高解像度&高感度夜間光!キヤノン電子の衛星データをサンプルでTellus上に無料公開
2022年7月7日、Tellus上で高解像度の夜間光のサンプル画像を公開しました。 東京周辺の夜の様子を撮影したサンプル画像を詳しく見ていきます。
2022年8月31日以降、Tellus OSでのデータの閲覧方法など使い方が一部変更になっております。新しいTellus OSの基本操作は以下のリンクをご参照ください。
https://www.tellusxdp.com/ja/howtouse/tellus_os/start_tellus_os.html
2022年7月7日、Tellus上で新たな衛星データのサンプルを無料公開しました。
今回公開したデータは、地球の夜の様子を捉えた「夜間光(やかんこう)」の高解像度のデータで、東京近郊を撮影したものです。
一般的に、スマホの写真のような光学画像は太陽光で照らされた街を撮影しているため日中の写真が中心で、夜の街を撮影した写真は非常に限られています。
オープンデータとして世界で公開されている夜間光のデータもありますが、今回公開したデータはそれらと比較して高解像度で非常に詳細に、夜の街の様子を知ることができます。
本記事では、そんな衛星データの概要と、Tellus上で公開しているサンプルデータの概要、それを使った利用例についてご紹介していきます。
(1) キヤノン電子の衛星CE-SAT-ⅡB概要
今回公開したのはキヤノン電子社製の人工衛星CE-SAT-ⅡB(シーイー・サット・ツービー)で撮影した画像になります。
あのキヤノンが人工衛星を作っているの?と驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、キヤノンのグループ会社の1つであるキヤノン電子は2014年頃から本格的に人工衛星の開発を始めており、これまで衛星を3機打ち上げています。ただし、2020年7月に打ち上げられた2機目は、ロケットの打ち上げ失敗により喪失しています。
今回画像を公開する3機目の衛星は質量35.5kgの超小型衛星で、地球観測衛星としては一般的な太陽同期軌道の高度500kmを周回しています。
キヤノン電子はカメラやCMOSセンサーを搭載した反射望遠鏡の他、衛星の基本機能である、地磁気や太陽の向きを測定するセンサや、衛星の姿勢を制御するための磁気トルカやリアクションホイールなども開発しています。リアクションホイールは重い円盤を回転させ続ける装置であるため、宇宙空間できちんと動くものを作るのは難しく、衛星ベンチャーが内製することは稀です。そのため、専門の企業から調達してくることが多いですが、これを自社開発できるというのは、キヤノン電子の強みであるモノづくりの能力が高いとも言えるでしょう。
CE-SAT-ⅡBには、キヤノン製のミラーレス一眼カメラであるEOS M100やデジタルPower Shot G9 X MarkⅡが搭載されています。それらに加えて口径200mmの望遠鏡と新規開発品であるキヤノン製CMOSセンサーを搭載した超高感度カメラを組み合わせた撮像装置を搭載しており、今回公開するのは後者の画像となります。地上分解能(GSD)は、衛星直下で5.1mと言われています。
キヤノン電子は、この超高感度カメラを用いることにより、通常の超小型衛星では暗過ぎてなかなか撮影が難しい、夜間の様子の撮影に成功しています。
上の画像はCE-SAT-IIBで初めて撮影された夜間画像です。ご覧いただくと分かる通り、通常の衛星データと異なり、四角いデータではなく円形のデータとなっています。
これは、一般的な人工衛星では、ラインセンサと呼ばれる直線状のセンサを、衛星の進行方向に対して垂直に立てて、スキャナのように撮影していくのに対し、同社のカメラがエリアセンサと呼ばれるデジカメなどに使われる二次元センサを採用しており、鏡筒が黒く写っているものと思われます。
キヤノン電子 超小型人工衛星 3 号機 CE-SAT-ⅡB 軌道投入 成功
(2) Tellusで公開されるサンプルデータ概要
今回Tellus上で公開されるのは36枚の東京近郊の夜間光になります。上の画像はそれらを合成した画像になっています。非常にきれいで明るい東京の様子が見て取れます。
特に、新宿や渋谷など大きな都市は明るく見えている他、幹線道路や港も明るくみえていることが分かります。場所ごとの明るさを比較することで、混雑具合や発展度合いを見ることができるかもしれません。
これまで夜間光として良く用いられているNASAのSuomi-NPPの画像は無料で公開されていますが、解像度が500~750mとかなり粗いものになっており、比べるとCE-SAT-ⅡBが非常に高解像度であることが分かります。
もう少し詳しく画像を見ていきましょう。
・下北沢駅周辺
地図や光学画像を見る限り、駅を中心として均等に建物が並び発展しているように見えます。
しかし、夜間光を見ると東(画像の右側)の方が明るく、駅の西側(画像の左側)は比較的暗くなっています。お店などが発展しているのは駅の東側で、駅の西側は住宅街になっているのかもしれません。
実際に、世田谷区が出している土地利用現況図を見てみると駅の東側に商業施設が集中しており、推測はおおよそ正しいということができそうです。
・羽田空港
続いて、東京の空の玄関口羽田空港を見てみましょう
直下での解像度5.1mとのことでしたが、明かりで滲んでおり、飛行機1機1機を見分けるのは難しそうです。
しかし、滑走路の青い光や搭乗口付近の明かりは確認できるので、コロナ禍による空港の稼動状況や、屋外の照明が切れているかどうか、などを確認することはできそうです。
・東京臨海エリア(豊洲・辰巳など)
オリンピックで、海に関する競技が開催され、選手村も設置された臨海エリアを見てみましょう。
道路がオレンジの明かりで照らされ、その周辺の開発済みのエリアが明るくなっており、どこが開発され、どこは稼動していないのか確認することができます。公園も暗くなっています。
(3) 高解像度夜間光で考えられる利用例
画像がどのように見えるかイメージをつかんでいただいたところで、CE-SAT-ⅡBの夜間光の画像を使って、どんなことに利用ができそうか、宙畑編集部で考えてみた一例をご紹介します。
・発展途上国の経済状況把握
冒頭でご紹介したとおり、世界的にみると、CE-SAT-ⅡBよりも解像度の粗い夜間光画像はすでに利用されています。
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例えば、JICAの事例では夜間光を使って、支援している都市の経済指標にしたり、電力の普及状況を把握したりしています。
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これらの利用方法が、解像度が高くなることによってさらに正確になるということが考えられます。
・駅周辺の開発計画の立案
先ほどの下北沢の例のように、地図や航空写真で見ただけでは、駅のどのエリアにお店が多く、どのエリアが住宅街になっているのか、理解しにくい場合もあります。
夜間光を使ってこれらが明らかになると、コンビニや飲食店などの出店計画や、街のどこにマンションを立てると良いか等といった都市計画に役立てることができるかもしれません。
・インフラ設備の点検
CE-SAT-ⅡBの解像度があれば、空港や臨海部の画像で見たように、インフラ設備の明かりまで見ることができます。
工場や高速道路、港など照明が落ちてしまうと、作業が危険になってしまうような場所では、人手で頻繁にパトロールが行われていますが、こういった行為の一部を夜間光データで担うこともできるかもしれません(現状は衛星1機と観測頻度が高くないため、もう少し頻度を上げる必要はありそうですが)。
(4) まとめ
本記事では、2022年7月7日にTellus上で公開されたキヤノン電子社の衛星データCE-SAT-ⅡBの夜間画像についてご紹介しました。
画像自体やその使い方のイメージを持っていただくことはできたでしょうか。
興味をもっていただいた方は、本記事より多くの画像がTellus上で公開されていますので、ぜひTellus上で触ってみてください。
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また、今回はサンプルデータということで東京近郊の限られた期間のデータを搭載していますが、他の画像についてご希望の方はぜひTellusへお問い合わせください。