広告・エンタメ×宇宙! TV、WEBに次ぐ“宇宙マーケティング”の可能性
東京大学・中須賀真一先生も参画する『スペース・バジル』の皆さんに、宇宙空間を利活用した広告やエンターテイメント・ビジネスの展望と可能性について、お話を伺いました。
年々と宇宙ビジネスが世界的に注目されつつあるなか、「誰もがワクワクと熱狂できるコンテンツに着手することで、宇宙をより身近なものへと進化させたい」との願いをこめた、宇宙空間広告事業および、宇宙空間エンターテイメント事業の創造を目指す会社が、ここ日本で起業されたのをご存じでしょうか?
その名も『スペース・バジル』 ──今回は、超小型衛星を開拓した第一人者であり、同事業を技術的な面で支える東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻教授・中須賀真一先生も参画する『スペース・バジル』の皆さんに、宇宙空間を利活用した広告やエンターテイメント・ビジネスの展望と可能性について、お話を伺いました。
東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻教授。工学博士(航空学専攻)。
1988年、東京大学大学院博士課程修了。1994年、東京大学先端科学技術研究センター助教授。1998年、東京大学航空宇宙工学専攻助教授。2005年、東京大学航空宇宙工学専攻教授。
[学会]AIAA、日本航空宇宙学会、日本ロケット協会、計測自動制御学会等会員。
[専門]宇宙システム工学、小型衛星の設計・製作、宇宙機の知能化・自律化、将来の新しい宇宙システム、航法・誘導・制御、ロボティックス、人工知能(とくに機械学習)とその宇宙応用。
[受賞歴]日本航空宇宙学会 奨励賞、人工知能学会全国大会優秀論文賞、人工知能学会論文賞、日本機械学会教育賞、日本工学教育賞、日本機械学会宇宙工学部門宇宙賞、IBM Faculty Award、電気化学会論文賞。
1973年、大成建設(株)入社。1988年、スイート・ベイジル(株)代表取締役会長。2017年、一般社団法人日本デジタル芸術スポーツ文化創造機構代表理事。
2013年、ソーシャル・エコロジー・プロジェクト(株)(JASDAQ上場企業、現社名は伊豆シャボテンリゾート(株)代表取締役社長就任。2014年、(株)スーツ代表取締役就任。2016年、総務省地域力創造アドバイザーおよび内閣官房地域活性化伝道師登録。2019年、国土交通省PPPサポーター就任。
2013年、(株)新東通信代表取締役社長就任。2015年、共同ピーアール(株) (JASDAQ上場企業)代表取締役社長就任。
世界における宇宙ビジネスの市場規模は、この10年以内に10兆円以上成長しており(現在約39兆円)、2040年には約100兆円にも達すると言われています。
こうしたなか、日本のPR会社のパイオニアとして業界をリードする共同ピーアール株式会社が宇宙ビジネスに参画します。宇宙空間を利活用した広告やエンターテインメント・ビジネスは、今後どのような発展を望めるのでしょう?
1.なにもない宇宙(スペース)に香辛料(バジル)で一味を
──まずは、今回の“起業”へと至った経緯をお聞かせください。
尼崎:偶然、中須賀教授と出会ったとき、宇宙の話で大いに盛り上がったんですよ。私は本来、宇宙に関してはまったくの素人でしたが、先生を通じてだんだんと詳しくなってきて……。
昨今、いろんな宇宙ビジネスが注目されてはいますけど、それらは気象衛星による台風の予測や漁獲観測、小型ロケット……と、特殊な分野のみでしか活かされておらず、一般ユーザーにとってはまだまだ縁遠いものでしかありません。空の上でISS(国際宇宙ステーション)がなにをやっているか、普通の人はほとんど知らなかったりする。
だが、お話をすればするほど宇宙はすごく身近なものだし、じつに面白いということがわかりはじめてきました。さらには「宇宙とエンターテインメントをマッチングしたビジネスも十分に可能ではないか」「宇宙を媒体にした広告会社をつくりたい」と、途轍もない妄想に囚われてしまったんです(笑)。
さっそく「そういうことってできますか?」とお訊ねしたところ、先生も乗ってくださって、「宇宙ビジネスにエンターテインメントをミックスすることによって、宇宙への注目度を高めよう」と意気投合し、『スペース・バジル』が誕生したわけです。
──『スペース・バジル』という社名の由来は?
尼崎:「バジル」とは香辛料のこと。「味がしない、なにもない宇宙に一味加えてみようよ」というコンセプトによるネーミングです。
中須賀:「味がしない」なんて言わないでくださいよ(笑)。とは言え、エンターテインメントを基軸にした親近感のあるアクションを派手に起こせば、媒体も大きく動いて多くの人たちも注目するのは間違いありません。衛星はかなり長い期間、秒速8㎞という凄まじいスピードで、地球を約1時間半かけて回っていますので、広告としてもバラエティに富んだあらゆる企画が発想できると考えています。
──おおよその事業内容は、どういったものなのでしょう?
小松:今、実現しようとしている事業領域は、大きくは「宇宙空間広告事業」と「宇宙空間エンターテインメント事業」の二つです。
広告事業に関しては、マーケティングとブランディング。企業の商品や、企業全体のブランド力向上を目指し、中須賀教授が開発された超小型衛星の技術を駆使して、宇宙空間を活かした広告をやっていきたいと考えております。
エンターテインメント事業に関しては、宇宙空間を活用した映像や音楽やゲームであったり……と、各種エンターテインメントの企業様と協力しながら、今までにないユーザー体験を創り出していくことを目指しています。
尼崎:もちろん、これらはすべて宇宙で行われているため、我々地球にいる人間には目視できません。なので、その過程をスマホやパソコンの端末に落とし込んで楽しんでもらえれば……と。こういった連携によって「自分も宇宙にいる感覚」を堪能していただくイメージです。
──ロシアのスタートアップ企業『StartRocket』が、小型人工衛星を並べてメッセージを表示する計画を発表しました。あれは地球上にいる我々も目視できるわけですよね?
中須賀:「空に絵を描く」のは、じつのところ、そんなに難しいことではないんです。技術的な面から言えば、皆さんが想像されている以上に、たいていのことは実現可能だと思います。
2.すでに決まっている案件あり!? 具体的なプランを教えてください!
──現段階で、お話できる具体的なプランはありますか?
尼崎:すでに動いているプロジェクトも複数あるので、公的には言えないこともたくさんあるのですが、将来的には誰もが知っている人気キャラクターが宇宙に行ったり……なんてことも十分にあり得ます。
中須賀:たとえば、来年の東京オリンピックで「ガンダムを宇宙に飛ばす」というプランはご存知ですか?
──ネットニュースで読みました! その詳細をあらためてお伺いしてもよいでしょうか?
中須賀:「G-SATELLITE 宇宙へ」と命名されたもので、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が「ONE TEAM PROJECT」の「宇宙から東京2020 エール!」企画の第2弾として、東京大学、JAXAと特別コラボした企画です。
日本が誇る文化の一つである漫画・アニメのなかでも、とくに世界的な知名度の高い作品『機動戦士ガンダム』の“ガンプラ”を世界に向けてPR するといったもので、宇宙仕様ガンダムとシャアザクを搭載した3Uの超小型衛星を、ISSから放出します。
もう少々説明を加えますと、人工衛星には複数のカメラも搭載しており、撮影された映像を地上に降ろします。そして、ガンプラには電光掲示板も設置してあり、表示するメッセージは、こちらからの操作で「オリンピック頑張ろう」や「金メダルおめでとう」……と、自在に変えることができる。それらの映像やメッセージでオリンピックを応援するといった仕組みになります。
──2014年にはキティーちゃんも教授の手によって、人工衛星で宇宙空間へと飛び立ちました。
(Youtube:サンリオ公式アップ動画)
中須賀:コンセプトはかなり近いですね。キティーちゃんによるメッセージの一つはサンリオさんがお客さまに対して発した「感謝」でした。これらのメッセージを宇宙で撮影し、サンリオさんに送っていました。そういう意味ではサンリオさんの取り組みは、この分野での走りで、ロイターほか多くのメディアから世界中へと拡散されましたね。
谷:かなりベタではありますが、カップラーメンの『UFO』が宇宙空間を飛んでいたら、面白いじゃないですか(笑)。私どもとしては、グローバルな視点に立ってマーケティング活用しようと考えている企業様へと、宇宙広告をどんどん積極的にプレゼンテーションしていく予定です。
小松:今だとなにをやっても「世界初」、いや「宇宙初」ですから(笑)。
3.クライアントにとって、宇宙広告の魅力とは
──既存メディアによる広告やエンターテインメント事業にはない、「宇宙」ならではの魅力とは?
尼崎:たとえば、従来のテレビ媒体による「ワンクール」などの期間を基準としてCMやプロモーションをかけると、10億や20億の予算なんて、あっという間に消えてしまいます。でも、人工衛星は約1年半もの間飛んでいる(笑)。
しかも、地域限定ではなく全世界に発信することだって理論的には可能なので、コストパフォーマンスを比較すれば、宇宙空間広告事業のほうがはるかに費用対効果も高い。そこに私は大きなビジネスチャンスを感じたわけです。
谷:年間で広告に100億円の予算を充てる企業様は、日本でも約100社実在します。ただ残念なことに、そこで採用されているコミュニケーション手法はどこも似たようなもの。これからの時代は、その総予算の内訳から10%でもかまわないので、既存メディアにはない新しい表現手段へとシフトしていくべきです。
当たり前の話、同じようなコミュニケーション手法ならば、100億円の予算しか組めない会社は500億円の予算を組める会社には勝てません。どの広告も精鋭のクリエィター集団が携わっているわけですから、クリエイティブの部分での工夫にも限界がある。ならば、同じ土俵で勝負するのではなく、なにか違ったメソッドにチャレンジしたほうが“差別化”に対しても、より最短距離的な効率性を見込めるのではないでしょうか。
──「前例がない」ゆえに、ビジネスの進め方も大きく変わっていくと予想されますが?
谷:一番の高いハードルとなっているのは「宇宙ビジネスは前払い」ということです。広告業界は原則として「後払い」。そのあたりは企業様の宣伝部やマーケティング担当の皆さまに毎回、丁寧なかたちで説明しております。ただ、こうした旧来のビジネス慣習より、「宇宙初」といったインパクトのあるキャッチコピーが秘める「ワクワク」のほうが勝ると、私どもは信じています。
小松:クリエイティブの部分をどう料理するかによって予算も変わってきます。この調整は今後、宇宙の権威でありながら遊び心も持ちあわせる希有な人材である中須賀教授の知恵を借りつつ、私どもが仲介に入り、個々のクライアント企業様と「ユーザーがワクワクできる仕掛けづくり」をじっくり話し合っていくことになると思います。
中須賀:企業様の要望によって、衛星の機能をフレキシブルに替えていく「オーダーメイド」の概念が、宇宙広告やエンターテインメントの世界においてはマストになってくるでしょう。
ロケットや人工衛星を打ち上げるには、もちろん膨大なコストが発生します。しかも、開発に時間もかかる。「今これをやりたい」とプランを立てても、実現化は数年後になってしまったり……。2年かかったとしたら、トレンドはもう変わっちゃうじゃないですか。
この「時間」を徹底的に短くすることが極めて大事なんです。お客さまは「今すぐやりたい」わけですから。とりあえず我々はこの期間を「半年」に縮めるまでの技術を持っています。6ヶ月でもまだまだ長い。本当はもっと短くしたいんですけどね。
周波数認可を取ったり、打ち上げのスロットを確保する……などのほうが、むしろやっかいかもしれません。もちろん、それらはスタートと同時に並行的に進めますが、これらにかかる期間を極力短縮するのも、今後の課題です。しかし、小型衛星において肝になってくるこの問題は、打ち上げの数が増えれば増えるほど解消されていくと、僕は予測しています。
尼崎:先生は「半年」と言いましたが、テレビだって今は企画を立てて実現化するまで半年くらいは軽くかかってしまいます。むしろ、テレビのようにガチガチな規制に縛られることもないので、フットワークも軽くなって、事もよりスムーズに進むはず。だって、ルールは我々がつくるんですから(笑)。
4.「ワクワク」を通じて宇宙と人類の距離を縮めたい
──人工衛星の打ち上げはロケットですか?
中須賀:基本はISSの利用がメインになります。また、高度によってオーダーの期間も若干変わってくるでしょう。とは言え、これからはISSだけに頼るのではなく、堀江貴文さんが取り組まれているような、ベンチャーによる小型ロケットもどんどん打ち上げられると予測されるため、より高い高度を確保することも可能になってくると予測されます。
小松:企業様によっては、インタラクティブに頻繁にやりとりをしたいから、通信速度を速くしたいという要望が出てくることもあり得ますので、そのあたりは教授の助言をもとに、柔軟な対応をしていきたいと考えております。
──ズバリ、『スペース・バジル』最大の強みは、なんでしょう?
中須賀:企業様もユーザーも、最初は「宇宙で実際になにができるか?」、おぼろげにしかわからないわけです。わからないからこそ、ハード面における質疑応答を繰り返しているうちに「面白くて、かつ実現可能なこと」へと着地していく──この積み重ねがとても重要なんです。そして、こうしたステップを根気強く踏み続けるスタッフと業務形態を公に向けてプレゼンテーションできるのが、『スペース・バジル』の強みなのではないでしょうか。
尼崎:私どもの志は「マーケティングやエンターテインメントを通じて、宇宙と人類の距離を縮めること」──つい10年前だと、「宇宙に広告が打てる」なんてことは絵空事でしかありませんでした。でも、前澤(友作)さんが「宇宙旅行をする」と宣言したり、堀江(貴文)さんがロケット事業に尽力したり……と、宇宙のニュースが急速に増えはじめ、宇宙との距離が近くなってきている。そういった背景のなかで、『スペース・バジル』のような会社が立ち上がるというのは、タイミングとしても必然なのかもしれません。
5.「宇宙に行きたい」という願いは人間の本能?
──他に注目されている宇宙ビジネスがあれば、教えてください。
尼崎:葬儀のとき、海に散骨するケースがありますよね?それを宇宙でやったらいいんじゃないか……と。地球上で皆さん一緒に故人を送り出して、1年くらいで星になる……ロマンがあるじゃないですか(笑)。
小松:「宇宙葬」はすでに、米国あたりでビジネスとして成立しはじめていますよね。あと、「宇宙旅行」も、まだ膨大な料金がかかるとはいっても、一般のユーザーをわかりやすく巻き込むという意味では、我々が目指すエンターテインメントに近いと考えています。
谷:人類と宇宙の関係とは、これまでは「貴重」なものであった。けれど、科学技術の進歩によって“リアリティ”が加わり、やっと「楽しめる」段階へと到達しました。そして、そこにスポットを当てることによって、人類と宇宙の距離を縮めたい。その「ワクワク感」をきっかけとし、結果的には「宇宙ビジネスに携わりたい」と夢を抱く若者もおのずと増えていくはず──そんな世界を私どもは目指しています。
中須賀:多少専門的な視点から申しますと、地球観測の回数が高くなって、それこそ毎日の観測が可能になれば、宇宙ビジネスも劇的に変わってくることに期待しています。今の人工衛星の一番の問題は「同じ場所にずっといない」ということ。地球をぐるぐる回って、なかなか定点に来ない。なので「頻度」がポイントになるわけです。
もう一つは「通信」です。最近は「ワンウェブ」(低軌道コンステレーションを用いた衛星通信衛星を行う予定の衛星通信会社)が宇宙空間にインターネットをつくろうとしています。
いわゆる「真面目」な宇宙開発は今後も進歩していくのでしょうけど、一般的な認知という観点からは、いかんせん「爆発力」が乏しい。爆発的に世間へと浸透させるには、やはり「文化的」な方向も不可欠だと僕は思っています。
「宇宙旅行」は、まさにその一つ。これは「宇宙へ行きたい」という人間が元々持っている本能によるもの、遺伝子の中に組み込まれているもの。仮に宇宙旅行は無理だとしても、実際にJAXAが開発しようとしている「宇宙に行った感覚を楽しめるアバター」の世界をつくってみたり……。そんな宇宙が秘めているロマンやワクワク感を喚起するエンターテインメントは極論、人間が月や火星で本当に生活できるようになるまで、右肩上がりに伸びていくに違いありません。
6.東京五輪・大阪万博……宇宙が身近になる可能性は無限大!
──『スペース・バジル』を通じて、5年後・10年後に成し遂げたい目標とは?
尼崎:僕は、とにかく宇宙空間をメディアの一つとして確立したい。世の中にインターネットが波及し始めたのは2000年くらい。それからたった20年足らずで、もはやインターネットは当たり前になってきていますよね。このようなメディアのイノベーションが、僕が生きているうちに、宇宙事業によって生まれたら嬉しいですね。僕は今年70歳になるんですが、最初の代表取締役社長としてあらかたの仕組みさえつくってしまえば、次は若い世代が率先して引き継ぐべきだとも考えています。
谷:私も「宇宙広告」といった売りが一般名詞化すればいいなと思っています。そして、「それを最初に日本で手掛けたのが我々だ」と人にお話しして「あ、そうなの!」ってことになれば(笑)。
小松:東京オリンピックが来年に開催されますが、弊社の宇宙空間を活用した広告やエンターテイメント事業も同じようにいろんな人たちの記憶に残るようなものになれば最高かなと思います。2025年に大阪で開催される万博の時期には、今以上にあらゆる面で宇宙が身近となっているでしょうから……可能性はまさに無限大です。
尼崎:1964年の東京オリンピック開催のころ、多くの会社が設立されました。そして、そのいくつかは凄まじい成長を果たし、現在は巨大な企業になっています。私どもをはじめとする宇宙事業の分野は、まさにその段階へと足を踏み入れているのではないでしょうか。
中須賀:大阪万博は、たしかにターニングポイントになるかもしれない。前回とほぼ同様、東京オリンピックの5年後の開催ですし。僕は1969年にアポロを知って、その翌年に万博(のアメリカ館)で月の石を見て、宇宙に目覚めたわけです。あれは衝撃的な体験でした。今度の万博も、宇宙のイメージがよりポピュラーとなるきっかけになればいい。
「難しい部分」と「柔らかな部分」をつなげる作業は誰かがやらなければならないこと。だから、衛星をどう使うかは、僕らのような開発者ではなく『スペース・バジル』、さらには企業様、ユーザーの皆さんにアイデアを練ってもらいたいんです。
──宇宙開発というと、最近は「宇宙ゴミ」という言葉も聞く機会が増えてきました
中須賀:「スペースデブリ(宇宙ゴミ)」は決して無視してはいけない問題です。とりあえず「自分(衛星)がゴミにならないこと」を保証することは紳士協定として不可欠。たとえば、「この衛星は1年半で確実に燃え尽きる」ということで「絶対に宇宙ゴミにはならない」ことを保証する。広告事業において、少しでもネガティブな要素があるのは命取りですから、そこは100%排除しなければなりません。
「宇宙広告で使用する、上から下へと照らしつける大量のライトが天体観測の邪魔になる」という懸念も指摘されています。そういう“光害”も、細やかな相談を積み重ねて、ある決められた領域で、決められた時間内に行う……など、最大の注意を払うべきでしょう。
取材を終えて
「哲学的に言えば、人間は必ず宇宙に出ていくもの──そのための練習、宇宙に近づくための精神的な訓練をしているフェーズが、宇宙から地球へと入ってくる広告によって、より多様な彩りを加えるはず」と中須賀先生は語ります。
これまでは「高額すぎる宇宙探査機」として認知されていた人工衛星が小型化かつ低コスト化していくなか、今後は利活用の幅も飛躍的に拡大することが期待されます。現状では、まだホンの一部でしかない「宇宙に興味を示す人」の母数が、エンターテインメントの力によって膨らんでいくプロセスを、『宙畑』もすぐそばでぜひ、体感してみたいものです。
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