可視化して範囲を絞るのが定石。いきなり都内のカーシェアリングのステーションを全部可視化したりしたら死んじゃう。
- ・読書が好き
西野:ということは、図書館に通いがちだね。図書館のデータなら限られてそう。今回は都内限定で。まずは東京都のオープンデータカタログサイトで「図書館」を検索。
西野:33件出てきた中でGISデータを探す。都の公立図書館調査は量が多いのでパス。区別の図書館一覧もいくつかあるけど、良さげな量のデータがなかなか無いね。。改めて「東京都 図書館 オープンデータ」でぐぐってみる。
西野:お、世田谷区のデータを発見。
西野:24件もある!これは単に世田谷区の面積が大きいから、ではなくて世田谷区はオープンデータの推進に積極的で、GISデータも多く公開しているのです。というわけで、ターゲットは世田谷区。いいね、おしゃれで蓄えのある彼が住んでそう。
西野:図書館のデータをスプレッドシートでダウンロード。KMLやシェープファイルの方がGIS的にはメジャーだけど、今回は一般的に馴染みのあるCSVファイルで。中身はこんな感じ。
西野:はい、ではQGIS(※地理空間情報の作成、編集、可視化、分析、公開を可能とするオープンソースソフトウェア)で早速可視化。
西野:ちょっとはしょりますが、OpenStreetMap(※自由に利用でき、なおかつ編集機能のあるオープンな世界地図)を背景に、CSVファイルを読み込むと、こんな感じ。
西野:結構満遍なく分布してますねー。ここに学校とかの公共機関、電車とかの交通機関、あるいは人口分布とかを重ねてみるといろいろ見えてくるんだろうけど、今回はぐっと我慢。
- ・家の近くのカフェで作業とかしちゃう
西野:続いてこれね、いわゆるノマドワーカーですよ。電源カフェを調べ出したらキリがなさそうなので、まずは代表的なスタバから。
西野:スタバのサイトの店舗検索で世田谷区を検索してみると、18件ヒット。
西野:データ化するとこんな感じ。簡単!でも、このままじゃQGISには読み込めない。x座標とy座標、つまり経度(Longitude)と緯度(Latitude)の情報が必要なのです。いわゆる「ジオコーディング」の作業をしなきゃ。こんなとき便利なのが、東京大学空間情報科学研究センターが提供している「CSVアドレスマッチングサービス」。
西野:住所を入力したcsvファイルを放り込むと、緯度経度の情報を付けて返してくれるという優れもの。もちろんフリー。
西野:返ってきたデータを開くとこんな感じ。これでさっきと同様にQGISで可視化できる。あ、ちなみに最初の図書館のオープンデータはもともと緯度経度の情報が乗ってたので、何もしなくても可視化できました。近年国や各自治体がGISデータの公開を進めているけど、緯度経度の情報が付いていたり、住所だけだったり、あるいは違う座標系の情報で乗ってたりするので、使う際はちょっとした注意と工夫が必要。
西野:話を戻して、今度は
- ・平日は都内のスタートアップで遅くまで働いてる
- ・レンタサイクル使いがち
これさ、多分家の近くにレンタサイクルのポートがあって、そこで借りてオフィスまで乗ってってるんだよ。そしたら遅くなっても帰れるし。
西野:ここでもオープンデータサイトが万能な世田谷区。コミュニティサイクルやレンタサイクルのポートが計7か所あるみたい。これも同じようにデータ化して可視化。
西野:あとはスタートアップの場所。きどちゃんもよく使ってるって言ってたコワーキングに着目してみる。コワーキング.comで世田谷区のコワーキングスペースを調べてみる。
西野:2018年9月11日時点で9件あるとのこと。これも可視化。
西野:じゃーん。こんな感じ。アイコン見やすくしてみたよ。紫の本が図書館、緑のカップがスタバ、赤の自転車がレンタサイクル、青の携帯電話がコワーキングスペース。さて、ここからどう絞るか。
西野:例えば、コワーキングスペースの徒歩圏内にスタバがどれくらいあるか(バッファリング)とか、各施設にもっとも近いエリアはどこか(ボロノイ分割)とか、いろんなやり方があるけど、今回はデータ数も少ないので、パッと見た感じレンタサイクルのポートとスタバ、図書館が一番近いエリアを探す。きっとそこに住んでるはず。
西野:二か所候補があるけど、コワーキングスペースが近場にある東の方にフォーカス。
西野:お、三軒茶屋!いいね!住みたい街ランキングの上位に入る街!ワクワクしてきたよー。近場のオフィスはどんなとこでしょ。
西野:あ、ものづくり学校!ここ知ってる!今年の朝ドラのロケ地じゃん!いいよいいよー、ここにオフィスかまえてることにしよう。
西野:図書館も見てみる。
西野:オフィス行く途中には下馬図書館。スタバの近くには図書館カウンター(なんだろう)。読書好きにはたまらない環境。
西野:さて、残る条件はなんだったっけ。
- ・車はカーシェアリング
西野:でた、カーシェアステーション。これくらいエリアを絞れたら調べやすいねカーシェアマップで三軒茶屋を検索。
西野:53件ヒット。駅周辺のものをチョイスしてデータ化して可視化。紺色の自動車アイコンだよ。
西野:むむ、一か所レンタサイクルのポートと重なってるぞ。
西野:三軒茶屋北レンタサイクルポートとタイムズ太子堂第9ステーション。住所を見ると、ほぼ同じところにあるみたい。これは使わない手はないよね。きっとこの近くに住んでるはず!
西野:さーて、最後はこれ。
- ・休日は車で一時間くらいのビーチで本読んでる
西野:これね、でも考えてみたら三軒茶屋駅って首都高3号線の目の前だし、江ノ島まで一時間で行けますよ。
西野:完璧じゃん。三茶最強説。あとは三軒茶屋にビーチがあればいいよね。
西野:お?
西野:お!!
西野:お!!ビーチハウスあるよ!!!ここ絶対通ってるって!!!!
西野:といわけで、最後あんまGIS関係無くなってた気がするけど、全部可視化してみるとこんな感じです。
西野:つまり、きどちゃんの未来のカレシは
- ・三軒茶屋駅北口周辺に住んでいる
- ・平日は三軒茶屋北レンタサイクルポートで自転車を借りてIID世田谷ものづくり学校にあるオフィスへ通勤している
- ・休日はスターバックス三軒茶屋店や上島珈琲店三軒茶屋店で作業したり、ダイナー&貸しスペース「SARIRAH Candy Store」でパーティーしたりしている
- ・たまにはタイムズ太子堂第9ステーションでカーシェアリングして、第三京浜を通って湘南に行って、下馬図書館とか図書館カウンター三軒茶屋で借りた本をビーチで読んでいる
- ・あるいはビーチハウス「HEYDAY」で海を感じている
西野:きどちゃん、あとは行動あるのみ!!!!!!
次回、三軒茶屋にて実地調査【後編】へ続く!
さて、今回はオープンフリーになっているGIS情報を元に、理想の条件を満たすカレシが居そうな場所を西野さんに探していただきました。
次回は今回の調査結果をもとに、本当に三軒茶屋にわたくし城戸の理想の条件を満たす男性が存在しているのかどうか、実際に現地に赴き調査をしてみたいと思います!
結果はさておき、衛星データを利用すればこのように面白いことができるのだということをみなさまに知っていただけましたら幸いです。
果たして理想のカレシ候補は見つかるのか!? 後編はこちら!