世界最高性能衛星、壊れる。損害額は膨大【週刊宇宙ビジネスニュース 1/7~1/13】
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商用では世界最高性能を誇る地球観測衛星World View-4が故障し、衛星データを生成できなくなったことが、2019年1月7日衛星所有者であるMaxar Technologiesから発表されました。
World View-4は何に使われている衛星か?日本への影響は?
World View-4はMaxar Technologies社が所有しその画像を販売する人工衛星です。商用で取り扱われる衛星画像の中では最も解像度の高い衛星です。
宙畑でも既報(情報収集衛星を打ち上げるのは何のため? ~用途、予算、今後~)の通り、日本では防衛省が予算の中で明記している衛星でもあり、安全保障目的で使用されていました。
WorldView-4に何が起こったのか?いつどこが壊れたのか?
公式発表によると壊れたのは、衛星の中に搭載したCMG(コントロールモーメンタムジャイロ)という機器で機器自体の製造はHoneywell社、衛星の製造はLockheed Martin社によって行われたとのことです。
CMGは衛星の姿勢を制御する装置です。姿勢を制御する装置は通常、全ての衛星に搭載されていますが、CMGはその中でも強力で素早く衛星の向きを変更できる装置です。
ただ、その分可動部が多く故障のリスクが高いことでも知られています。実際、宇宙ステーションに搭載されているCMGは何度か故障し、その度に修理をしています。
実際には、そのリスクと能力のトレードオフで採用が決められており、World Viewシリーズは初号機からCMGが採用されています。他にもフランスのPleiadesという衛星やイタリアのCOSMO-Skymedの次世代機にはCMGが搭載されています。
CMGは壊れやすいので、予備1台を含めて4台で搭載されることが一般的です。今回製造を担当したというHoneywell社のパンフレットでも4台1セットで紹介されています。
現時点で詳細は公表されていないので真相は不明ですが、CMGが原因で衛星の制御ができないまでの故障ということは1台だけの故障ということは考えづらく、以前から1台すでに故障しており2台目の故障だったのではないかと推察されます。
Digital Globe社の画像検索サイトで宙畑編集部が調査した結果、2018年12月24日まではWorld View-4が撮影した画像があることが確認できました。したがって、年末にはすでに問題は発生していたのではないかとも想像できます。
World View-4故障が与える影響
Maxar Technologies社は公式発表の中で、World View-4の保険で約200億円は保証されると説明しています。2018年はWorld View-4で92億円の売り上げがあり、価値としては170億円相当と考えられています。
この発表を受け1月7日以降、Maxar Technologies社の株は通常の半分程度まで暴落しており大きな痛手となっています。
また、Digital Globe社は今までWorld View1~4とGeoEye-1の5機での観測体制でしたが1機失ったことで、20%撮影能力が落ちることになります。さらに、31cmの解像度の画像という意味ではWorld View-3と4の2機のみであったため、撮像機会は半減しました。
Digital Globe社としては、代替する衛星を製造しようとすると1年以上かかり、その穴を埋めるのは簡単ではありません。World Viewシリーズの後継機として以前からWorld View-Scoutという小型衛星群を計画しており、World View-4の代替機を新たに製造するよりはScout計画を加速させるのではと考えられます。
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