宙畑 Sorabatake

特集

『ファースト・マン』劇場公開前日!アポロ11号船長の息子であるマーク・アームストロングが語る「父と家族」とは?

アカデミー賞でも4部門にノミネートされ、公開前から早くも話題となっている映画『ファースト・マン』の主人公ニール・アームストロングの実の息子であり、現役起業家でもあるマーク・アームストロングさんへの独占インタビューに成功! 他では聞けない息子目線の「宇宙への想い」とは?

映画『ファースト・マン』公式サイトより
Credit : https://firstman.jp/

アメリカのNASAによって行われたマーキュリー計画、ジェミニ計画に続く3度目の有人宇宙飛行計画である「アポロ計画」。この計画によって1969年7月16日、アポロ11号が人類史上初めて月面へと降り立ちました。

そこから約半世紀が過ぎた昨今、今度は民間が主導で月を目指す時代となりました。2019-2020年には、欧米はもちろんのこと、日本・中国・インド・イスラエルなど、多くの月面探査機が打ち上げられます。

そして、宇宙探査時代の転換期とも言えるいま、人類初の月面着陸から50周年が経った記念すべき年に「ファースト・マン」という映画が公開されます。主人公はアポロ11号の船長を務めたニール・アームストロング(役:ライアン・ゴズリング)。

本映画では、当時の宇宙開発における技術の実情や、主人公ニールの月へ至るまでの葛藤、それを支えた家族の内面がリアルに描かれており、第91回アカデミー賞にノミネートされるなど公開前からはやくも話題の映画です。

今回「宙畑」では、映画のPRを兼ねて来日された、主人公であるニール・アームストロングの実の息子であるマーク・アームストロングさんへの独占インタビューに成功しました。

筆者(写真左)と快く取材を引き受けてくれたマーク・アームストロング氏(写真右) Credit : sorabatake

人類が初めて月面に降り立ったその時、地球にいたクルーの家族たちは何を感じどう思ったのか。また父親が「人類で初めて月面に到達した」という他の人が経験をしたことのない体験をしたマークさんは、今後宇宙へとどのように関わっていこうとしているのか。本記事ではマークさんご本人の生の声をお届けします。

(1)本作の主人公、父ニールについて

ーー月面着陸計画により父ニールがアポロ11号に搭乗する日。マークさんはどのような気持ちで父を送り出しましたか?

1969年。当時の僕は5歳だったけれど、父が旅立つということに関しては特別な心配をしていなかったんだ。劇中にもあった父がダイニングルームで、月面着陸計画のためアポロ11号に搭乗することになったことを家族に話すシーンは、実際の会話を忠実に再現しているけれど、実際の僕は「野球の試合にこれないの?」とか「いつ帰ってくるの?」という質問はしなかった。

なぜなら、父自身が必ず帰ってくると自信を持っていたんだ。けれど、母は内心とても心配し、怖がっていた。僕らは大人になってから気付いたことだけれど、当時の母は子どもである僕たちに、それが伝わらないよう必死に努めていたんだ。

父がミッション中はオープンハウスにするのが通例だった。家のドアはその間開放されていて、その時は親戚とか近所の人が家に出入りする事が多かったんだ。テレビはいつもONのままで、スコークボックスも持っていたよ。それで、いつもニュース報道を聞いて、何が起こっていたかを知ることができたんだ。

それは家族や近所の人にとっては本当にありがたいことだった。特に家族は、ミッションに参加している父に何が起こっているのか、何がどうなっているのかを知りたかったからね。

今だからわかったことだけれど、オープンハウスで訪ねてきてくれた人たちはみんな、父を心配する母のことを気遣って来てくれていたんだよ。家族だけじゃなくて、近所の皆からのたくさんのサポートで助けられていたんだ。

ーー月面到着前と後でニールに何か変化はありましたか?

私が父親に質問をした回数はかなり少なかったよ。「月の周りを歩くのがどんな感じだったかを教えて」という質問は、レポーターの方や、周囲の人が何度も繰り返し同じ質問をしていたことを知っていたからね。同じ質問をする必要は全くなかったんだ。

まず父が帰ってきたときは、一番最初に「元気?」と聞いたような気がする。反対に、私は父が私にしてきた質問のことだけは良く覚えているんだ。

それは「お母さんの言うことをよく聞いていたか?」という質問。父は帰還後も21日間は隔離施設にいたから、「母の言うことをきちんと聞いて、手伝っているか?」ということを心配して聞いてきたんだろうね。

(2)映画本編について

ーー完成された映画をご覧になってどう思われましたか?

まずは、ライアン(父役:ライアン・ゴズリング)とクレア(妻役:クレア・フォイ)の二人が私の両親としての行動・演技は素晴らしかった! デイミアン(監督)の映画の作り方と、脚本を手掛けたジョシュ(脚本:ジョシュ・シンガー)には本当に感謝してしているよ。

しかし、本当の両親の側面を知ることができる場面が劇中にはまだ足りないので映画がもっと長かったら良いと思ったね(笑)。けど本当に、私はよくできた映画だと感じている。映画を製作する際に、監督のデイミアンが事実と照らし合わせて「事実に沿った正確さ」を気にかけてくれたことに、本当にとても感謝しているよ。

ーーエキストラとして管制室に立った際どのように感じましたか?

かなり本物に近いと感じたよ。ミッションコントロールルームには2日半いたんだ。ひとつのシーンをカメラアングルを変えて15〜16回撮り直したり、少しニュアンスを変えようとしたとき、監督であるデイミアンがどう考えているのか、そして彼が何をどのように考えているのかというのを感じることができて、それが本当に面白かったかな。

ーー映画を見る人に感じて欲しいこと、知って欲しいことやメッセージはありますか?

まず、第一に「私はこの映画がとても好きだ」ということを知ってもらいたい。次に「この映画はとても難しいテーマだった」ということを感じて欲しい。

最近は技術の発達によって、宇宙航空や月面探査がとても身近なものになってきていると思う。けれど、現代の技術を持ってしても、月面着陸は難しい技術なのだ、ということを知ってもらうことにも大きな価値があるのではないか、と僕は思っている。

やりたいことをやり抜くためには、たくさんの犠牲を払うことにもなるだろう。 このことを、いま生きる私たちが目の当たりにすることで、「偉大な成果は簡単に起こるものではない」ということを知ることにつながると思う。

なので、成功の裏には多くの犠牲があった、多くの困難があった、ということもしっかりと意識して見てもらいたいな。

(3)宇宙ビジネスでやってみたいことは?

僕はまだ「航空宇宙」に興味を持っているんだ! 僕たちは宇宙ステーションを通して、無重力になる方法、それらすべての種類のもの、そして生物学的バイオメトリックな種類のその影響についても学んだ。けれど我々は、大気がゼロか大気以外のどちらかで生息地を建設する方法を学ぶ必要があると思う。

水を採掘する方法を学ぶ必要があると思うよ! 利用可能なときに熱を捉えることができるように、より優れたソーラーテクノロジーを作成する方法を学ぶ必要があるんじゃないかな。こんな風に学ぶべきことはたくさんあるね。

そして、上記のすべてを月だけではなく火星などでもする必要がある。月はとても近いので僕たちが学ぶには最適な場所ですけどね。何度か間違いをしながらも、それらの間違いから学んぶことによって、月や火星で人類が生活する能力を高められるんじゃないかな。

父は地球について、「地球とは宇宙船だ」と話した。地球は自身のエネルギー源や、再生可能な食物を持ち、宇宙線からの放射線から私たちを守る保護的な役割を持っていると。

地球は本当に素晴らしい宇宙船だと僕も思う。他の惑星を見るとき、これがどれほど特別であるかをより認識するんだ。だから、僕達はそれをこれからも大事にしていかないとね!

(4)まとめ

最後に「月に行ってみたいと思いますか?」という質問に対して、「もちろんだとも」と即答したマークさん。何百万もの人々が宇宙で暮らし、働くことを夢見ているようです。

ファミコン並みの性能の機械で宇宙を目指した50年前と比べて、技術レベルが飛躍的に上がった現代、各国が月面にロボットや人を送り込もうと協力しあっています。国家主導での宇宙開発しか考えられなかった以前とは打って変わって、今は民間主導での月面探査を試みている企業・ベンチャーも多く出てきています。

2018年には、ZOZOの前澤氏が月周回旅行をする、という計画を発表したことが国内でも大きな話題を呼んだことは記憶に新しいかと思います。

今後、私たちも月に行くチャンスがあるかもしれません。民間主導となった今、国から特別に選ばれた人たちだけでなく、宇宙に関わりのないような一般の方々も、ニールのように、月面に降り立つ日が来るかもしれません。

人類史上、最も危険と言われたアポロ11号の船長であったニール・アームストロングの目線で描かれる映画「ファースト・マン」。

宇宙へ飛び立つ際の緊張感や、降りかかる様々なアクシデント、そして何よりもニールを支えてくれる家族の愛情を、まるでニール本人になったかのように感じることのできる同作品。ぜひ、劇場で体感してみてください。

【宙畑参考記事】