オープンキャンパスが軒並み中止に!? 現役高校生に伝えたい衛星データを使った5つの大学見学術
新生活の準備が始まる季節、新年度からのキャンパスライフに向けて大学周りの環境が気になる学生の皆さんも多いのではないでしょうか。コロナの影響で直接大学の下見に行くことが難しいと思いますが、Tellusを使って大学周りの環境を調べてみてはいかがでしょう。今回は宇宙広報団体「TELSTAR」にご協力いただき、衛星データから見た大学が実際と合っているか?を検証していきます。
2020年は、多くの大学で新型コロナウイルス感染症対策のため、オープンキャンパスがオンライン開催に移行、もしくは中止になりました。
オープンキャンパスは高校生が志望する大学に行き 、大学生活をイメージできる絶好の機会です。これを逃すと次に大学に行くのは受験日という方も多いでしょう。大学生活がイメージできなければ、志望大学を決める際に迷いが生まれてしまうのではないでしょうか。
そこで大学生活をイメージするために役立つのでは?というツールが衛星データや人流データなど、様々なデータを無料で閲覧することができる「Tellus」です。
今回はTellusに搭載されているデータを用いて、キャンパス周辺の環境が分かるかどうかを検証します!
1.衛星データプラットフォーム「Tellus」で検証する5つのポイント
今回「Tellus」を利用して検証するのは以下5つのポイントです。どれも大学生活をイメージする上で重要なポイントと言えるのではないでしょうか。
・オープンストリートマップと光学画像での大学周辺の様子
・植生指数(NDVI)でみた大学周辺の自然の多さ
・人流データから推測する大学帰りのお出かけスポット
・傾斜地から見る通学のしやすさ
・宅地利用動向調査と上記のデータからみる1人暮らしにオススメエリア
2.今回利用する機能とキャンパス周辺の環境検証手順
では、実際にTellusの画面を紹介しながら、調べ方を紹介していきます。
※詳しい説明はTellusのサイトにある「How to Use」をご確認ください。
<TellusにアクセスしてTellus OSを開こう>
Tellusの利用には無料の会員が必要です。Tellusにアクセスして会員登録を完了しましょう。
会員登録が完了したら、「データを扱う」というグローバルナビゲーションから「Tellus OS」を開きます。
<ベースとなるマップを変更してみよう>
ベースとなるマップは、「ベース地図(OSM)」「モノクロベース地図(OSM)」「衛星写真(AVNIR-2)」の3種類が用意されています。
デフォルトで設定されているマップは「モノクロベース地図(OSM)」ですが、今回は地名なども詳細に記載されている「ベース地図(OSM)」を利用しましょう。
Tellusでは、このベースとなるマップに様々なデータを重ね合わせて使用していきます。変更は次のようなステップでできます。
地図上にある上部エリアには作図ツールのアイコンや「モノクロベース地図(OSM)」、「マイツール」などがあります。
「モノクロベース地図」の横にある小さな三角形をクリックすると「ベース地図(OSM)」「モノクロベース地図(OSM)」「衛星写真(AVNIR-2)」という3つの選択肢が出てきます。
ここで「ベース地図(OSM)」を選んでみます。「ベース地図(OSM)」では、地名や道路などが詳細に出てくるので「モノクロベース地図(OSM)」より場所が分かりやすく、どの辺を調べているのかを確認するときに便利です。
<探したい場所を検索してみよう>
次に任意の場所を探す方法をご紹介します。
「学習院大学」の位置を検索する場合、上部にある「Location」と書かれているボックスに調べたい場所の名前や住所を入力します。
いくつか候補が出てくるので自分が調べたい場所をクリックしてください。
すると、調べたい場所が赤いピンで表示されるようになりました。
<マイライブラリからデータをマップに重ね合わせてみよう>
Tellusにある様々なデータは、左側の「マイライブラリ」に収められています。
画面左の「マイライブラリ」をクリックします。右に表示された「データ」をクリックすると、使用できるデータの一覧が出てきます。
ここでは、上から2番目「高解像度光学ASNARO-1」のデータを使用してみましょう。データを表示するときは、斜線の入った目のマークをクリックします。
宙畑メモ
高解像度光学ASNARO-1は、2014年にドニエプルロケットで打ち上げられた地球観測衛星です。分解能0.5m以下、観測幅10kmで観測することができ、世界でもトップクラスの解像度のデータを取得することができます。
このように「TellusOS」を使用することで簡単に衛星データに触れることができました。
基本的な操作がわかったら、いろいろなデータを見てみましょう。
今回、大学周りの環境を調査するのに使用したデータは以下の通りです。
・オープンデータマップ:大学の位置や周辺環境を確認する
・植生指数|AVNIR-2:緑地の分布を調べる
・位置情報|Proflie Passport、人口統計情報|モバイル空間統計:人の流れを調べる
・色別標高図|地理院地図:傾斜地を調べる
・宅地利用動向調査(首都圏)|地理院地図:土地の利用状況を調べる
※なお、地域によってはまだTellusに搭載されていないデータもあります。国土地理院のホームページなど別サイトのデータを活用した項目もありますので本文をご確認ください。
調べるときはデータの仕様を必ず読もう
Tellusを使用する際に注意したいことを一つ説明します。
衛星データや統計データを使用する際は、必ずデータの仕様を確認しましょう。マイライブラリに搭載されるデータの詳細にはデータの提供元やデータのフォーマットが記載されています。Tellusでデータを見るために、最も確認するべき場所は「データ期間」です。これはTellusに搭載されているデータの期間を表します。
今回の調査で使用した「人口統計|モバイル空間統計」というデータを例に挙げると、Tellusのサイトでは次のように記されています。
「人口統計|モバイル空間統計」は期間と場所によってデータがあったり、なかったりすることが分かります。
例えば、東京23区は2016年7月1日から2017年9月30日のデータが存在しますが、熊本県内全域は2016年4月1日から2016年7月31日までです。
Tellus OSでデータが表示されない場合は、搭載されているエリアと期間に該当しているか確認しましょう。
3.データを取得&通学している学生に聞いてみた!
では、使い方が分かったところで、いくつかの大学の周辺環境を調べてみていきましょう。
大学の周辺環境を知っている現役大学生に実際の状況を教えてもらうため、宇宙開発のフリーマガジンを発行する学生団体TELSTARのメンバーに協力してもらいました。
3-1.オープンストリートマップと光学画像で見てみよう
まずは、オープンストリートマップと光学画像でそれぞれの大学周辺を確認します。
Tellusで大学を検索し、大学の所在地にピンを置き、大学を中心に半径1kmの円と大学までの道順を追加しています。最寄り駅から大学までの道のりも表示してみました。
早稲田大学 戸山キャンパス
加治佐:東京メトロ東西線の早稲田駅から大学まではとても近いです。メトロは乗り換えもしやすく、利便性は高いと思う。一方で、朝の通勤電車は混雑していて大変です…。
明治大学 生田キャンパス
荘司:駅からキャンパスまでは体感だと10分くらい。 大学に入るとすぐに急な坂があるけど、エレベーター、エスカレーターが設置されています。
オンライン授業体制以前は、朝は混雑してた。農学部の学生は敷地内に入ってからも校舎までさらに5分ほど歩く。
立命館大学 衣笠キャンパス
水口:図に載っているのは嵐電(路面電車)からの等持院停留所ですね、大学まで最も近いけど、路面電車なので利用する人は少ない。
それ以外の駅は2つあって、JRの円町駅からだと徒歩30分、阪急電鉄の西院駅からだと徒歩1時間もかかるけどバスは混雑しているので、電動アシスト自転車をレンタルする人もいるかな。
3-2.正規化植生指数(NDVI)で大学周辺の緑の 分布をみてみよう
大学周辺に緑(キャンパス内の緑、近くの公園などの施設)があるかどうかを調べるために、「正規化植生指数(NDVI)」を使いました。植生指数とは植物の分部や状態を表す指数です。緑>白>橙の色順で植物が多いことを示しています。
このデータはJAXA(宇宙航空研究開発機構)が開発した陸域観測技術衛星「ALOS」に搭載されたセンサ「AVNIR-2」によって観測されたデータが用いられています。この観測衛星は「だいち」の愛称が付けられており、こちらの方が馴染みやすい人もいるかもしれません。
植生指数について詳しくはこちら
早稲田大学 戸山キャンパス
加治佐:大学周辺の緑は、街路樹が少しある程度。キャンパス内の植物の場所を厳密に把握することは難しそうですね。西には戸山公園があって、緑があることが分かります。
明治大学 生田キャンパス
荘司:キャンパス内には緑が多くて、芝生もあるため、早稲田大学よりも緑が多いと思います。近くには生田緑地があるので、周辺に緑が多いことがはっきりと分かります。
立命館大学 衣笠キャンパス
水口:衛星データの通り、北西に山があり、その他は市街地とはっきり分かる。緑が多いと言っても山の方は人が入っていくことは少ないですね。
やはり都心の大学と山に近い大学とで衛星データでも周りの見え方が異なりました。
キャンパス内の緑の量や木の位置を正確に把握するということは難しいかもしれませんが、自然にどのくらい囲まれて大学生活を送りたいかの参考になるかもしれませんね。
3-3.人流データから金曜の夕方に遊びに行く場所を検討してみよう
次に、もし金曜の夕方に遊びに行くとしたらどこに行くのかを、人流データを使って見てみます。
データの制約から、早稲田と明治は「Profile Passport」を、立命館は「人口統計|モバイル空間統計」を使いました。どちらも携帯電話からの情報を基にメッシュデータとして提供されています。
早稲田大学 戸山キャンパス
加治佐:衛星データによると大学構内に人は少なくて、おおよそデータの通りですね。サークル活動で学生は一定数、構内にいるかな。夕方になるとキャンパス内の人は減って、遊びに行くときは山手線の高田馬場駅に行っていました。
最寄りの早稲田駅付近は昼の方が栄えていて、夜に行くような飲食店は少ない。逆に高田馬場の方は飲食店が多いので、夜はそっちに移動することが多いです。
明治大学 生田キャンパス
荘司:衛星データによると向ヶ丘遊園や登戸が多いことになっているけど、勉強するためにキャンパスや生田駅周辺に残る人も多い。どこかに行くなら電車で30分の新宿に行く人や反対方向の町田に行く人が多いですね。
立命館大学 衣笠キャンパス
水口:バスで河原町(京都の中心繁華街)か、徒歩で北野白梅町に行くことが多い。土日は歴史的な名所や鴨川に行くことができるのが魅力。南東に位置する京都中心地の方が人が多いですね。
人流データで大学周辺を見てみると人が集まりやすい繁華街がどのあたりにあるのかが一目瞭然でした。
大学が繁華街からどのくらい離れているかも何となくイメージできたでしょうか。
3-4.標高図から大学周辺の坂道を見てみよう
大学構内や大学周辺の傾斜地かどうかを見てみます。
データは「色別標高図」を使いました。陰影と段彩の効果を用いて標高の変化を視覚的に表現したものです。
早稲田大学 戸山キャンパス
加治佐:データではパッとは分かりにくいかもしれないですが、この辺りは平坦ではないです。
キャンパス内にみんなから「坂」と呼ばれる所(下図)がある(笑)。ちょっとした坂は結構あるけど、反映されていないみたいですね。
明治大学 生田キャンパス
荘司:データを見ても正北門からキャンパスまでの坂が急こう配になっているのが見えますね。キャンパス内に入ってしまえば平坦になっているので歩きやすいです。自転車で通学する場合は正北門の入口に駐輪出来るんですよ。
立命館大学 衣笠キャンパス
水口:データを見ると平坦に見えますが、自転車だとしっかり漕がないと登れないような坂があります。ただ、急こう配ではないので、データからは分かりにくいかもしれません。
標高図でみると詳細は分かりませんが、周辺に坂があるかどうかは分かりました。事前に知っておくと、通学時間のイメージも付きやすそうですね。
3-5.大学の近くで1人暮らしをするならどこ?
今まで見てきた情報に追加して1人暮らしをするならどこが良いのかを見るために、「宅地利用動向調査」を使いました。これは、国土地理院による調査を基にしたデータです。最新版が2005年ですが、参考になると思います。
また、Tellusには首都圏版しか入っていないので、立命館大学については国土地理院の地理院地図から近畿圏版を入手しました。
早稲田大学 戸山キャンパス
加治佐:データの通り大学周辺に住宅が多く、早稲田の周りに住む人はいるけど、都心で家賃が高いので、西武線沿いに住んで電車で通学する人が多いですね。西武新宿線沿いが人気。
明治大学 生田キャンパス
荘司:大学の近くに住む人が多いですね。隣駅から自転車や原付で通う人もいます。正門の方だと、坂道を避けられて、家賃も安いのでおすすめだと思います。
立命館大学 衣笠キャンパス
水口:周辺は宅地が多く、大学の周りに住む人もいます。一方で、大学は駅から離れているので近くの繁華街(北野白梅町)やJRの駅付近(円町など)を選んで徒歩か自転車で通学する人も多いですね。
宅地利用動向調査のデータを見ると土地利用の分布が分かりやすいです。今まで見てみたデータと照らし合わせてどのあたりに住むといいのか、周りに何があるかがよりイメージしやすくなったのではないでしょうか。
4.まとめ
Tellusから得た多くの情報は合っていましたが、緩やかな坂道などデータからは分かりにくいものもありました。
また、今回は1時点のデータしか見ていませんが、例えば人流データは1日や1週間の中で時間を変えて人の動きを予測することでさらに分かることがあります。
今回使った「Tellus OS」はプログラミングの知識がなくても簡単に使うことができます。衛星データを参考にして、志望の大学を絞りこんでみるのもいいかもしれませんね。
今回は、大学周りの環境を調べてみましたが、引越先や旅行先を検討する際に、Tellusを使ってみることで、いろいろな視点で街の雰囲気を想像することができそうです。
なかなかコロナの影響で実際に出歩くことが難しい状況ではありますが、気になる場所を探してみて、Tellusを使ったヴァーチャル旅行や、街歩きをやってみてはいかがでしょうか?