MicrosoftのAzure OrbitalにThales Alenia Spaceのソフトが追加【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/04/05〜04/11】
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MicrosoftのAzure OrbitalにThales Alenia Spaceのソフトが追加
Microsoft Corporationが、2020年9月に発表した地上局サービスのプラットフォームである”Azure Orbital”にフランスの宇宙企業のThales Alenia Spaceが開発した画像生成ソフトを組み込むことを発表しました。
Azure Orbitalとは、Microsoftが所有するデータセンター内に衛星地上局を構築し、衛星事業者がクラウドベースの地上局サービスを利用可能になるプラットフォームです。
今回Azure Orbitalに追加されたThales Alenia SpaceのソフトウェアはDeeperVisionと呼ばれ、機械学習を活用した地球観測画像の大量処理を可能にします。衛星からダウンリンクした画像がDeeperVisionに接続されると同時に分析が開始します。
また、指定したエリアの新しい衛星画像が届くと、Deeper Visionは同一地域の過去の画像と自動で比較し、変化した部分を自動で抽出します。
今回の発表はこちらの動画で説明されています。
Azure OrbitalのCorporate Vice President(CVP)であるTom Keane氏は、今回の発表について以下のコメントを出しています。
Processing space satellite imagery at cloud-scale changes the game for our customers who need these AI/ML data insights to quickly make informed decisions for mission success. Supporting impactful innovation for our customers is a top priority for our Azure Space efforts – adding DeeperVision to Azure Orbital is a testament to our ongoing collaboration with Thales Alenia Space.
(訳:衛星画像をクラウドで処理することは、事業の成功のために機械学習による衛星データの分析を必要とする我々の顧客に変革をもたらします。顧客にインパクトのある価値提供を行うことは、Azure Spaceの最優先事項です。DeeperVisionのAzure Orbitalへの追加は、Thales Alenia Spaceとの継続的な協力関係を表しています。)
衛星から観測データを受信する地上側のアンテナやそれに付随する設備を、自社で所有することなくカーシェアリングの様に必要な時に必要な分だけ利用できるサービスを意味するGSaaS(Ground Segment as a Service)市場には、Microsoftの他にAmazonも参入しています。(詳細はこちら:ジェフ・ベソス氏も宇宙ビジネスに本気! GAFAMとBATXの宇宙ビジネス参入事情)
DeeperVisionが追加されることによって、衛星から受信したデータが顧客により迅速に利用しやすいデータの状態で提供されることになります。さらに、Microsoftは年内に地上局を増やそうと計画しているようです。これによって今後のAzure Orbitalの事業にどのような影響が起こるのか注目です。
ORBCOMMがGI Partnersによる買収契約に合意
低軌道通信衛星サービスやIoTソリューションを展開する大手宇宙企業のORBCOMM Inc. が、データインフラ事業への投資に力を入れているPEファンドのGI Partnersによる買収契約に合意したことを発表しました。
今回の契約に基づき、純負債を含めて合計約11億ドル(約1200億円)の現金がORBCOMMに支払われる予定です。
(※PEファンドとは、VCと異なり、成長フェーズを過ぎ確実なキャッシュフローを生んでいる企業に投資を実行し、単独で経営権を所有しながら高い内部収益率を獲得する投資ファンドです。)
ORBCOMMは、産業用M2M(Machine-to-Machine)通信市場での事業拡大のために独自の買収を重ねていましたが、COVID-19の影響を受け、同社の2020年の収益は2019年から約10%減少し2億4,850万ドル(円)となっていました。
GI Partnersによる今回の買収は、ORBCOMMが産業用IoT分野およびM2M分野の競争力を強化すると共に、長期的な事業戦略および市場拡大を期待しているようです。
ORBCOMMのCEOのMarc Eisenberg氏は今回の買収契約について以下のコメントを出しています。
This transaction will provide immediate and substantial value to ORBCOMM stockholders, reflecting the tremendous commitment and work of our employees and stakeholders. The partnership with GI Partners will provide us the opportunity to rapidly advance our long-term strategy.
(訳:今回の買収は、ORBCOMMの株主に実質的な価値を提供するものであり、当社の従業員や関係者の多大な献身と努力を反映したものです。GI Partners社とのパートナーシップにより、当社の長期戦略を迅速に推進することが可能になります。)
2社間の取引は2021年下半期に完了する予定で、本取引完了後、ORBCOMMは非公開企業となりNASDAQ市場からの上場廃止となります。PEファンドの傘下となるORBCOMMが今後どのように衛星通信事業に取り組むのか、今後とも注目です。
OroraTechがSpireのキューブサットにセンサーを搭載する契約を締結
衛星による山火事監視サービスを展開するドイツの宇宙ベンチャーのOroraTechが、同社の開発したセンサーをSpire Global, Inc.の6Uキューブサットに搭載するパートナーシップ契約を締結しました。
OroraTechが独自に開発した赤外線カメラと高性能GPUを搭載したデータ処理装置はSpireのキューブサット上で動作し、山火事のリスクがある地域を特定して監視します。OroraTechのセンサーで山火事を検知すると、GlobalStarの通信衛星網を利用し軌道上のどこからでも数秒以内に山火事の早期発見警報が伝わります。
衛星データを地上で受信した後に解析するのではなく、衛星に搭載したセンサーが撮像後、解析まで行ってから地上に情報を送信するのが、OroraTechの事業の特徴です。同社の山火事監視サービスは、学術機関やNPOの他、林業従事者や保険企業を潜在顧客に据えています。
OroraTechの共同創業者兼CEOであるThomas Grübler氏は、今回の契約について以下のコメントを出しています。
We are very happy to work with Spire as they are helping us to speed up time to market solving the crucial wildfire problem and offering high-resolution thermal infrared data for many other use-cases.
(訳:Spireと協力し、市場投入までの時間を短縮することで、重要な山火事の問題の解決や、他の多くの用途に高解像度の熱赤外データを提供することができることを非常に嬉しく思います。)
今回契約された6Uキューブサットは、2021年12月に打ち上げが予定されています。
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参考記事
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Orbcomm Enters Into Agreement To Be Acquired By GI Partners
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