【2022年8月】衛星データ利活用に関する論文をピックアップ! #MonthlySatDataNews
2022年8月に公開された衛星データの利活用に関する論文の中でも宙畑編集部が気になったものをピックアップしました。
宙畑の新連載「#MonthlySatDataNews」では、前月に公開された衛星データの利活用に関する論文をピックアップして紹介します。
実は、本記事を制作するために、これは!と思った論文やニュースをTwitter上で「#MonthlySatDataNews」をつけて備忘録として宙畑編集部メンバーが投稿していました。宙畑読者のみなさまも是非ご参加いただけますと幸いです。
2022年8月の「#MonthlySatDataNews」を投稿いただいたのは以下の2人でした!
A Review on Multi-GNSS for Earth Observation and Emerging Applications https://t.co/1g99uz4OWq #mdpiremotesensing @RemoteSens_MDPIより
GNSSを用いた測位や軌道、気象学、電離層と宇宙天気、地震モニタリング、土地や構造物のモニタリング等に関するレビュー論文。幅広い#MonthlySatDataNews— たなこう (@octobersky_031) August 16, 2022
最近、こういう地上からの画像と衛星からの画像のマッチングみたいなの多いね。
地上画像のセマンティックセグメンテーションを上からの見え方に直して、撮影した場所の位置推定を実施#MonthlySatDataNewshttps://t.co/qnFNWUtoid
— むた (@MutaAzusa) August 10, 2022
それではさっそく2022年8月の論文を紹介します。
A Multibranch Convolutional Neural Network for Hyperspectral Unmixing
Multi-Branch-CNNを使ってハイパースペクトルデータのアンミキシング。アンミキシングとは波長の成分分解のようなもの(参考)。波長と空間と、波長×空間の3次元でCNNを適用している。
Evaluation of Accuracy Enhancement in European-Wide Crop Type Mapping by Combining Optical and Microwave Time Series
光学とマイクロ波を時系列に組み合わせることによるヨーロッパ全域の作物分類マッピングの精度向上に関する評価。Sentinel-1/2のデータを時系列に組み合わせることで、空間的なカバー率を高めつつ、より良い分類結果を得ることができたという論文。
Multi-control spatial history of groundwater reservoirs in Pakistan using satellite-driven data
衛星データを用いたパキスタンにおける地下水貯留層のマルチコントロール空間履歴の取得に関する研究。重力観測データに対して地理的時間荷重回帰、地理的荷重回帰、普通最小二乗法を用いて、様々な変数が地下水貯留量異常に与える影響を明らかにした。
An improved approach to estimating crop lodging percentage with Sentinel-2 imagery using machine learning
Sentinel-2画像を用いた機械学習による作物倒伏率の推定手法の改良に関する研究。Sentinel-2を用いて機械学習で農作物の倒伏割合を推定する試み。Green、SWIR1、RedEdge1のバンドが重要そうとのこと。
Global 10 m Land Use Land Cover Datasets: A Comparison of Dynamic World, World Cover and Esri Land Cover
世界の 10 m 土地利用土地被覆データセット:Dynamic World、World Cover、およびEsri Land Coverの比較に関する研究。WCは草地、Esriは低木・潅木、DWは雪氷を過大評価する傾向があるとのこと。
An update on global mining land use
鉱物に対する需要の高まりによって、自然生態系にますます影響を与えることが想定されており、鉱物採掘によって引き起こされる悪影響を定量化することが求められている。2019 年の Sentinel-2 画像を使用して、世界中の 34,000 を超える採掘場所を調査した結果を公開。
Improved Ship Detection Algorithm Based on YOLOX for SAR Outline Enhancement Image
SAR画像輪郭強調のためのYOLOXに基づく船舶検出アルゴリズムの改良に関する研究。YOLOXをベースとして、輪郭情報を活用した高周波サブバンドチャネルフュージョンに基づくSAR船舶特徴強調法を提案した。
Cloud removal for optical remote sensing imagery using the SPA-CycleGAN network
SPA-CycleGANネットワークによる光学リモートセンシング画像の雲除去に関する研究。SARデータを入力データとして組み込むことで、薄い雲と厚い雲を除去した光学画像生成を試みる。
BASNet: A Boundary-Aware Siamese Network for Accurate Remote-Sensing Change Detection
BASNet: リモートセンシングによる高精度な変化検知のための境界考慮型シャムネットワークに関する研究。2時期の衛星画像の変化の、特に境界を正確に検出する試み。衛星画像って境界が曖昧なことが多いので有用そう。
Investigation of pre and post environmental impact of the lockdown (COVID-19) on the water quality of the Capibaribe and Tejipió rivers, Recife metropolitan region, Brazil
ブラジル・レシフェ大都市圏のカピバリベ川とテジピオ川の水質に対するロックダウン(COVID-19)の環境影響に関する事前・事後の調査に関する研究。Sentinel2でコロナ前後の河川濁度をインパクト評価。コロナ前後で影響どうなってるのか評価するのはいいのだよな、と思うと衛星データ使った自然環境へのインパクト評価ってたしかにやりやすくなってるのかな。
Impact of Training Set Configurations for Differentiating Plantation Forest Genera with Sentinel-2 Imagery and Machine Learning
Sentinel-2画像と機械学習による植林地の属性の識別における学習セット設定の影響に関する研究。樹種分類地図を作成する上でバランスの取れたラベル付けが大事だよというお話。
A Review on Multi-GNSS for Earth Observation and Emerging Applications
地球観測のためのマルチGNSSと新たなアプリケーションに関するレビューに関する研究。GNSSを用いた測位や軌道、気象学、電離層と宇宙天気、地震モニタリング、土地や構造物のモニタリング等に関するレビュー論文。
Estimation of Air Temperature under Cloudy Conditions Using Satellite-Based Cloud Products
衛星搭載雲プロダクトを用いた曇天時の気温の推定に関する研究。衛星から得られる雲頂温度、雲頂高度、Global Forecast Systemを用いて、雲がある場所の大気温度を予測する試み。
Creating Validation Dataset for Remote Sensing of Water Resources
水資源リモートセンシングのための検証用データセットを作成中に関する研究。複雑な地形は多くの特徴がスペクトル的に類似しているため区別することが難しいので、専門家の知識を活用して手動で判別することで水資源の利用可能性を細密に分類できるようにした。
Historical mapping of rice fields in Japan using phenology and temporally aggregated Landsat images in Google Earth Engine
Google Earth Engineにおけるフェノロジーと時間的に集約されたLandsat画像を用いた日本の水田の歴史的マッピングに関する研究。1980年代以降の日本の水田地図の履歴および水田面積変化に関するデータを探索するためのウェブアプリを公開した。
Monitoring detailed mangrove hurricane damage and early recovery using multisource remote sensing data
マルチソースリモートセンシングデータを用いたマングローブハリケーンの詳細被害と早期復旧のモニタリングに関する研究。メキシコにおけるハリケーンによるマングローブ林への被害の傾向と樹冠回復の初期兆候を、衛星データとUAVデータを利用して定量的に評価した。
Support Vector Machine for volcano hazard monitoring from space at Mount Etna
サポートベクターマシンによるエトナ火山での宇宙からの火山災害モニタリングに関する研究。
GoogleEarthEngineでSVMによって
・溶岩流とテフラ(火山灰等)の堆積物の広がり
・大気中に飛散した火山雲
をマッピングし、量も評価した。
Coastal and landuse changes of Burullus Lake, Egypt: A comparison using Landsat and Sentinel-2 satellite images
エジプト、ブルルス湖の沿岸と土地利用の変化。LandsatとSentinel-2衛星画像による比較に関する研究。Sentinel-2を用いてフロリダ州南西部の沿岸域の水深を推定した結果、ライダーでの観測結果と比較して水深0~13.5mの範囲で誤差8%以下。
Automatic Remote Sensing Identification of Co-Seismic Landslides Using Deep Learning Methods
ディープラーニングによる共振型地すべりのリモートセンシングによる自動同定法に関する研究。4000か所分の地すべりサンプルデータセットを作成し、YOLOv3を使って地すべり検出モデルを開発、中国の方が北海道の地震を対象に研究した。
Remote sensing-based techniques for water management in small-scale farms in arid climate
リモートセンシングを用いた乾燥地における小規模農家の水管理技術に関する研究。実際の必要水量とポンプ容量に基づいて、調査地域の灌漑用ポンプの運転時間をスケジュールするアルゴリズムを開発した。
CAPS: A New Method for the Identification of Different Surface Displacements in Landslide and Subsidence Environments through Correlation Analysis on Persistent Scatterers Time-Series from PSI
CAPS PSIから得られる残留散乱体時系列の相関分析による地すべり・地盤沈下環境における異なる地表変位同定のための新手法に関する研究。PSIを拡張した地滑り等を検出する手法の提案。
The Influence of Data Density and Integration on Forest CanopyCover Mapping Using Sentinel-1 and Sentinel-2 Time Series inMediterranean Oak Forests
Sentinel-1とSentinel-2のデータを統合し、異なるデータ密度(1年データセットと3年データセット)でイラン西部の不均質な地中海食樹林における樹冠被覆をマッピングする可能性を検討した。ランダムフォレスト(RF),サポートベクターマシン(SVM),分類回帰木(CART)の3つの機械学習(ML)モデルをGoogle Earth Engineで使用し,その分類性能を比較検討した結果、SVMが樹冠被覆マッピングにおいて最も高い精度を示すことがわかった。
DAHiTrA: Damage Assessment Using a Novel Hierarchical Transformer Architecture
Transformerを使って、光学画像のbefore/afterから災害時の建物被害を検出する論文。
Discover the Mysteries of the Maya: Selected Contributions from the Machine Learning Challenge & The Discovery Challenge Workshop at ECML PKDD 2021
Sentinel-1と2と航空機LIDAR使って、マヤ文明の遺跡のセグメンテーション(建物とアグアダ(湖)とプラットフォーム)を行うコンペを実施。
Multi-view deep learning for reliable post-disaster damage classification
災害時の建物の被害推定。地上からの画像と、航空写真や衛星データの上から画像を組み合わせてMulti View CNN(MV-CNN)を使って推定する。
CVLNet: Cross-View Semantic Correspondence Learning for Video-based Camera Localization
地上画像のセマンティックセグメンテーションを上からの見え方に直して、撮影した場所の位置推定を実施。
Finding Point with Image: An End-to-End Benchmark for Vision-based UAV Localization
UAV(無人航空機)の画像と衛星画像から対応する点を見つけていき、UAVの位置推定を行うという論文。
Visual Cross-View Metric Localization with Dense Uncertainty Estimates
同じくクロスビューの論文。大まかな位置はGNSSで決めてその中の詳細な位置や地上カメラの向いている方向を絞り込んでいくアプローチ。
A Gis Aided Approach for Geolocalizing an Unmanned Aerial System Using Deep Learning
UAVなどからリアルタイムに撮影される映像と衛星データのマッチングによる位置推定。新しい建物や高層ビルの陰などで見え方が異なる時の逃げ方として、特徴を建物と地形に分けて推定している。
Synthetic Aperture Radar Doppler Tomography Reveals Details of Undiscovered High-Resolution Internal Structure of the Great Pyramid of Giza
Cosmo SkyMedのドップラートモグラフィー(逆解析技術)を使ったピラミッドの内部構造を明らかにする試み
Wildfire Forecasting with Satellite Images and Deep Generative Model
アメリカの気象衛星GOES-16のデータセットを使った、森林火災の展開の予測。
Efficient data-driven gap filling of satellite image time series using deep neural networks with partial convolutions
U-Netみたいなモデルを使って、環境系の三次元のグローバルな衛星データの欠損を埋める手法。精度は統計的な手法と同等、計算速度は3桁良くなる。
Satellite Image Search in AgoraEO
衛星データプラットフォームに搭載された大量のデータの検索機能として、日時や場所ではなく、コンテンツベース(何が写ってるか)で似た画像の検索を可能にする。
Unsupervised Structure-Consistent Image-to-Image Translation
構造とテクスチャに分けて画像生成を行う論文。衛星写真の場合、たとえば街の構成などを構造とし、表面の植物などをテクスチャと捉え、実際には存在しない衛星画像を作成していく。
以上、2022年8月に公開された論文をピックアップして紹介しました。皆様の業務や趣味を考えた時に、ピンとくる衛星データ利活用に関する話題はありましたか?
8月はマルチビュー/クロスビューと呼ばれる複数種類の画像のマッチングを行う論文や、SARと光学を組み合わせた話題が多かったですね。
来月以降も「#MonthlySatDataNews」を続けていきますので、お楽しみに!