Virgin Galacticの新型宇宙船「Delta」に関する10の開発状況【宇宙ビジネスニュース】
2025年5月16日に公開された宇宙旅行会社のVirgin Galacticにおける新型宇宙船「Delta」の開発進捗について、10のポイントをまとめました。
2025年5月16日、宇宙旅行会社のVirgin Galacticのマイク・モーゼス氏が新型宇宙船「Delta」の開発進捗を同社のYoutubeで公開。本紹介ではフライトシミュレーターでの新飛行制御システムを体験したこと、アビオニクスや機械システム、構造の開発が着実に進捗していることについて、まとめられていました。
また、YouTubeの中では、Virgin Galacticは2026年夏の商業宇宙飛行に向けて「Delta」の飛行制御、アビオニクス、機械システム、構造等開発が着実に進んでいることについても言及がありました。
本記事では、動画で語られた10のポイントをまとめてご紹介します。
1.Virgin Galacticのパイロットがフライトシミュレーターで新しい飛行制御システムを実際に操作
今回の新型宇宙船では飛行制御系統が更新されており、実際の飛行前に、高精度な宇宙飛行シミュレーションを数百回行うことで、宇宙船の設計と操縦特性の最終化を実施するそうです。
2.Virgin Galacticのアビオニクス (宇宙船制御用の電子機器) のソフトウェアおよびシステムテストにも大きく進捗
アビオニクスは船内のすべてのシステムと接続し、パイロットがミッション中、安全に操縦するための情報と制御を提供します。本テストにより、新宇宙船のソフトウェアとハードウェアを飛行前にさらに洗練することができ、宇宙船の安全性を確保可能となるとのことです。
3.機械システムについて、宇宙船のランディングギア の95%が完成
最初に製造したランディングギア(航空機の脚部を指しており、着陸時の衝撃を吸収し、地上滑走や走行を支えるための装置)は近日中に受入試験が実施され、宇宙船工場に納入される予定。他の主要な機械システムの地上試験は既に開始されており、残りのシステムは今夏に試験開始予定とのことです。
4.宇宙船搭載用のコアバルブの機能試験を完了し、振動試験を実施中
これらの試験は宇宙飛行中に想定される以上の極限状態をシミュレーションするための試験です。振動試験が完了し次第、温度試験 (宇宙空間の極端な高温・低温条件下での試験) に移行します。
5.宇宙船の巨大な外板をテキサス州のBell’s Manufactureing Technology Centerで成形中
外板は宇宙船の他の部分と同じ耐熱性BMIカーボンファイバーで製造されています。boomは宇宙船の尾部にあたる部分で、宇宙に到着後、featherメカニズムで展開されます。
featherメカニズムは、宇宙から地球に着陸する時に使用する翼折り畳みシステムであり、大気圏突入時は翼を折りたたんで球に近い形状とし、大気が濃くなってきたら翼を元に戻すことでグライダーのように着陸する運用を実現します。これが当社の宇宙船で最も革新的な機能です。この機能により、宇宙船は形状を変える独自の能力を獲得し、安全で飛行実績のある、空力制御された再突入を繰り返し行うことが可能になります。
6.上部の胴体と下部の胴体を組み立てるための巨大な組み立て治具が宇宙船工場に到着し、設置が完了
組み立て治具に使用されるカーボンファイバー部品は、Qarbon Aerospaceの施設でレイアップと組み立て工程を進めています。下部の胴体外板の作業が進行中で、上部の胴体外板も間もなく開始される見込みです。
7.加圧された宇宙船の客室を密閉する部品の出荷準備が進む
客室を区切る仕切り部品の成形用ツールで最初の2つの部品が製造され、工場への出荷準備が進んでいます。ドーム形状のこれらの部品は「プレッシャーボールキット」とも呼ばれ、加圧された宇宙船の客室の前後端を密閉する役割を担います。
8.宇宙船の工場に2枚の翼外板(スキン)が到着
地球の大気圏再突入に耐える高耐熱BMI系カーボン複合材料から作られた翼の外表面が工場に運ばれました。次の機体の翼外板もジョージア州のQarbon Aerospaceで製造中で、間もなく工場に到着する予定です。
9.2つの組立用大型治具 (固定具) を設置
まず、巨大なwing-up垂直最終組み立て治具 (地面に対して垂直方向に機体を固定する固定具) が設置されました。この治具により、翼の構造部品を一つずつ取り付け組み立てます。翼はその後wing-down水平組み立て治具 (地面に対して水平方向に機体を固定する固定具) を用いて、翼を機体に接合する工程を実施予定です。この工程で宇宙船の3分の2が完成とのこと。
10.Delta初号機用の酸化剤タンクに進捗
今四半期、Delta初号機用の酸化剤タンクが受入試験に合格したそうです。現在は洗浄中で、宇宙船工場への出荷準備が整いつつあります。
冒頭で述べた通り、「Delta」の初の商業宇宙旅行は2026年夏を予定。今後の同社の動向にも注目です。
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【参考】
・Virgin Galactic Announces First Quarter 2025 Financial Results and Provides Business Update
https://press.virgingalactic.com/virgin-galactic-announces-first-quarter-2025-financial-results-and-provides