宙畑 Sorabatake

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宇宙から船舶などを観測する第三の目、始動【週刊宇宙ビジネスニュース 2/25~3/3】

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!

先週は久々に衛星関連の大きな話題がありました。1つは、ソフトバンクの出資でも話題となったワンウェブの小型通信衛星が6機打ち上げられ、今後が楽しみな話題。2つ目は先日にWorldView-4の故障により話題に上がったMaxarグループが、約1200億円の損失を補填するべく、6,100人の全従業員の4%にあたる約250人をリストラする、という話題。
そして3つ目はHawkEye 360社が開発したPathfinder衛星の観測結果が出てきたことです。
今回は3つ目のPathfinderについての話題をご紹介します。

発信源特定のイメージ図。複数機の衛星の観測結果から電波の発信源を特定する Credit : HawkEye 360

2018年12月にSpaceXの相乗りミッションで打ち上げられたHawkEye 360社の20 x 20 x 44 cmサイズの超小型衛星、Pathfinderの観測結果が届きました。

同社の衛星は地上から発信されている電波から、電波の発信源を特定する、というユニークなミッションを行っています。現在は3機の衛星で観測網を構築し、電波発信源を3点測量の要領で特定し、その有効性を実証している段階です。同社が公開している動画から、その観測方法のイメージが分かります。

従来は洋上の船舶を観測しようとすると、SAR衛星やAISの発信信号を観測することが一般的でしたが、PathfinderはAISの発信信号を観測する他に電波の発信源から船舶の位置情報を把握することができるため、両データを比較することでも違法操業を検出することができるようになります。

電波を受信しただけではどこかに船舶がいる、ということしか分かりませんが、複数機の衛星で電波を受信することで電波発信源を特定することができ(GPSで位置情報を特定できるのと同じような原理です)、かつAISの発信源と比較することで、船舶がいないはずのところに船舶がいるのかどうか、を知ることができるようになるのです。違法操業をしている船舶は、複数の船舶で協業していることが多いため通信しながら航海しており、このような手段が有効となる訳です。そのため、このようなミッションを実施する衛星が現れたことは、違法操業への大きな抑止力として作用することでしょう。

静止軌道に大型衛星を打ち上げてきたMaxarグループのSSL社がリストラなど右肩下がりなのに対して、超小型衛星分野は人員を増強する企業が出てきているのが対照的です。

Pathfinderは船舶観測のみをミッションに据えているわけではありませんが、新たな観測手段により、新たに見えてくるもの・分かることも今後増えてくるかもしれません。

電波受信というと、防衛的な側面を意識されることが多いのですが、電波受信から得られた情報と他の情報を組み合わせることで、さらに新たなことが分かるようになり、それは私たちの生活を豊かにする情報となるかもしれません。

今後Pathfinderを通してどのようなことが新たに分かるようになるのか、楽しみですね。

今週の週刊宇宙ビジネスニュース

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