宙畑 Sorabatake

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JPモルガン、衛星間通信を利用した軌道上のブロックチェーン決済の試験に成功【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/2/22〜2/28】

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!

JPモルガンがGomSpaceの衛星を利用したブロックチェーン決済試験を実施

米国の銀行大手JPモルガン・チェースは、デンマークの衛星メーカーGomSpaceの衛星を利用した、ブロックチェーン決済の軌道上実証に成功しました。

使用されたのは、GomSpaceの「GOMX-4」と呼ばれる2018年2月に打ち上げられた2機の衛星です。高度約500kmで、太陽同期軌道を周回しています。6Uサイズで、衛星間通信機能、船舶監視システム(AIS)と航空管制・監視システム(ADS-B)、ハイパースペクトルカメラなどが搭載されています。

GOMX-4のイメージ Credit : GomSpace

今回は、2機の衛星間でブロックチェーンの決済を行う試験が行われ、地上との通信が不要な分散型ネットワーク技術が検証されました。

2020年10月にJPモルガンは、ブロックチェーン事業を総括する事業部を新設するなど、ブロックチェーンを活用した事業開発に積極的に取り組んでいました。JPモルガンの担当者によると今回の実証は、IoT決済を完全に分散化された方法で探求する手段として宇宙という地球から切り離された空間を利用することになったようです。

事業化していくと、災害時などにデバイスが故障するといった事態を見据えたリスク分散に役立てられるのではないかと考えられます。

気象データ会社ClimaCellが衛星コンステレーション構築計画を発表

2月23日、米国の気象データ会社ClimaCellが数十機のレーダー衛星を2022年に打ち上げる計画を発表しました。衛星事業者としては、Spire Globalが気象データの取得を行っていますが、民間の気象会社が主体となって衛星コンステレーションを構築するのはClimaCellが初めてです。

ClimaCellは2016年創業のベンチャー企業。デルタ航空やユナイテッド航空、Uber Technologies、ソフトバンクのグループ会社であるSBエナジーなどの顧客向けに、気象データを提供しています。

一般的な気象衛星に搭載されている観測機器では、大気の状態をある程度は把握できますが、暴風雨などの気象現象を正確に把握することはできませんでした。

そこでClimaCellは、サイズは小型冷蔵庫程度でありながら、NASAとJAXAが合同で進める全球降水観測計画の「GMP主衛星」や熱帯降雨観測衛星「TRMM」など、3,500〜4,000kg級の衛星に匹敵するスペックの衛星の打ち上げを計画しているようです。

ClimaCellのレーダー衛星のイメージ Credit : ClimaCell

ClimaCellの衛星コンステレーションが構築されると、GMP主衛星やTRMMでは3日に1度ごとだった観測頻度が約50倍に増加する見込みです。ClimaCellのサービス提供地域にも拡大にもつながるのではないかと考えられます。

衛星画像解析プロバイダーEOSDAが衛星の打ち上げ計画を発表

衛星画像解析技術のプロバイダーであるEOS Data Analytics(以下、EOSDA)が、2024年までに7機の光学衛星を打ち上げる計画を発表しました。衛星は農地のモニタリングを中心に利用されるとのことです。

EOS Satのイメージ Credit : EOS Data Analytics

衛星のスペックは、パンクロマチックが1.4m、マルチスペクトルが2.8m。現在、一般的に農業モニタリングに使用される衛星の分解能は大体10m前後ですので、この分野ではかなり高精細な画像を取得することになりそうです。また、観測の頻度は3日に1回程度になる予定です。

EOSDAは2015年創業のベンチャー企業。創設者のマックス・ポリアコフ博士(Max Polyakov)は、ロンドン証券取引所に企業を上場させた初のウクライナ人で、IT起業家として知られています。

Max Polyakov氏 Credit : Noosphere Ventures Source : https://noosphereventures.com/noosphere-ventures-july-an-interview-with-max-polyakov-three-legs-of-venture-investing-and-future-of-electro-jet-low-thrust-engines-by-sets/

ポリアコフ博士は、ウクライナに拠点を構えるFirefly Aerospaceなどに出資する宇宙分野に特化したベンチャーキャピタルNoosphere Venturesの創設者であり、宇宙ビジネスに精通している人物です。

ClimaCellやEOSDAのように、衛星事業者の大口顧客であると考えられるデータサービスのプラットフォーマーが自社で衛星を所有するケースが増えれば、衛星事業者は画像の価格を引き下げるか、技術的難易度が高いデータの取得への挑戦が強いられるようになるのではないでしょうか。

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参考

GomSpace and J.P. Morgan test blockchain transaction on GOMX-4 constellation

Blockchain Transaction Tested By GomSpace + J.P. Morgan Via The GOMX-4 Smallsat Constellation

JPMorgan's blockchain payments test is literally out of this world

GomX-4 (GomSpace Express-4) Mission

ClimaCell is Going to Space

ClimaCell to launch dozens of radar satellites to improve forecasts

Украинская компания EOSDA запустит на орбиту 7 спутников до 2024 года

EOS Data Analytics unveils first agriculture-focused satellite constellation

Украинская команда EOS получила грант в 300 000 евро от Европейской Комиссии