ICEYEの共同創業者が来日! 世界最多のSAR衛星コンステレーションを構築するICEYEの成長スピードの秘訣と今後の展望
2024年2月12日、フィンランド発の小型SARベンチャーICEYEの共同創業者兼最高戦略責任者であるPekka Laurilaさんが来日し、同社の事業や強みの紹介がありました。宙畑編集部が印象に残ったポイントをまとめて紹介しています。
2024年2月12日、フィンランド発の小型SARベンチャーICEYEの共同創業者兼最高戦略責任者であるPekka Laurilaさんが来日され、同社の事業や強みの紹介がありました。また、実際に衛星を運用している風景をメディア向けに公開いただくなど、宙畑編集部としては非常に貴重でありがたい機会でした。

本記事では、当日語られたICEYEの強みと宙畑編集部が感じた同社の魅力についてまとめています。
(1)世界最多のSAR衛星コンステレーションを構築するICEYEの驚異的な成長スピードをもたらした2つの強み
ICEYEは2025年3月15日に、同社の第4世代の衛星を4機軌道投入することに成功しました。この打上げにより、2018年以降、48機のSAR 衛星を軌道上に打ち上げたこととなり、2025 年、2026 年、そしてそれ以降も毎年20機以上の新しい衛星を打ち上げる予定であることを発表しています。
小型SAR衛星として48機の打上げは最多となっており、同社のSAR衛星コンステレーション構築のスピードがさらに加速することが期待されます。
ちなみに、第4世代の衛星では、解像度が25cm、観測幅が150kmから400kmまで広くとなっているほか、画像の情報量は30%増加しているとのこと。
このように、小型SAR衛星ベンチャーをリードしていると言っても過言ではないICEYEの強みはどこから生まれているのか。その理由を考えるうえで、当日の場で「ICEYEがトップクラスの企業になっている鍵はどこにあるのか?」と参加した記者が行った質問に対する回答が非常に印象的でした。
まず一言目に飛び出した言葉は、「(冗談交じりではありましたが)Hard Work」とのこと。当日同席されていた方の補足によれば、フィンランドには、勤勉で、ハードワーキングをいとわないカルチャーがあるかもしれないとのことでした。
その上で、もうひとつの同社の強みを教えていただきました。
その鍵は、内製化です。ICEYEは送信機受信機、デジタルバックエンド電子機器、そして組み込みソフトウェアから操作ソフトウェア、アナログ電子機器ボードの設計などをほぼすべて同社で行っており、垂直統合しているとのこと。
この内製化によって、古い衛星から学んだ教訓を活かして、迅速に新しい次世代の衛星を作ることができるようになっていると語られました。2012年から2018年にかけては新しい衛星を最初から最後までデザインする必要があったが、今となってはほぼすべてを内製化して開発ができているからこそ、新しい技術を導入したいとなっても、費用対効果の高いスケーラビリティを、比較的大量に行うことができているとのことです。
(2)気象のスペシャリストが3人24時間体制で天候をモニタリング
宙畑編集部が最初のICEYEのSAR衛星が活躍している事例を取材を通して知ったのは、洪水が発生した際に保険金を支払う必要がある方への保険金支払いを迅速化するという東京海上日動火災保険様のプロジェクトでした。
本格実用目前!水害発生から早期に被害を把握、衛星データによる損害査定実証の裏側
取材でお話を伺った中で非常に印象に残ったのは、自然災害が激甚化している中で「保険金支払いに時間がかかることでお客様は元の日常生活に戻るための一歩が踏み出せなくなってしまいます。2019年秋に発生した台風19号の場合ですと、未だにブルーシートをかけたままの家屋も残っています。保険金支払いをお待たせしないということは本当に重要なのです。そこで差し迫った業務の抜本的改革が必要になりました。」というお話です。
人工衛星がまさに私たちの生活の困ったを減らすために役に立つのだと感じた瞬間でした。
一方で、人工衛星から被害状況を把握するためには、どこで被害が発生する可能性があるのかを予測し、被害が大きくなってしまうだろう場所をしっかりと撮影して記録を残す必要があります。そのためには気象予測が不可欠です。
どのように気象予測をされているのか気になった宙畑編集部は、ICEYEが独自で気象予測をしているのか、それとも各国の気象機関と連携しながら予測しているのかが気になり、その体制を質問しました。
その回答は以下の通りでした。
「ICEYEは、気象学者がアメリカ、欧州、日本にそれぞれ1名ずつ3人所属し、24時間体制でモニタリングしています。そのうえで、どこでどのようなイベントが発生しているか、また、起こりそうかを予測し、蓄積しています。
そのような体制で、お客様の要望に合わせて、リアルタイムで気象監視を行いながら適切なサービスを提供しています」
気象のスペシャリストがICEYE社内におり、24時間体制でモニタリングをしているということに非常に驚きました。衛星開発だけではなく、ソリューションにおいても内製化が進んでいるということなのかもしれません。
(3)「普段はスーツを来てないけれど」実際の衛星運用模様を大公開
また、当日は会場の一室にモニターがたくさん並べられ、実際の衛星運用がどのように行われているかを見ることができるという贅沢な時間がありました。

そこでは「普段はスーツを着ていたり、(ホテルの)綺麗なテーブルクロスがしかれているような場所ではやらないけどね」といった冗談も交えながら、実際に衛星が軌道上でどのように動いているのか、先日の森林火災が起こった際にICEYEの衛星でどのようなことが起こったのか、どのように衛星にタスキングの撮像要求をしているのか……ということをたっぷりと実際の画面を見ながら教えていただくことができました。
以下、どのような場面を見せていただいたのか、ギャラリー形式で紹介します。



以上、「ICYEY JAPAN DAY」で紹介された内容のなかでも、宙畑編集部が印象に残ったポイントをまとめて紹介しました。
直接ICEYEの共同創業者にお話を伺うことができ、また、実際の衛星運用も見せていただくことができ、非常にありがたい機会でした。
小型SAR衛星コンステレーションの構築が今後もどんどん進み、私たちの生活がより豊かで安心なものとなる未来が非常に楽しみです。