宙畑 Sorabatake

Tellus

日本のハイパースペクトルセンサHISUIのデータ解析例

Tellusで2022年10月12日に公開したHISUIのデータについて、Tellusでの使い方と合わせて詳しくお伝えします!!

前回の記事では、ハイパースペクトルセンサについて詳しくご紹介してきました。

2022年10月12日に、日本のハイパースペクトルデータとして、Tellusからデータ公開されるのが「HISUI(ひすい)」というセンサです。

ここからは、HISUIのデータについて詳しくご紹介していきます。

執筆にあたり、ハイパースペクトルセンサのプロフェッショナル、一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構の立川様、 武田様、谷井様、鹿志村様、毛利様にご協力いただきました!

HISUIセンサ概要

HISUIは2019年12月に打ち上げられ、国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されているハイパースペクトルセンサです。2020年9月より画像の取得を行っています。

可視光から短波長赤外域まで、185個のバンドで全球規模の観測を行っています。解像度は20m×31mです。

HISUIの特徴・強み

前の章でもご紹介した通り、現在世界各国の政府機関・民間企業がハイパースペクトルセンサの開発を行っています。

開発主体であるJapan Space Systemsでは、これまで経済産業省が進める衛星を使った資源探査用のセンサを開発してきました。HISUIの一世代前はASTER(あすたー)というセンサを開発しています。

そのような流れを受けて、HISUIは特に鉱物資源探査に特化した900~2,500nmの波長域で128バンドと多くのバンドを持っていることが特徴です。

また、ハイパースペクトルセンサでは、細かい波長に分けたわずかな光を捉えるため、データの質を表すSNR(Signal Noise Ratio:信号雑音比)が非常に重要になってきますが、HISUIは、鉱物資源に特化した波長域でこのSNRが比較的高いことが強みと言えます。

HISUIデータの入手方法

ここまでご紹介したHISUIのデータが、この度衛星データプラットフォームTellusで無料公開されることになりました!

実際の入手方法をご紹介します。

①特設サイトから申し込む

HISUIのデータを触るためには、Tellusのアカウントを作成した上で、利用申し込みを行う必要があります。以下の特設サイトから、必要事項を入力し、申し込みを行ってください。

HISUI特設サイト(Tellus)

申し込みが受理されると、Tellusからメールにて連絡が来ます。アクセス権が付与されるまでに、平日数日程度時間がかかります。

②ブラウザ上でHISUIのデータを確認する

まずは、手軽に画像を見てみたいという方はTellus Traveler上で確認してみるのがおススメです。

・Tellus Traveler(viewer)
https://www.tellusxdp.com/traveler/viewer/

まずは左側に出てくる虫眼鏡アイコンをクリックします。

①でHISUIデータへのアクセス権が付与されていれば、のデータセット一覧の中に、HISUIデータが見つかるはずです。

HISUIのデータだけにチェックをつけ、「検索」ボタンをクリックします。
必要に応じて、観測した日付や興味エリア(AOI)でデータを絞ってください。

検索結果から利用したいシーンの詳細ボタンを押します。

シーン詳細の中の「レイヤー表示」ボタンを押すと地図上にデータを描画することが出来ます。

ダウンロードしてお手元のPCで閲覧したい方は、左下のデータごとのダウンロードボタンを利用して、ダウンロードを行ってください。

ご自身のQGISで使いたい方は以下も参照してください。

初期設定では、HISUIの数ある観測波長の中でも、赤青緑の一般的な波長が割り当てられています。

③TellusのAPIでHISUIのデータを取得する

HISUIのデータはAPIでも取得することが出来ます。

Tellus TravelerのAPIリファレンスは以下を参照してください。
https://www.tellusxdp.com/docs/travelers/

サンプルコードは以下で紹介しています。

APIの引数として必要なデータセットIDなどは以下で確認いただけます。
https://www.tellusxdp.com/traveler/dataset/68f7270f-414f-4587-aaee-01389678d425/

HISUIデータの解析方法

ハイパースペクトルセンサであるHISUIのデータをみるなら、通常の光学衛星にはあまり搭載されていない波長を見てみましょう。

HISUIには185個の観測波長がありますが、Tellus Traveler上で描画できるのは、以下の波長です。

-青
-緑
-赤
-近赤外
-短波長赤外1
-短波長赤外2
-短波長赤外3

「短波長赤外」と呼ばれる波長で撮影した画像が含まれている点がポイントです(実データはもっとたくさんの波長を持っていますが、ブラウザ上で描画できるのはこの7種類ということです)。

この短波長赤外を使って、衛星データを見てみると、普段私たちが見ている赤青緑の世界とは異なる世界を見ることができます。

一概に○○が見える!というのは難しいのですが、例えば宙畑でこれまで紹介してきた事例だと以下のようなものがあります。

「短波長赤外線(1.6μm)の波長を使った方がいい」とアドバイスをもらいました。短波長赤外線は水でよく吸収するので、海水と軽石の区別がつきやすくなるはずだ、ということでした。
https://sorabatake.jp/25696/

熱源検知に役立つ組み合わせとして、短波長赤外域(SWIR)を利用した組み合わせが良い
https://sorabatake.jp/10366/

水に浮いている「何か」や、熱源を見ると面白いものが見られるかもしれません。

例えば、岡山県倉敷市にある水島コンビナートを見てみます。初期設定では以下のように見えます。

この画像は、一般的な赤青緑で見たときの画像です。

描画する波長を変更するためには、左側のレイヤー欄歯車マークをクリックします。

初期設定は上図のようになっています。

これを以下のように変更します。短波長赤外の波長を、R(赤色で描画)に持ってきて、目立つようにするのがポイントです。

再描画ボタンを押下すると以下のように変わりました。

先ほどの初期画像では真っ黒に見えていたエリアの中に、ひときわ赤くなっている箇所があり、熱源となっていると考えられます。

実際赤くなっている箇所が何なのか、調べるために今度は航空写真を重ねてみます。

左側の雲のマークからインポート機能を使います。

レイヤー種別を「地図タイル」とし、URLの欄に以下のURLを入力し、「表示」ボタンを押下してください。

https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/seamlessphoto/{z}/{x}/{y}.jpg

先ほどのHISUIの画像と、航空写真を重ねることが出来ました。

左側のレイヤー欄の各画像の下にあるスライダーを使って、透過度を調整し、2枚の画像を比べてみてください。

レイヤーを重ねる順番はマウスでクリックしてドラッグすることで入れ替えることが出来ます。

煙突が伸びている工場の熱を検知していたようですね。

このように、Traveler上で観測波長を入れ替えながら、何が見えるのかぜひ探索をしてみてください。

まとめ

本記事では、新しい衛星データとして注目されるハイパースペクトルデータについて、その原理や用途、各国で進められているセンサ、そして、日本で開発されデータがTellusで無料公開されたHISUIについてご紹介しました。

衛星データの中でも、さらに取り扱いが難しいデータではあるものの、使いこなせれば様々な用途が考えられるハイパースペクトルデータを、Tellusでぜひ触ってみてください。

HISUI特設サイト(Tellus)