欧州宇宙機関、衛星測位システムの高精度化に向けた「FutureNAV」で民間企業と約383億円相当の契約締結【宇宙ビジネスニュース】
【2024年3月25日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。
3月19日、欧州宇宙機関(ESA)は、衛星測位システムの研究開発を行う「FutureNAV」プログラムにおいて、2つのプロジェクトで総額2億3300万ユーロ(約383億円)の契約を締結し、受託企業が衛星の開発に着手したと発表しました。
FutureNAVプログラムでは、まず地球低軌道の測位衛星コンステレーション「LEO-PNT」と地球の輪郭を1mmのスケールでマッピングする「GENESIS」の2つのミッションが行われます。
LEO-PNT
LEO-PNTの実証機の開発からサービス実証は、GMV Aerospace and DefenceとOHB System、Thales Alenia Spaceのフランス拠点とイタリア拠点の2つのコンソーシアムが契約を獲得しました。契約額はそれぞれ7,840万ユーロ(約129億円)です。この2つのコンソーシアムには、14カ国から50を超える事業者が参加しているといいます。
最初のLEO-PNT衛星はキックオフから20カ月以内に打ち上げられ、コンステレーション全体は2027年までに打ち上げられる予定です。
低軌道衛星コンステレーションを利用した測位システムは、ビルが立ち並ぶ都市部の測位精度向上に加えて、従来の測位システムの課題となっている電波干渉などの脆弱性、ジャミングやスプーフィングの解決につながるとして注目されています。
ESAはLEO-PNTを通じて、欧州の全球測位衛星システム「ガリレオ」を補完し、より正確で堅牢な測位システムの構築を図りたい考えです。
GENESIS
GENESISは大手宇宙開発企業OHBのイタリア拠点が率いる14の事業体からなるコンソーシアムが衛星の開発、製造、打ち上げ、運用などを担います。契約金額は7,660万ユーロ(約126億円)だといいます。
GENESIS衛星は2028年に打ち上げられ、科学目的での利用が行われる予定です。GENESIS衛星による観測データは、国際地球基準座標系(ITRF)の更新への貢献が期待されていています。
宙畑メモ
国際地球基準座標系(ITRF)とは、国際地球回転観測事業(IERS)という国際的な学術機関が構築している衛星測位システムに必要不可欠な3次元直交座標系です。さまざまな観測データの統合結果をもとに、数年おきに更新されています。
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参考
ESA kicks off two new navigation missions
ESA Navigation portfolio expanded and diversified by Ministerial Council