キヤノン電子、防衛省による軌道上で衛星を観測する実証衛星の製造・試験を受注【宇宙ビジネスニュース】
【2024年4月19日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。
4月9日、防衛省は、宇宙領域把握(SDA)能力の向上のため、低軌道から静止軌道までの衛星の動きを検知する実証事業において、「多軌道観測実証衛星の製造・試験」の契約をキヤノン電子と締結したことを発表しました。
宙畑メモ
「宇宙状況把握(SSA)」は宇宙物体の位置や軌道等を把握することを指すのに対して、「宇宙領域把握(SDA)」はSSAに加え、宇宙機の運用・利用状況及びその意図や能力を把握することを指します。
キヤノン電子は衛星本体や衛星搭載コンポーネント、衛星画像の外販を行っています。2月には地上分解能 0.8mで地表撮影や天体撮影などを行う超小型衛星「CE-SAT-IE」をH3ロケット試験機2号機で打ち上げて運用しています。
2020年10月に打ち上げた「CE-SAT-IIB」は、地上500㎞からISSを撮影することに成功しています。
このISSの画像を公開した際に、キヤノン電子は「超高感度カメラ搭載衛星は、宇宙空間を高速で動いている被写体の撮影にも有効であることが実証されました。今後、人工衛星やスペースデブリといった軌道上物体の観測においても利用可能であることが期待されます。」と説明していました。
防衛省は2023年3月にSSA情報の集約、処理、共有等を行う運用システムの本格運用を開始し、民間事業者に他の衛星やスペースデブリなど、宇宙物体の軌道情報などに関する情報の提供を始めるなど、SDAの取り組みを強化しています。
今回契約が発表された事業は、低軌道から静止軌道までの衛星を観測する光学衛星を低軌道へ打ち上げ、軌道上から衛星の動きを検知する実証です。
防衛省は「特に、静止軌道上では通信衛星等の重要な衛星が運用されており、これらの衛星の安定的な利用を確保するため、地上の光学望遠鏡やレーダー、軌道上の観測衛星など複数の観測方法を組み合わせ、不審な衛星の動きを検知する精度を高めることが重要です。」と説明しています。
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参考
当社製の超小型人工衛星「CE-SAT-IIB(シーイー・サット・ツービー)」にて撮影した新たな画像「ISS国際宇宙ステーション」を公開しました