燃料代にびっくり! 6時間のマグロ釣り、衛星データなしで海を駆け回った結果
度々、衛星データx漁業の話題を取り上げる宙畑編集部。いてもたってもいられず、マグロ釣りに行ってきました!
衛星データを活用した海釣りで大漁報告ができてから早2年。
2年間のあいだに宙畑宛に大分の漁師さんからお話をいただいたり、漁業xデータ活用を推進する企業の取材を行うなど、漁業における衛星データ活用の可能性を模索する機会が多くありました。
そして、2021年6月18日、宙畑編集部はマグロ釣りにチャレンジしてきました。
釣り当日は晴れていたのですが、それまでは悪天候が続き、衛星データの取得が困難だったために、今回は衛星データの活用は無し。
※海水面温度を取得できる地球観測衛星は、雲がある場所のデータを取得することができません(詳細はこちら)。
衛星データ活用無しでのマグロ釣行は新たな発見も多く、漁業xデータ活用について考える多くの視点を得ることができました。
■場所は相模湾、マグロ釣りの流れ
まず、今回マグロを釣りに向かったのは相模湾。近年、相模湾に船を出し、キハダマグロを釣るという海釣りが夏のレジャーとして定着しているようです。
マグロを釣るためのポイントはひとつ、鳥山を見つけること。鳥山とは、マグロやブリなど、フィッシュイーターと呼ばれる大きな魚に小魚の群れが追われて、海面にバシャバシャと逃げるタイミングを狙って、鳥たちが集まって山のようになっていること。元々は漁師が使っていた言葉「魚群(なむら)」から、ナブラとも呼ばれます。
鳥山を見つけたら急いでその近くまで船で向かい、鳥山の近くにルアーを投げると、マグロが小魚と勘違いして捕食し、釣れるという手順です。
■今回の釣行ルート
当日は逗子・葉山の港からレンタルボートを借りて、出港します。
船長、ミゾベさんによれば「マグロがいるであろう鳥山を目視で見つけるのは難しく、6時間の釣行のうち、5時間くらいは走りっぱなしで探すことになる。衛星データなどを使って、海面温度やクロロフィルなどから海の状態を知ることで鳥山の発生場所も当てが付けられるようになれば最高ですね」とのこと。
さらに、マグロが釣れるかどうかは、10回漁に出て、1回釣れれば御の字とのことで、坊主(釣果が0)も覚悟が必要とのことで、よほどとても困難な釣行が予想されます。
そこで、今回は、坊主を避けるためにも、直近釣れ始めているたらしいシイラを狙って、海に浮かぶ複数のブイを目指しては船を止めて釣り、ブイに向かう間は鳥山を探し続けてマグロを狙うというルートを通ることになりました。
果たして、宙畑一行はマグロ、シイラを釣って笑顔で帰港することができるのか、以下、出港してから帰港まで、時系列に紹介していきます。
■出港!
それではいよいよ出港です。本日の釣行メンバーは以下の6名でした。
まず向かったのは浮き相模3号ブイです。
ブイに到着するまでに鳥山がないかを注意深く探し見ながら船を進めます。
船が複数集まっているところは見つかりますが、鳥が集まっているところは見つからないまま浮き相模3号ブイに到着。
9:00:浮き相模3号ブイ
「浮き相模」は、神奈川県水産課がカツオやメジ(クロマグロの若魚)などの回遊魚が集まることを目的として相模湾に設置した浮魚礁で、人工的に近くに魚が集まるように設置されたものです。
※なぜ漁礁に魚が集まるか気になる方はこちらをご覧ください。
ブイにはシイラが集まりますよ、とミゾベさん。シイラは、ハワイではマヒマヒとも呼ばれる白身魚で、ソテーやフライにしても美味しい魚です。
さっそく海面を跳ねている姿も見え、船の下を綺麗な青い魚影が通ることも多々……と、盛り上がっていたらサコダさんの竿に一度ヒット! しかし、残念ながら途中でバレてしまいました。
その後はしばらくヒットがなく、おそらくシイラの警戒心が高まったのだろうということで、次のブイへ移動。
9:53:イルカと遭遇
移動している途中ではイルカにも遭遇。
海に出ればこんな贅沢なイベントもあるのですね。ただ、船長ミゾベさんによれば、イルカを見た日は魚が釣れないという説があるようで、マグロゲットに暗雲が立ち込めます。
10:33:鳥たちは休み中? 海洋ゴミも発見
続いて目指すは浮き相模2号ブイなのですが、本来あるはずの場所で見つからず、次の浮き相模1号ブイを目指すことに。
ちなみに、3号ブイから2号ブイまでは5kmほど距離があり、鳥山がないかずっと気を張っていたのですが、鳥が群がって餌を捕まえている様子はなく、休んでいたり、ただ飛んでいたりという状態ばかりが目につきました。
また、海を走る過程で、空き缶やお菓子の袋といった海ゴミもちらほら見かけました。いったいどこから流れてきたのでしょうか。
宙畑メモ 海ゴミx衛星データ
海ゴミ問題に衛星データを活用する事業について宙畑で取材しています。
参考:海のごみ対策をボランティアで終わらせない。プロジェクト・イッカクが目指す海ごみ削減のための「経済システム」とは
10:41:浮き相模1号ブイに到着、メーター超えのシイラをゲット!
そして、結局鳥山を見かけることがなく、浮き相模1号ブイに到着。ここは浮き相模3号ブイ近辺よりもシイラが跳ねている様子が見れました。
到着してすぐ、ついに、サコダさんの竿にシイラがヒット! 無事に引き上げられ、この笑顔です。
坊主は回避されたことに一同安堵。
続けて、サコダさんの竿にヒット! 釣れたのは、1.06mの巨大なシイラでした。
1匹目の写真と比較するとその大きさの違いに驚きます。
ブイの周りにシイラが集まっているということが明確にわかった瞬間でした。
さて、先にシイラが2匹釣れてしまいましたが、鳥山はここまで1度も発見できていません。
次の目的地は城ヶ島沖浮漁礁ブイ。一直線には向かわず、船を南側に走らせ、大きなカーブを描きながら向かいます。
鳥山を、6人全員で必死になって探します。
13:10:城ヶ島沖浮漁礁ブイに到着
……結局鳥山を一度も見かけることなく、城ヶ島沖浮漁礁ブイに到着してしまいました。
城ヶ島沖浮漁礁ブイは、水温のみ計測する「浮き相模」と異なり、海流の流れの向きや流れの強さも計測し、データを公開しています。これらのデータと衛星データとを重ねて見ることで、衛星データの精度を合わせることができそうですね。
20分ほど近くにとどまり、各々ご飯を食べたり、釣りを楽しんだところで、再び船を走らせます。あとはマグロを釣るため、鳥山を探すのみ!
港に戻る方向に船を走らせながらも、出来る限り通っていないルートで船を走らせます。
……
■帰港!
結局、一つの鳥山も見つけることができず帰港。
帰港してすぐ、港の方から、シイラ大きいですね!と驚きの声をいただきました。
ただし、結果としては、念願のマグロは釣れず……。
同じ日に釣りに出かけていたご一行によると13時頃に城ヶ島沖浮漁礁ブイの北側にある亀城礁灯標付近で鳥山が発生していたらしく、サバがよく釣れたとのことでした。マグロによって出来た鳥山ではなかったようでしたが、場所、時間帯的にニアミスでした。惜しい!
そして、本日のお会計を済まして各々帰宅というところで、会計を見て一同びっくり。なんと、本日67.1lの燃料を使い、燃料代だけで15000円以上もかかっていたのです。
漁師さんは1回の漁でどれだけの魚を獲れば儲かるのか……。
仮に今回の収支を計算するならば、今回は6人乗りだったので、仮に全員の時給が1000円だったとしても単純計算で36000円の人件費。これに先ほどの燃料代を合わせて51000円がコストです。
売上は、シイラは2019年の平均kg単価が75円で、今回釣れたシイラが2匹で20kgだったとしても、1500円。
つまり、約5万円の大赤字となります。
さらに、近年は地球温暖化の影響で昔とれていた場所で魚が獲れなくなった、後継者不足で、後継者がいたとしても、教える時間がなかなかとれないといった行業における課題をよく耳にします。
これらの課題に衛星データ含む様々なデータの利活用が解決の一助となれるよう、宙畑はメディアとして、実際にこれらの課題に取り組んでいる企業を紹介していくことはもちろん、私たち自身も衛星データの社会実装に向けてできることから検証を行いたい所存です。
■次回への意気込み
今回は残念ながら釣り当日の前1週間の天気が悪く、衛星データの活用ができませんでした。
しかしながらブイの観測データが公開されていることから、衛星データとの答え合わせができることが分かりました。
ちなみに、6/18の午前9時48分のデータは少しだけ雲がかかっており取得できていない場所もありますが、以下のような海水温の分布だったようです。
後日船長のミゾベさんに確認してもらったところ、「イルカが現れたところは、江ノ島の下の暖かいところでしたね。」とのことで、データを用いればイルカが現れる場所を事前に予測して、その近辺を避けるということが出来るかもしれません。
また、現在は前日、2日前のデータが当日に見れるという状態ですが、仮に午前9時に衛星が取得したデータを当日中に見れるようになれば、より釣りの精度も高まるかもしれませんね。今後の衛星データの取得タイミングの進化にも期待大です!
宙畑としては、今回新たに分かったの情報も踏まえ、衛星データからマグロがいるだろう水温の場所を探り、鳥山が発生するかもしれないポイントを絞ったうえで、マグロ釣りを行うリベンジが出来ればと思います。
鳥山を探すならばこのデータも使えるのではないか?というアドバイスがあればぜひ宙畑まで教えていただけますと幸いです。