【2022年11月】衛星データ利活用に関する論文とニュースをピックアップ!#MonthlySatDataNews
2022年11月に公開された衛星データの利活用に関する論文の中でも宙畑編集部が気になったものをピックアップしました。
宙畑の新連載「#MonthlySatDataNews」では、前月に公開された衛星データの利活用に関する論文やニュースをピックアップして紹介します。
実は、本記事を制作するために、これは!と思った論文やニュースをTwitter上で「#MonthlySatDataNews」をつけて備忘録として宙畑編集部メンバーが投稿していました。宙畑読者のみなさまも是非ご参加いただけますと幸いです。
2022年11月の「#MonthlySatDataNews」を投稿いただいたのは6人でした!
Natureから、衛星データ×機械学習でウガンダのWealth Indexを算出する論文が出てた。解像度は、1kmっぽい。
使用したデータは、アフリカ25か国のDHSデータ(経年)とLandastデータ。
うちの業界では使える場面かなり多そう。#MonthlySatDataNewshttps://t.co/vZ3OAAcz8E
— 開発くん (@jp_consultant) November 19, 2022
気象衛星のデータと機械学習について、気象学者向けに機械学習を解説したもの。基本的な話だけど、衛星画像から雷雨を検知するサンプルコードが公開されているなど、丁寧で学習に良さそう。https://t.co/gnuEM106Hm#MonthlySatDataNews
— むた (@MutaAzusa) November 3, 2022
衛星データ(MODIS)とWeiboデータを用いた春の花粉アレルギー発生日予測。
春の花粉のアレルゲンとなる常緑樹林や落葉樹林の植生指数(NDVIやEVIなど)から花粉アレルギー発生日と相関が高い指数を求め、その時系列データを用いて予測モデルを作成。https://t.co/A1HAXLktsS#MonthlySatDataNews
— ぴっかりん 12/3加古川 (@ra0kley) November 21, 2022
温暖化の影響で、20世紀末は地球は緑化していましたが、2000年頃から逆に緑が減って茶化(Browning)しているようです。AVHRRやLandsatなど複数の衛星データからから葉面積指数を計算して明らかになりました。気温の上昇だけでなく、干ばつによる水ストレスも影響している模様#MonthlySatDataNews https://t.co/YGitbl6ZDo
— RESTECリモセン研修ラボ (@RESTEC_Training) November 28, 2022
Research of Deformation and Soil Moisture in Loess Landslide Simultaneous Retrieved with Ground-Based GNSS https://t.co/N4D5dECPWj #mdpiremotesensing @RemoteSens_MDPIより #MonthlySatDataNews
”GNSSの反射波によって土壌水分量を観測し,地滑り災害の監視を試みたとのこと”
すごいな— たなこう (@octobersky_031) November 11, 2022
リモセン画像のための知識転移学習についての提案。ImageNetなどの大量の自然画像で学習 → リモセン画像を用いたMasked Auto Encoder → 下流タスク という戦略をとることでドメインギャップの緩和。12の異なるタスクで実験し、従来法を上回る結果。#MonthlySatDataNews https://t.co/fEBv9zxFOu
— まぬある (@lTlanual) November 11, 2022
それではさっそく2022年11月の論文を紹介します。
On-the-fly Object Detection using StyleGAN with CLIP Guidance
StyleGANとマルチモーダル学習を使って、人によるアノテーションや教師を必要としない物体検出。たしかに衛星データの大半は「何もない」を確認する作業かも。
Evaluation of Wildfire Occurrences in Pakistan with Global Gridded Soil Properties Derived from Remotely Sensed Data
機械学習ベースの土壌特性とパキスタンでの山火事発生の相関関係を調べようとした論文。
山火事が観測された回数の時間変動は土壌特性の変化と負の相関があること、パキスタン北部では土壌特性と山火事の回数に正の相関が見られるが南部では相関が弱いこと、標高のみのモデルに比べると、土壌特性を利用したほうが山火事回数の測定が優れていることが明らかになった。
A Machine Learning Tutorial for Operational Meteorology, Part II: Neural Networks and Deep Learning
気象衛星のデータと機械学習について、気象学者向けに機械学習を解説したもの。基本的な話だけど、衛星画像から雷雨を検知するサンプルコードが公開されているなど、丁寧で学習に良さそう。
Measuring Air Quality via Multimodal AI and Satellite Imagery
Sentinel-5PとSentinel-2、その他地上の地理的特徴データを使ったマルチモーダルな大気のクオリティ(NO2、O3、PM2.5)予測。このあたりのデータソースだと、Sentinel-5Pの一人勝ち感ある。
Change detection of wetland restoration in China’s Sanjiang National Nature Reserve using STANet method based on GF-1 and GF-6 images - ScienceDirect
中国のGaoFenシリーズ(GF-1,6)のデータの変化検出によって、耕地から湿地への変化を検出できた。
Insight into cloud processes from unsupervised classification with a rotationally invariant autoencoder
除去するためのピクセルベースでの雲検出ではなく、雲の研究のための雲検出。MODISの画像で、空間的な構造やテクスチャーまで加味した雲分類を行っている。
Global Soil Salinity Prediction by Open Soil Vis-NIR Spectral Library
土壌の電気伝導度とVIS-NIRスペクトルの両方を含む61,486サンプルの土壌スペクトルライブラリーを用いて比較。土壌の塩類化は、食糧安全保障と持続可能な開発を脅かす主要な劣化プロセスの一つとのこと。
Comparison of common classification strategies for large-scale vegetation mapping over the Google Earth Engine platform
Google Earth Engineプラットフォーム内でランダムフォレストとSentinelデータに基づく分類フレームワークを開発。
光学およびSARデータのデータフュージョンによるピクセルベースの時系列解析と、均質なラベル、複数季節での評価が、植生分類において他の手法と比較して、良い精度を示した。
BuildMapper: A Fully Learnable Framework for Vectorized Building Contour Extraction
リモセン画像から建物の輪郭を抽出する論文。手法としては、建物の中心点を求めた後に、中心点算出時に抽出した特徴マップと中心点から各頂点までの関係を用いて輪郭に沿った点を推測、最後に頂点数になるように間引くといった感じです。
Research of Deformation and Soil Moisture in Loess Landslide Simultaneous Retrieved with Ground-Based GNSS
GNSSの反射波によって土壌水分量を観測し,地滑り災害の監視を試みたとのこと。
Consecutive Pre-Training: A Knowledge Transfer Learning Strategy with Relevant Unlabeled Data for Remote Sensing Domain
リモセン画像のための知識転移学習についての提案。ImageNetなどの大量の自然画像で学習 → リモセン画像を用いたMasked Auto Encoder → 下流タスク という戦略をとることでドメインギャップの緩和。12の異なるタスクで実験し、従来法を上回る結果となった。
Interannual changes of coastal aquaculture ponds in China at 10-m spatial resolution during 2016–2021
Sentinel-2画像を用いて、単純非反復クラスタリング(SNIC)と階層型決定木(HDT)を組み合わせて中国全土における沿岸の養殖池データを分類精度90%以上で生成。
Google Earth Engineプラットフォームで、Sentinel-2画像の85,501シーンを使用。中国において、2016年から2021年の間に13.21%の大幅な減少をしたことが明らかになった。
Real-Time UAV Patrol Technology in Orchard Based on the Swin-T YOLOX Lightweight Model
UAVを用いた果樹園のリアルタイムパトロールのため病害植物や異常箇所を検出する物体検出モデルの開発。Swin Transformer + YOLOXという構成で高精度を、Pruning + TensorRTで軽量化を行い、Jetson上でリアルタイム検出を実現。
Using machine learning to assess the livelihood impact of electricity access
衛星データ×機械学習でウガンダのWealth Indexを算出する論文がNatureで発表された。使用したデータは、アフリカ25か国の人口保健調査データ(経年)とLandastデータ。
A Prediction Model for the Outbreak Date of Spring Pollen Allergy in Beijing Based on Satellite-Derived Phenological Characteristics of Vegetation Greenness
衛星データ(MODIS)とWeibo(中国のSNS)データを用いた春の花粉アレルギー発生日予測。春の花粉のアレルゲンとなる常緑樹林や落葉樹林の植生指数(NDVIやEVIなど)からWeiboで観測した花粉アレルギー発生日と相関が高い指数を求め、その時系列データを用いて予測モデルを作成する。
Large-Scale Rice Mapping Based on Google Earth Engine and Multi-Source Remote Sensing Images | SpringerLink
SentinelやLandsatの情報を組み合わせることで雲等のデータ欠損を処理した上で、NDVI時系列解析により早生米、中生米、晩生米を分類したもの。 大規模に稲作の流通を正確に把握することで、食糧補助金の正確な把握と食糧安全保障などに活かす。
Multi-source satellite imagery and point of interest data for poverty mapping in East Java, Indonesia: Machine learning and deep learning approaches
衛星データから空間解像度1.5kmのグリッドレベルでインドネシアにおける貧困を予測。推定するために、経済活動を把握するための夜間光強度の算出、農村地域を把握するために植生情報の利用、二酸化硫黄汚染に基づいて経済活動を検出するなど、複数の衛星データを利用している。
A VGGNet-Based Method for Refined Bathymetry from Satellite Altimetry to Reduce Errors
海底地形のモデル化のため、水深計測の高精度化。大規模かつリアルタイムだが精度がいまいちな衛星高度計と高精度だが範囲が狭いマルチビームソナーをVGGに入力し、衛星高度計のデータを補正。広範囲かつ高精度な水深計測データが得られるようになった。
Inhibitive Effects of Recent Exceeding Air Temperature Optima of Vegetation Productivity and Increasing Water Limitation on Photosynthesis Reversed Global Greening
20世紀末は緑化していた地球は、2000年頃から逆に緑が減って茶化(Browning)していることがLandsatやAVHRRなど複数の衛星データから葉面積指数を計算して明らかになった。背景には、気温の上昇だけでなく、干ばつによる水ストレスも影響している模様。
Dynamic monitoring and analysis of factors influencing ecological environment quality in northern Anhui, China, based on the Google Earth Engine | Scientific Reports
MODISのデータを用いて、緑、湿度、熱、および乾燥などをモニタリングするリモートセンシング生態指標を構築。生態環境の質の時空間変化を分析することで、土地利用計画と環境保護を考えるうえで、科学的根拠が提供可能になる。
A Fast and Robust Heterologous Image Matching Method for Visual Geo-Localization of Low-Altitude UAVs
UAV(無人航空機)において、自己位置を特定できない時に、UAV撮影画像と衛星画像から自己位置を推定する論文。衛星画像とUAV撮影画像の見え方(視点、スケールなど)の違いによる精度低下への対策やUAVでオンボード処理できるような処理が提案されている。従来のマッチング方法よりも精度が良くなっているとのこと。
A 3D Space-Time Non-Local Mean Filter (NLMF) for Land Changes Retrieval with Synthetic Aperture Radar Images
時間方向を考慮したSARのスペックルノイズ除去手法。通常は空間的なフィルタのみを使用するところを、複数画像を用いて時間方向を考慮したNon-Local Meansをかけている。
The Study on the Comparative Responses of Aquatic Vegetation to the Interannual Water Level Variation in Different Hydrologically Connected Sub-lakes Based on GEE Technology
洪水などの影響による水位変動が水生植物に与える影響が、部分的に制御された連結湖と手を加えずに自由につながっている連結湖それぞれで異なるのかを評価したもの。論文の内容によれば、自由につながった連結湖の方が、水生植物に与える影響が大きくなることが分かった。
Development and Utilization of a Mirror Array Target for the Calibration and Harmonization of Micro-Satellite Imagery
地上の反射鏡を用いて、GRUSとPlanetScopeの画像の性能比較と、複数衛星データを利用するための調和係数(harmonization coefficients)を導出。これから、色んなベンチャーが色んな光学データを提供し始めるだろうから、これは大事かも。
以上、2022年11月に公開された論文をピックアップして紹介しました。
皆様の業務や趣味を考えた時に、ピンとくる衛星データ利活用に関する話題はありましたか?
来月以降も「#MonthlySatDataNews」を続けていきますので、お楽しみに!