欧州の宇宙の祭典 Space Tech Expo Europeが開催!【週刊宇宙ビジネスニュース 11/18〜11/24】
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Space Tech Expo Europe 2019が開催!
11月19日~11月21日の日程で、欧州最大の宇宙産業展示会であるSpace Tech Expo Europe 2019がブレーメンにて開催されました。
以下では、多くの欧州の宇宙ベンチャー企業や宇宙大手企業が参加していた本カンファレンスで語られた内容をピックアップしていきます。
欧州での新しい宇宙港の実現に向けて
11月19日のプレナリーセッション(Bringing Commercial Space Forward – An Outlook from European Primes)では、宇宙港についての議論が行われました。
セッションの中で、ヨーロッパの産業大手であるArianespaceとOHBが、ヨーロッパ全体で少なくとも6個の宇宙港が検討されていることに肯定的な見解を示しました。
OHB CEOのマルコ・フックス氏はセッション内で、スウェーデン・ドイツ・イタリア・スコットランド・ポルトガル・ノルウェー等の欧州諸国で宇宙港の設立について話し合っていると発言しました。これらの宇宙港の用途については明言がありませんでしたが、おそらく小型ロケット用の射場とサブオービタル機の離着陸が主要な用途になると推測されます。
欧州の軌道ロケットは現在、フランス領ギアナのギアナ宇宙センターから打ち上げられていますが、昨今注目されている小型ロケットの打ち上げではそれほど多くの打ち上げインフラ機器を必要としないため、より簡素な宇宙港からも打ち上げが可能だと述べました。現在のギアナ宇宙センターではサブオービタル機の離着陸には使用できません。
また、民間資金で追加の宇宙港を設立することの一番のメリットは競争が生まれることだと断言しています。
“What is obvious is that competition is good. If there are more spaceports, it’s better than if there are less spaceports.”
(訳:競争が起きることが良いのは明白です。より多くの宇宙港があれば、その分宇宙港自体の性能が向上するでしょう。)
それに対して、ArianeGroup CEOのAndré-Hubert Roussel氏は、新しい宇宙港の検討は良いが、それは莫大な投資になるだろうとの見解を示しました。
フランスの宇宙機関CNESと欧州宇宙機関ESAは、2016年に2億ユーロ(2億2150万ドル)を投資しギアナ宇宙センターのアップグレードを計画しています。アップグレードの目的は、2020年後半に打ち上げ予定のArianespaceの新型ロケットアリアン6に備えるためです。
宇宙ベンチャーだけでなく大手宇宙企業も小型ロケットの開発を勧めているなか、欧州での宇宙港の建設計画にも注目です。
ロシア製の宇宙機器ポータルサイトが開設
Roscosmosの商業子会社であるGlavkosmosは、ロシアのロケット及び宇宙機器製品用のWebポータルを11月20日のセッション(Satellite Manufacturing: The Continuous Trade-off Between Reducing Cost While Improving Capabilities)で発表しました。
このWebポータルは、75以上の企業の480以上の製品に関する詳細な技術仕様をまとめています。現在ロシア語と英語で利用可能ですが、今後言語が追加される予定とのことです。
GlavkosmosのDmitry Loskutov局長は、
「率直に言ってこれは革命的なものではありませんが、ロシア製の宇宙機器を購入したい顧客のPainを解決することにはなります。私たちは、顧客目線を心がけています」とセッション内で述べました。
今回のWebポータルはオンラインショップではありません。ロシアの宇宙機器メーカーが提供する商品を一目で確認することを可能にするポータルサイトという位置づけです。
ユーザーは同サイト上で個人アカウントを作成し、メーカー及び商品を検索可能で、サイト上で要件についてマネージャーと話をすることができるとのことです。
Glavkosmosは、今回のポータルサイトの開設を、顧客がロシアの宇宙機器産業をより容易に活用するための第一歩と位置づけているようです。サイトのデザインもロシアらしさが感じられるものとなっています。実際にロシア製の宇宙機器が多くの顧客のもとに届くことになるか、今後も注目です!
ESAがVegaロケットの運用再開について言及
11月20日のセッション(Finding the Balance Between Cost, Flexibility and Technology Improvement for Heavy Launch Vehicles)では、Vegaロケット再開についての言及がありました。
ESAの宇宙輸送オフィスの責任者であるThilo Kranz氏は、Vegaロケットが今年7月の打ち上げ失敗を繰り返さないように、ESAは数100万ユーロを投資する準備をしている語りました。
今回のESAの資金投下の焦点は、新規開発ではなくVegaロケットの安全性強化であり、特定された障害モードを繰り返さないことを重視していると述べました。
しかし、Vegaロケットの件は11月27日と28日にスペインのセビージャで行われる閣僚会議の主要な焦点ではなく、今後3年間のESAの資金調達プログラムの決定が主要な議題であると言及しました。
Vegaロケットの後継であるVega Cロケットの初飛行を来年上半期に予定しているArianespaceは、今後の打ち上げスケジュールの変更については述べませんでした。
来年のSpace Tech Expo Europeは、同じくブレーメンで2020年11月17日~11月19日の日程で開催予定です。また、来年のSpace Tech Expo USAは、カリフォルニアのロングビーチで2020年5月18日~5月20日の日程で開催予定です。
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参考文献
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