宙畑 Sorabatake

ビジネス事例

全球変化検出サービス「GRASP EARTH」とは?

株式会社Ridge-iでは、衛星画像を用いて全球で変化検知ができるサービス(GRASP EARTH)を開発いたしました。本記事では、GRASP EARTHを使用してCOVID-19が街・都市に与えた影響を直感的に分かりやすく視覚化したいと思います。

今回、Tellusを中心とした新たなエコノミー創出を目指すパートナーシップ「xDataAlliance」の協力企業、株式会社Ridge-iより衛星データを用いたウェブサービス「GRASP EARTH」を開発したとご連絡をいただきました。

Ridge-i社は現在Tellusを利用して駐車場の場所を衛星データで自動検出するアルゴリズムをさくらインターネットからの委託を受けて開発するなど、衛星データを活用したプロダクトの開発に取り組んでいます。

今回、Ridge-i社が開発した「GRASP EARTH」は、任意の場所の地理空間情報を「地球上のあらゆる地点で」「同品質のデータを」「時系列に」比較できる、衛星データの強みを全部盛りで、難しい知識を持っていなくとも誰もが気軽に利用できるウェブサービスです。Tellus上のツールではありませんが、衛星データの利用イメージなどを体感いただけるツールになっていますので、ご紹介させていただきます。

本記事では、「GRASP EARTH」でどのような使い方ができるのか。開発に携わった株式会社Ridge-iの畠山さん、川北さんに教えていただきました。

GRASP EARTHの開発経緯

株式会社Ridge-iはカスタムAIを基本としたサービスを展開しているテックイノベーションファームです。異常検知手法を応用した土砂崩れ検出AIや、駐車場検出AIなどを開発し、最近では、衛星画像とAIを組み合わせたソリューション開発もしております。

その中で様々な業種の方々から「衛星画像で何ができるのか」「どういうものが見れるのか」を簡単に確認できる方法はないのかというお問い合わせを多くいただいております。

そこで、弊社では無料で公開されているSentinel衛星データをベースにして、地球上のあらゆる部分で変化を簡単に比較抽出できるウェブサービス「GRASP EARTH」を開発いたしました。本ウェブサービスの使用例について、COVID-19が街・都市に与えた影響を可視化した事例をご紹介いたします。

※海洋部分のデータは取り扱っていない部分があります
※β版では、ロシアや南半球の一部(オーストラリアの一部、ブラジル、アフリカの一部)でデータ取得ができない地域もあります

Ridge-iホームページ

GRASP EARTHサービスページ

GRASP EARTHについて

GRASP EARTHは、SAR画像をベースとしたアプリケーションである「GRASP EARTH SAR」と、光学(カラー)画像をベースとしたアプリケーションである「GRASP EARTH COLOR」の2つで構成されています。

「GRASP EARTH SAR」は、どこで変化がおこっているのか、それがいつ変化したのかがわかり、「GRASP EARTH COLOR」からは、それがどのように変化したのかがわかります。

以下、それぞれ説明します。

GRASP EARTH SARについて

これはSAR(Sentinel-1)ベースの変化検出アプリケーションです。このサービスは、地球上のどこに変化があったのかを視覚的に可視化することが可能です。
SAR衛星は電波を発射し、地上から跳ね返ってきた電波から地上を観測しております。

SARについて、詳しくは「合成開口レーダ(SAR)のキホン~事例、分かること、センサ、衛星、波長~」をご覧ください。

もしも地上に多くの人工物が存在している場合(地上が複雑な形状をしている場合)、衛星に跳ね返ってくる信号が大きくなり、逆に地上に人工物が少ない場合(地上が複雑な形状をしていない場合)には衛星に跳ね返ってくる信号は小さくなります。
例えば駐車場の場合、ある2時点間でのSAR衛星で取得された後方散乱波(電波強度)の差分を取ることで車の台数が増えたのか、減ったのかを判断することができます。

Date1からDate2にかけて車の台数が増える例 Credit : 株式会社Ridge-i
Date1からDate2にかけて車の台数が減る例 Credit : 株式会社Ridge-i

このように、ある2時点間の変化を簡単に視覚化できるように開発したのがGRASP EARTH SARです。

このアプリケーションでは、ある2時点間で人工物が減少した点を赤色で示しており、人工物が増加した点を青色で示すことで、直感的にどこで変化が起きたのかを明確にしています。

アプリケーションの機能一覧

GRASP EARTH SARのユーザーインターフェイスは下図のようになっています。
大まかな流れとしては以下の4ステップとなっています。詳細は具体例含めて動画で説明します。

1. 「場所検索」より、変化を捉えたい場所に遷移する
2. 「比較したい日時」で変化を捉えたい時期を指定する
3. 「Rectangle、Polygon、Point」から、変化を捉えたい範囲を指定する
4. 指定範囲・時期における変化を計算した結果が表示される

それでは、いくつか具体的な例をいくつかみていきましょう。

築地市場の変化

では、築地市場を2019年と2020年で比較してみましょう。この2時期を比較することで、築地市場の解体工事の様子を捉えられるのではないかと期待できます。

築地市場の解体工事について」や「旧築地市場の解体工事におけるアスベスト処理について」の記事を参考とすると、動画中で赤い箇所は建物が取り壊された部分、青い箇所はアスベスト除去対象箇所の隔離養生をそれぞれ捉えられているのではないかと考えられます。

他の日付を指定したい場合には、比較したい二つの日時を左側コントロールパネルのDate1、Date2部分に入力してApply Datesボタンを押すことで簡単に画面を更新できます。簡単に時系列グラフも取得できるため、いつ変化が起きたのかということも直感的に分かります。

ディズニーランド駐車場の利用状況の変化を比較

もう一つ、変化が分かりやすい例をみてみましょう。
COVID-19により、アメリカ・カリフォルニア州のディズニーランドは閉鎖しました。そのため、COVID-19前後の駐車場部分を比較することで、変化が現れるのではないかと期待できます。

カリフォルニア州のディズニーランドは、COVID-19の影響で2020年3月14日から閉鎖されており、1年経過した2021年3月14日まで再開はされておりません(一部再開する計画もあります )。

そのため、2020年3月14日の前後で駐車場を利用している車の台数が減少しているのではないかと推察できます。

この変化をGRASP EARTH SARで見てみましょう。通年で比較すると分かりやすいため、今回は2019年7月1日と2020年7月1日の期間の変化を例として見てみます。

GRASP EARTH SARでカリフォルニア州のディズニーランドを表示すると以下のようになります。

駐車場部分が赤くなっており、この2時点間で駐車されている車の台数が減少していると推察されます。それでは、これがCOVID-19の影響かを示すために、時系列での変化をグラフ化してみましょう。

左のコントロールパネルの 「任意の範囲を四角で囲むことができるRectangle」、「任意の範囲を指定できるPolygon」、「任意の場所を指定できるPoint」のいずれかを押すことで領域を指定することで、その指定された領域の人工物の多さ指数を自動的にグラフ化することができます。
ここでは、駐車場の一部(ダウンタウン・ディズニー・ディストリクト・パーキング)を指定します。

見たいエリアを指定することで、グラフが自動的に生成されます。生成されたグラフの横軸は時間で、縦軸は人工物の多さの指数(値が上がるほど人工物がより多く存在する)となります。
上記のグラフから、3月下旬から4月上旬にかけて指数がガクッと下がっていることが分かります。
ディズニーランドが封鎖された時期と、指数が下がっている時期と整合性が取れます。

より細かく台数の変化まで知りたい場合には、ぜひ弊社までコンタクトをいただければと思います。

上記一連の流れを動画にしたものを以下に示します。

Sentinel-1(SAR)ベースのGRASP EARTH SARでも変化は十分に検知できますが、実情を人が理解するには光学画像の方が便利です。そこで、Sentinel-2(光学)で比較できるGRASP EARTH COLORも開発しました。

GRASP EARTH COLORについて

こちらは光学のRGB(Sentinel-2)ベースで変化前後の比較が可能なアプリケーションです。

このサービスは、2時点間の地上の様子をカラー画像で比較することができます。以下が画面のサンプルとなります。
この画像では、GRASP EARTH SARでもご紹介したカリフォルニア州のディズニーランドを見ています。

この画像では、GRASP EARTH SARでもご紹介したカリフォルニア州のディズニーランドを、GRASP EARTH COLORを用いて見ています。

画像の中心部にあるカーソルを掴んで左右に動かすことで、2時点間の変化をカラー画像で直感的に比較できます。
左右にカーソルを動かして比較した結果を下図に示します。

赤丸部分で囲まれた、駐車場の一部(ダウンタウン・ディズニー・ディストリクト・パーキング)では、2019年7月1日と2020年7月1日を比較すると大きく車が減少していることがカラー画像からも直感的にわかりました。

上記一連の流れを動画にしたものを以下に示します。

Ridge-i社から宙畑読者へ

本記事では、株式会社Ridge-iで開発したウェブサービス「GRASP EARTH」について、COVID-19の影響による駐車場の利用状況の変化を例に紹介しました。
皆さまも、GRASP EARTHで見つけたことを、#GRASP_EARTHのハッシュタグとスクショを貼り付けた上で、どのような変化を捉えることができたのか、ぜひ私たちにも教えてください。

使用例のページでは、随時他の例も更新する予定ですので、ぜひ弊社の「GRASP EARTH」サービスページにも来ていただければと思います。

またGRASP EARTHをより多くの方に利用してもらえるようなプロダクトにするため、使い勝手などをレポートして頂くサポーターも募集しています。
ご興味のある方はこちらより「GraspEarthサポーター希望」をかいてエントリーしてください。お待ちしています!

まとめ

株式会社Ridge-iの畠山さん、川北さんに新しく開発した衛星データを活用した新サービス「GRASP EARTH」について紹介いただきました。
今回は車の増減を例にCOVID-19の影響を紹介いただきましたが、衛星データから分かることはそれだけではありません。
例えば、「森林の増減」「土砂崩れの被害状況」「不動産の変化」などの把握にも有効です。

現在、「GRASP EARTH」に用いられているのはSentinelという欧州の衛星シリーズのデータのみです。しかしながら、今後、様々な衛星が宇宙へと運ばれ、様々な種類のデータが、これまでより高頻度で地球に送られることが想定されます。

ぜひ読者の皆さんには「GRASP EARTH」を触っていただき、「地球上のあらゆる地点で」「同品質のデータを」「時系列に」比較できる衛星データの魅力を知っていただき、ご自身の課題解決に使える可能性がないかをご検討いただけますと幸いです。

また、様々な地理空間データを確認するという点では「Tellus」にて複数の面白いデータを閲覧できますので、こちらもぜひご覧いただければと思います。

★衛星データプラットフォームもぜひ触ってみてください。

Tellusへのアクセスはこちらから!

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