日本橋がアジアの宇宙ビジネスハブに。ESAが初の常設拠点を日本橋に開設、50年以上の日欧協力が新段階へ【宇宙ビジネスニュース】
X-NIHONBASHI TOWERに開設されたESAアジア初拠点。その役割と、政府間から民間企業まで広がる日欧連携を紹介します。
2025年10月28日、欧州宇宙機関（ESA）が東京の宇宙ビジネス拠点「X-NIHONBASHI TOWER」内に、アジア初となる活動拠点を開設することを発表しました。
ESAは、1975年設立の欧州23ヵ国が加盟する宇宙機関です。地球観測から惑星探査まで幅広い分野で国際協力を推進しています。
「X-NIHONBASHI TOWER」は、クロスユーが運営する施設です。2023年4月より宇宙ビジネス共創プラットフォームとして活動しています。
宙畑メモ：共創プラットフォームとは
異なる企業や組織が協力して新たな価値を生み出すための場や仕組みのこと。
クロスユーとESAは、2024年11月にパートナーシップ（LOI）を締結しました。欧州のベンチャー企業と日本企業のビジネスマッチングなどを推進してきました。
宙畑メモ：LOI（Letter of Intent）とは
基本合意書のこと。正式契約の前段階で、協力の意思や基本的な条件を確認する文書です。
両機関のリリースによると、ESAの代表者が常駐し、クロスユーとの共創プログラムを推進します。また、欧州と日本の政府・民間セクター間の調整促進など、日欧の宇宙ビジネスプレイヤーの橋渡しに係る業務も行うとのことです。
これまでは、ESAはアジアに常設の拠点を持っていませんでした。
東京事務所開設により、次の効果が期待されます。現地での共同プログラム支援、関係機関間の調整迅速化、時差を越えた緊密なコミュニケーションなどです。
日本と欧州の宇宙協力関係自体は最近構築されたものではありません。1972年に宇宙研究・開発で協力するための交換公文を交わしてから50年以上の歴史があります。これまでにESAとJAXAは、地球観測、惑星探査、小惑星研究など数々の共同プロジェクトを実施してきました。
宙畑メモ：ESAとJAXAの主な共同ミッションとは
・EarthCARE：雲とエアロゾルの観測により気候変動を研究する地球観測衛星
・BepiColombo：水星の磁場や内部構造を調査する水星探査機
・Hera：小惑星の軌道変更実験の効果を確認するESAの探査機
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2024年11月には、「将来大型協力に関する共同声明」が署名されました。地球防衛（プラネタリーディフェンス）、地球観測、低軌道活動、宇宙科学を含む将来の共同ミッションの分野を概説しました。
宙畑メモ：地球防衛（プラネタリーディフェンス）とは
地球に衝突する可能性のある小惑星や彗星などの天体を発見・追跡し、必要に応じて軌道を変更させる技術や取り組みのこと。NASAのDARTミッション（2022年に小惑星の軌道変更に成功）などが代表例です。
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JAXAとヨーロッパ宇宙機関（ESA）が共同声明を発表。地球観測や低軌道・探査などで協力強化へ【宇宙ビジネスニュース】
これまでの50年間は主に政府機関同士の科学探査協力が中心でしたが、最近では商業宇宙セクターとの連携も加速しています。例えばアストロスケールの宇宙デブリ除去技術開発へのESA支援、ispaceの月面探査ミッションでのESA協力など、スタートアップレベルでの協力も深化しています。
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今回の東京事務所開設により、このような民間企業を含めた日欧宇宙ビジネスの連携がさらに加速することが期待されます。
ESAの新東京事務所は、ワシントン事務所のモデルをベースとしています。二国間の関与を深めるための戦略的拠点として機能します。ESAワシントン事務所は現地での情報収集、協力支援、政府との調整などの役割を担っています。
東京事務所も同様の役割を担うことが期待されます。具体的には、日本・アジア太平洋地域での動向把握、JAXAや民間企業との協力支援、欧州宇宙技術の日本展開促進です。
ESA長官のジョゼフ・アッシュバッカー氏は次のように述べています。
「ESAと日本の関係は、長年にわたる信頼と科学的卓越性を基盤として築かれてきました。今回の拠点設立は、地球観測や惑星防衛、科学探査、人間およびロボットによる宇宙探査、そして宇宙の商業利用に至るまで、あらゆる分野で日本との協力をさらに深化させていくという、私たちの明確な意思を示すものです」
また、JAXA理事長の山川宏氏は、ESAの決定を歓迎し、次のように述べています。
「JAXAはESAの日本での拠点設立を心から歓迎します。長年にわたり、ESAとJAXAは幅広い宇宙活動において強固なパートナーシップを築いてきました。ESAの日本事務所の設置により、両機関間のコミュニケーションがさらに緊密になり、関係が深まり、地球規模の課題への取り組みや宇宙科学技術の進歩に貢献できると確信しています」
1972年の協力開始から50年以上が経過した日欧の宇宙協力関係。アジア初となるESA東京事務所開設により、政府間協力から民間企業連携まで、日欧宇宙協力がさらに一歩進んだと感じさせるニュースでした。
