【2022年9月】衛星データ利活用に関する論文とニュースをピックアップ! #MonthlySatDataNews
2022年8月に公開された衛星データの利活用に関する論文の中でも宙畑編集部が気になったものをピックアップしました。
宙畑の新連載「#MonthlySatDataNews」では、前月に公開された衛星データの利活用に関する論文やニュースをピックアップして紹介します。
実は、本記事を制作するために、これは!と思った論文やニュースをTwitter上で「#MonthlySatDataNews」をつけて備忘録として宙畑編集部メンバーが投稿していました。宙畑読者のみなさまも是非ご参加いただけますと幸いです。
2022年9月の「#MonthlySatDataNews」を投稿いただいたのは6人でした!
都市レベルで大気汚染を分析できるデータセットがGEEに追加されたとのこと。大気汚染系のデータは分解能が良くなかったけど、これで環境系の研究が増えていく感じかなと思った。
後でいじってみよ〜〜っと。
↓論文じゃないけど使ってみました(初)#MonthlySatDataNews https://t.co/mR4JW811jh
— 開発くん (@jp_consultant) September 16, 2022
外来植物の追跡をPlanetscopeとWorldView-2の光学衛星画像+ディープラーニングで効率化。ミネソタ州でトウダイグサの一種leafy spurgeを検出したところ、検出精度は 96.3%で、ほとんどの偽陽性は真の母集団に近くあまり問題にならないこともわかった。#MonthlySatDataNews https://t.co/XR6hrZVeeb
— Ayano AKIYAMA (@ayano_kova) September 6, 2022
こうすることによって内容を記事にしてくださることを願うしか,,, https://t.co/ZSxjd2mDPm
— みかん? (@Country_revo) September 14, 2022
それではさっそく2022年9月の論文を紹介します。
China Data Cube (CDC) for Big Earth Observation Data: Practices and Lessons Learned
従来のシーンベースのデータ管理と比較して、本提案ではピクセル単位で管理することで異種衛星画像の管理をより便利かつ迅速に行うことができることが示された。
Artificial Intelligence for Remote Sensing Data Analysis
リモートセンシングに関するデータ解析におけるAIアルゴリズムとアプリケーションについて、270本以上の論文を機械学習、計算知能、AIの説明可能性、データマイニング、自然言語処理(NLP)、およびAIのセキュリティの観点から包括的にレビューした。
Spotting Virus from Satellites: Modeling the Circulation of West Nile Virus Through Graph Neural Networks
蚊媒介の西ナイル熱の発生予測をSentinel-2とLandsat-8(RGB、エアロゾル、SWIR、Red Edge)を使ってDNNで分析。近接する地点との温度差や土壌水分量、物理的な距離なども考慮している。季節性の考慮のために時間の情報も加味した。
How can UAV bridge the gap between ground and satellite observations for quantifying the biomass of desert shrub community?
UAV と、 PlanetScope (解像度: 3 m)、Sentinel-2A MSI (解像度: 10 m、20 m)、およびLandsat8 OLI (解像度: 30 m)を組み合わせて砂漠地帯の低木を観測。地上バイオマスの定量測定精度をアップ。
Correcting inferences for volunteer-collected data with geospatial sampling bias
これ自体は、衛星データが正解データとして使われているだけだけど、Citizen scienceのボランティアが集めたデータの地理的な偏りを如何に除去するかという話。土地利用図やOSMを使って、夜間の明るさを推定しようという試み。
MANet: A Network Architecture for Remote Sensing Spatiotemporal Fusion Based on Multiscale and Attention Mechanisms
衛星画像の時空間フュージョン(Spatiotemporal Fusion: STF)について、MANetと呼ばれるマルチスケール・アテンションメカニズムを使用したアーキテクトで実施した論文。会社増えて、衛星の種類増えてくるとこういう技術必須ですよね。
LAMSkyCam: A Low-cost and Miniature Ground-based Sky Camera
これも横道にそれる感じだけど、衛星データの代替になり得る?地上からの上空観測のための安価なカメラとのこと。実際にはこういうデータとの融合になるんですかね~
Digital twin of a city: Review of technology serving city needs
デジタルツインの技術について総括的にレビュー。
High-resolution global maps of tidal flat ecosystems from 1984 to 2019
1984-2019年の全球での干潟の生態系をLandsatから求めてデータセット(v1.1)として公開。今回はv1.2にバージョンアップしたことで、期間は99年からになっているものの、空間的なカバー率が向上した、ということを報告。
Fusion of Satellite Images and Weather Data with Transformer Networks for Downy Mildew Disease Detection
Sentinel-2と気象データを組み合わせたマルチモーダルデータをTransformer使って解析することで、穀物の病害検出を行うという論文。ConvLSTMモデルを使って衛星画像の時間的な補間も実施。精度97%を達成したとのこと。
An integrated cyberGIS and machine learning framework for fine-scale prediction of Urban Heat Island using satellite remote sensing and urban sensor network data
湿度、地理的中心からの距離、PM2.5濃度がモデル性能に寄与する重要な要因。
Deep Learning and Earth Observation to Support the Sustainable Development Goals: Current approaches, open challenges, and future opportunities
飢餓ゼロ、持続可能な都市づくり、終身雇用、気候変動対策、生物多様性保全等の事例を系統的に整理。
Predicting Drought Hazard In Sweden Using Google Earth Engine And Machine Learning Approach
干ばつ被害場所を求める上で、土壌水分が最も重要で、様々な手法を比較した結果、ARIMAとランダムフォレストが最も信頼できることが分かった。
Automatic monitoring of surface water dynamics using Sentinel-1 and Sentinel-2 data with Google Earth Engine
後方散乱強度の低い植生や山影に起因する誤判定を解消した、SAR画像洪水自動マッピング方法を考案。ノイズが綺麗に取れてそう。
Identification of Small Objects in Satellite Image Benchmarks
衛星画像の中の小さな物体(車、船、飛行機など)検出の精度を上げるアプローチ教師データが少ない課題に対して、CycleGAN使って、対象となるドメインに寄せた画像を作ってそれを学習させることをやってる。
Satellite based observations for Surface level Urban Heat Island over Bhubaneswar: A case study
衛星データを用いたヒートアイランド現象の観測。大気汚染との関連性も見ている。
Assessment of the Capability of Satellite Images in Determining the Topsoil Moisture Content in the Dust Hotspot of Southeastern Ahvaz in Iran
Landsatのデータを用いて、イラン南東部にあるダスト(黄砂など?)の発生源となりうる場所の土壌水分量を推定しています。
Changes in air quality over different land covers associated with COVID-19 in Turkey aided by GEE
SpringerLinkトルコの大気と気温のパラメータをさまざまな土地被覆クラスで分析することで、大気と気温の相関関係を調査した。
Discharge Estimation With Improved Methods Using MODIS Data in Greenland: An Application in the Watson River
MODISの日次反射率データのみから氷床融解等によるグリーンランド河川における水域面積を算出し、日流量を算出することに成功。
A high-resolution panchromatic-multispectral satellite image fusion method assisted with building segmentation
パンシャープンの画像を作成する際に、都市地域と耕作地帯によって適切なパラメータが違うため、適切なパラメータを設定することでより良いパンシャープン画像が作れるというもの。
Transformers in Remote Sensing: A Survey
超高解像度光学、ハイパー、SARでTransformerを使った解析をしている事例をまとめた調査論文。
Monitoring of Plastic Islands in River Environment Using Sentinel-1 SAR Data
Sentinel-1のSARデータを用いて、河川にある集積したプラスチックの検出が可能であることを示したもの。検出するためにはVHがいいようです。
Enabling Country-Scale Land Cover Mapping with Meter-Resolution Satellite Imagery
高解像度衛星画像 Gaofen-2 (4 m)の衛星データを使った土地被覆分類。5億ピクセル分のデータセットを作成。物量作戦がすごい。データセット公開されないのかなー
China Data Cube (CDC) for Big Earth Observation Data: Practices and Lessons Learned
従来のシーンベースのデータ管理と比較して、本提案ではピクセル単位で管理することで異種衛星画像の管理をより便利かつ迅速に行うことができることが示された。
Time-series land cover mapping and urban expansion analysis using OpenStreetMap data and remote sensing big data
OSMのデータから教師データを取得し、過去の土地被覆分類に転用することで、86年から21年までの時系列の土地被覆地図を作成した。
Automatic identification of Sand and dust storm sources based on wind vector and Google Earth Engine
ゼロクロスエッジ検出アルゴリズムを用いて、拡張ダストインデックスに基づくダストプルームエッジを抽出、風向情報とMODISから発生源を推定。
Reconstruction of Sentinel-2 Image Time Series Using Google Earth Engine
ペナルティ付き最小二乗回帰法を用いて、雲のないNDVIと表面反射率を用いた時系列データを再構築する方法を提案。
Semantic Clustering of a Sequence of Satellite Images
学習用のラベル付き衛星データを大量生成するために、教師なしで、時系列衛星画像のセマンティックセグメンテーションを行っている。
Deep learning detects invasive plant species across complex landscapes using Worldview-2 and Planetscope satellite imagery
外来植物の追跡をPlanetscopeとWorldView-2の光学衛星画像+ディープラーニングで効率化。ミネソタ州でトウダイグサの一種leafy spurgeを検出したところ、検出精度は 96.3%で、ほとんどの偽陽性は真の母集団に近くあまり問題にならないこともわかった。
Aerial View Goal Localization with Reinforcement Learning
災害時の人命救助などに用いられるUAVのその場での位置推定。時間と視野の限られた中での位置推定を強化学習ベースのAiRLocというモデルで実施。位置推定系は多すぎて全部追うの難しいな…
Remotely-Sensed Derived Built-up Area as an Alternative Indicator in the Study of Thailand’s Regional Development
タイの地域別の開発状況を把握するために衛星データを使用した事例。平均精度は80%以上あるようです。
「NDVI, MNDWI, and NDBI – and GIS techniques were utilized to estimate the regional proportion of built-up area」とあって、様々なデータを利用しているそう。
LandSlide4Sense
Sentinel-2(光学)とPALSAR(SAR)の複数のソースを使った地滑り検出のコンペティションの優勝者のアプローチの紹介。Swin TransformerとSegFormer,U-Netなどを利用。
Agricultural Greenhouse Extraction based on Sentinel-2 images in Fujian Province
Sentinel-2のデータに対してランダムフォレストによって福建省のビニールハウスを異なる季節で検出、検出精度は84%
Lineament analysis as a seismic precursor: The El Mayor Cucapah earthquake of April 4, 2010 (MW7.2), Baja California, Mexico
Landsat 5を用いた地震の前兆を把握する分析。GRACEを用いた土壌水分量の分析でも地震の前兆を把握できるのではという論文もあったり、衛星データの分析を行うことでどこまで地震の前兆が捉えられるようになっているのか、詳しい方にお話聞きたい。
On the Use of Sentinel-2 NDVI Time Series and Google Earth Engine to Detect Land-Use/Land-Cover Changes in Fire-Affected Areas
火災後の変化を衛星データを用いてモニタリング。
森林だった場所が耕作地になったのか、小道の建設をしているのかといった変化の多様性も評価できているそう。火災に限らず、大規模な自然災害後の復興の状態把握にも利用できそうです。
Remote Sensing Data Fusion With Generative Adversarial Networks: State-of-the-art methods and future research directions
事例を交えたGANを使ったリモセンデータ解析のレビュー論文。データフュージョン系の話題が多い。
Climate Change Signature on Millions of Lakes
世界中の湖を対象に解析することで、地域固有から地球規模の気候変動の特徴を理解しようとする試み。たしかに湖って見る対象として良さそうだな。
NASA, Google To Help Track Air Pollution At Local Level With AI
都市レベルで大気汚染を分析できるデータセットがGEEに追加されたとのこと。大気汚染系のデータは分解能が良くなかったけど、これで環境系の研究が増えていく感じかなと思った。
Integration of Sentinel 1 and Sentinel 2 Data for Crop Classification Improvement: Barley and Wheat as an Example
Sentinel-1とSentinel-2のデータを組み合わせて、穀物の分類(大麦と小麦)を行っている。Random Forest (RF) and Classification and Regression Trees (CART) を使用。精度は93%とのこと。単一のデータを利用するよりも、組み合わせたほうが精度が上がる事例、どんどん増えてますね。
ELSET: Design of an Ensemble Deep Learning Model for improving satellite image Classification Efficiency via Temporal Analysis
ディープラーニングを使った時系列画像の土地被覆分類。提案モデルは作物の種類認識精度98.9%、土地の種類識別精度95.4%、水域・都市被覆域の分類精度96.5%を実現
Estimates of Power Shortages and Affected Populations during the Initial Period of the Ukrainian-Russian Conflict
DMSP-OLSとNPP-VIIRSの夜間光画像を分析することでウクライナにおける紛争による電力不足を解析し,被害状況を評価。
Number of chamber measurement locations for accurate quantification of landscape scale greenhouse gas fluxes: Importance of land use, seasonality, and greenhouse gas type
土地利用条件や季節、土壌、傾斜が温室効果ガスフラックスに及ぼす影響を評価。
Cloud and Snow Identification Based on DeepLab V3+ and CRF Combined Model for GF-1 WFV Images
中国高分解衛星のGaofen-1の画像に対してDeepLab v3+とCRFモデルを組み合わせることで、雲と雪を識別。
Classifying Methane Emission Sources From Publicly Available Satellite Imagery
ラベル付けされたメタン排出施設の光学衛星画像の位置データセットを作成し、ResNet-50によってメタン排出施設を識別・分類した。
Coastal areas bathymetry based on new hybrid methods and fusion methods of Sentinel-2 and Landsat 8 satellite images
Sentinel-2とLandsat8を組み合わせて、河口部や沿岸部の水深の推定。これまで水深って衛星から分かりますか?と質問されることも多く、なかなか回答に苦労するところなのですが、今後どこまで推進が推定できるようになるのかとても興味あります。
Monitoring of growth of wheat’s height using time series analysis of synthetic aperture radar(SAR) images and the corresponding parameters
VVは初期段階の小麦の成長を、VHは中間段階の成長を反映するものの、収穫直前はCバンドでは難しそう、Lバンド使ったらいけるんじゃ?とのこと。
Analysis of Building Height Impact on Land Surface Temperature by Digital Building Height Model Obtained from AW3D30 and SRTM
デジタル建物高さモデルを用いて、東京ジャカルタ2都市における建物高さとLandsat LST(地表面温度)の関係を解析した結果、負の相関があった。
「高層ビルがある地域は、低層ビルがある地域よりも地表面温度が朝は低い傾向がある。この現象は、温暖な季節に強くなることが明らかになった。低層ビルと高層ビルが混在した地域の地表面温度の差は、高層ビルと高層ビル混在地域の差よりも大きい。」
An Overview on the Generation and Detection of Synthetic and Manipulated Satellite Images
衛星画像生成系のレビュー論文。ゼロから画像生成するもの、他の種類の画像から変換するものについてまとめている。偽画像の検出技術も説明。これはちゃんと腰据えて読みたいやつ。
A rapid geospatial analysis of the flood impacts on crops in KwaZulu-Natal and Eastern Cape provinces of South Africa in 2022
雇用の大部分を農業に依存する南アフリカにとって、洪水による作物の被害状況把握は国レベルで重要なこと。そこで、Sentinel-1とSentinel-2を用いて浸水作物面積などを把握するという内容。その国にとって重要な指標は何かを考えることは重要ですね。
Detecting Crop Burning in India using Satellite Data
PlanetとSentinel-2を使った焼畑の把握。Planetでは高い頻度でのNDVIの変化を、Sentinel-2はSWIRを使ったNormalizedBurnIndex (NBI)の変化を、ランダムフォレスト使って判定している。SWIRって燃えてる最中以外でも有効なんですね。
Meteorological Satellite Images Prediction Based on Deep Multi-scales Extrapolation Fusion
気象衛星の予測画像生成。気象衛星の画像はサイズ大きいのでまずダウンサンプリングして、時空間系列予測して、いろんな解像度の予測画像を生成。その後GAN使って元のサイズの予測画像を生成する。太陽光発電量予測の精緻化とかできそうですね。
Deep Learning-Based Object Tracking in Satellite Videos: A Comprehensive Survey With a New Dataset
衛星で撮影した動画から、ディープラーニングにより小物体を検出する試み。そのためにデータセットと評価手法も合わせて提案。
以上、2022年9月に公開された論文をピックアップして紹介しました。先月から人数も増え、取り上げた論文の本数も多くなりました。
皆様の業務や趣味を考えた時に、ピンとくる衛星データ利活用に関する話題はありましたか?
来月以降も「#MonthlySatDataNews」を続けていきますので、お楽しみに!