経営難に苦しむ小型ロケットベンチャーAstra、好調のエンジン販売事業の行方は【宇宙ビジネスニュース】
【2022年10月21日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。
10月13日、小型ロケットを開発するアメリカのベンチャーAstra Space (Nasdaq: ASTR 以下Astra) が、アストロスケールが開発中のデブリ除去衛星「ELSA-M」向けに電気推進エンジンを提供すると発表しました。
Astraは打ち上げ輸送サービスに加えて、宇宙関連製品の製造販売にも取り組んでいます。2021年6月に電気推進エンジンの開発に取り組んでいるApollo Fusionを5000万ドル(約55億円)で買収して以来、電気推進エンジンの販売事業に注力しています。
AstraがApollo Fusionを買収。加速するロケット企業の垂直統合戦略【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/6/7〜6/13】
また、10月11日にはMaxar Technologiesからも電気推進エンジンを受注したことを発表していました。
2022年8月に発表された第二四半期の決算資料では、(Apollo Fusionを買収前に販売し、未納品であった製品を含め)2021年7月から2022年6月にかけて103件の受注を獲得したことが発表されました。電気推進エンジンの販売事業は、Astraの一つの事業の柱となりつつある様子がうかがえます。
一方、AstraはNASDAQ市場の取引要件に違反したとして、10月7日にNASDAQから上場廃止警告を受けたことを複数のメディアが伝えています。
宙畑メモ
NASDAQ市場では、30営業日連続して株価が1ドルを下回ると上場廃止の警告が発せられます。その後90日以内に株価を回復させられなければ、原則的に上場は廃止となります。
参考:日米における株式併合の現状とその効果
Astraは特別買収目的会社Holicity Inc.との買収および経営統合契約を締結し、2021年7月にNASDAQ市場に上場しました。
ところが、上場後に実施した5回の打ち上げのうち3回は衛星の軌道投入に失敗しています。2022年6月に実施したNASAのハリケーン追跡衛星「TROPICS」の打ち上げも失敗に終わったものの、NASAはAstraが開発中の新型ロケットでの再打ち上げを検討する可能性があることを9月28日に発表しました。
Astraの動向には今後も注目が集まりそうです。
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参考
ASTRA ANNOUNCES SPACECRAFT ENGINE CONTRACT WITH ASTROSCALE
ASTRA ANNOUNCES SPACECRAFT ENGINE CONTRACT WITH MAXAR TECHNOLOGIES
NASA MAINTAINS LAUNCH CONTRACT WITH ASTRA
Rocket builder Astra Space gets delisting warning from Nasdaq