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タカラトミーとJAXAらが共同開発した探査ロボが月面へ。小型月着陸実証機「SLIM」に搭載【宇宙ビジネスニュース】

【2022年3月22日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。

3月15日、JAXAは小型月着陸実証機「SLIM(スリム)」のプロジェクト概要についての記者説明会を開催しました。

「降りやすいところ」ではなく「降りたいところ」に着陸する技術の実証を目指す

SLIMは、月へのピンポイント着陸技術の実証と軽量な月惑星探査機システムを実現して月惑星探査の高頻度化に貢献することを目的とした小型月着陸実証機です。

SLIMのイメージ Credit : JAXA

従来の月着陸の精度は数km〜十数kmでしたが、SLIMは100mオーダーの着陸精度の実証を目指します。これにより、クレーターへの落下を防ぐことができます。さらに、月極域で水資源の探査を行う場合にも、太陽光が当たる限られた区域に着陸できるピンポイント着陸技術の確立が重要になると考えられています。

説明会資料より Credit : JAXA

着陸地点は、「神酒の海」という低緯度地域にあるクレーター「SHIOLI」の近傍に設定されています。

着陸予定地点 Credit : NASA/LRO

月面への着陸成功後は、搭載されている分光カメラを用いて、月マントル由来と考えられる物質の成分分析を行う計画です。月の起源の解明に繋がるのではないかと期待されています。

SLIMのプロジェクトマネージャである坂井真一郎教授は、説明会で世界的に月面探査への意欲が高まっていることについて

「長年脈々と続けられてきた色々な研究の成果がようやく形となって、月に向かおうとしています。SLIMプロジェクトが始まって以降、月に関するアクティビティや議論が活発になってきています。そういう中で、SLIMに注目していただいていることを強く意識しています。楽しみであり、責任も感じています」

「SLIMで得られる技術は、JAXAで実施しようとしている月極域探査や火星衛星探査計画MMXなどに継承されていっています」

とコメントしました。

SLIMに搭載される小型プローブと​​変形型月面ロボット

SLIMにはLEV(Lunar Excursion Vehicleの略称)と呼ばれる小型プローブと変形型月面ロボットが搭載されます。

説明会資料より Credit : JAXA、東京農工大学、中央大学

月面を跳躍しながら自由に移動するLEV-1

1つ目のLEV-1は、移動技術の工学実証を目的としています。SLIMが自由落下している最中に分離した後、月面を跳躍しながら自由に移動して、探査を実施します。可視光カメラのほか、放射線計、温度計が搭載されています。さらに、車輪を回転させる際のデータから地盤の特性についてもデータが得られる可能性があると見込まれています。得られたデータはLEV-1が直接通信して、地球に送信する予定です。

開発はJAXAと東京農工大学、中央大学、和歌山大学らが担当しています。

説明会資料より Credit : JAXA、東京農工大学、中央大学

タカラトミーらと共同開発したSORA-Q

LEV-2は、二輪走行が可能な変形型月面ロボットです。JAXAと共同開発した玩具メーカーのタカラトミーはLEV-2の愛称を「SORA-Q」と名付けています。

SORA-Q はLEV-1とともにSLIMから分離された後に、SLIMの着陸地点の周辺の様子を撮像する予定です。前後2つの可視光カメラが搭載されています。撮影した画像はLEV-1にBluetooth通信で送信し、地球に送られます。

変形型月面ロボット(LEV-2)愛称:SORA-Q Credit : TOMY

SORA-Qの開発は、2015年に公募されたJAXA宇宙探査イノベーションハブ第1回研究提案募集に、「小型ロボット技術 制御技術」の研究を応募したことがきっかけとなって始まりました。

宙畑メモ
「宇宙探査イノベーションハブ」は、JAXAの共同研究プログラム制度です。様々な分野の人材・知識を集めた組織を構築し、革新的な技術の開発と、得られた成果を宇宙利用に限らず、地上でも社会実装することを目指しています。
参考:探査ハブについて

その後、2019年にソニーグループ、2020年に同志社大学が加わり、4者による共同研究が進められていました。

説明会資料より Credit : JAXA

また、JAXAによるとSORA-Qと設計が“ほぼ同じ”小型探査ロボットが、日本のベンチャー企業ispaceが開発する着陸船に搭載されて、2022年末頃に月面へと打ち上げられる予定です。

SORA-Qの開発には、タカラトミーの人気商品である変形ロボット「トランスフォーマー」などのノウハウが活かされているといいます。タカラトミーはプレスリリースで、

「おもちゃの開発において重要な要素に『柔軟な発想』『多くの人の手に届きやすい低価格の実現』などが挙げられます。それらは『小型化』『軽量化』『シンプルな設計』につながり、宇宙事業において求められる要素と合致しました。おもちゃ作りの発想と技術が宇宙探査に活かされるということは大変うれしいことです。HAKUTO-R に引き続き、SLIM により短期間で2度の月面探査の機会を得ることができて大変光栄に思います。」

とコメントしています。

SLIMは、JAXAの宇宙科学研究所で開発中の科学衛星「X線分光撮像衛星XRISM」と相乗りして、H-ⅡAロケットで2022年度中に打ち上げられる予定です。2022年度は民間企業によるプロジェクトも含め、多くの日本の探査機が月へと向かう1年となりそうです。

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参考

タカラトミーが JAXA等と共同開発した超小型の変形型月面ロボットがJAXAの小型月着陸実証機「SLIMスリム」に搭載されます。変形型月面ロボットの名前は「SORA- Q」、挙動を公開!