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ボーイングの有人宇宙船のレビュー完了し2回目の試験飛行へ【週刊宇宙ビジネスニュース 7/6〜7/12】

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Boeingの有人宇宙船の軌道飛行試験失敗に関するNASAからのレビューが全て完了

NASAは7月8日に、Boeingの有人宇宙船CST-100 Starliner(以下、スターライナー)の軌道飛行試験(OFT-1)失敗に関するレビューを全て完了したことを発表しました。

NASAは民間による有人輸送プログラム(Commercial Crew Program)の一環として、2回目の軌道飛行試験(OFT-2)を実施しスターライナーを国際宇宙ステーションに再飛行させる準備を進めています。

BoeingがNASAと協力して対処すべき課題は80項目に上り、それらの課題への対処はすでに進行中とのことです。課題の全リストは機密事項であり非公開ですが、是正措置と予防措置はは以下のカテゴリーに分かれています。

昨年12月にISSに到着できず地球に帰還した際のスターライナーの様子 Credit : NASA/Bill Ingalls
  1. ・テストとシミュレーション

合計で21項目の推奨事項。
利用可能な最大量の飛行アセットを使用して、各フライトの前に記録を十分に取得する試験を実施すること。シミュレーションとエミュレーションのギャップへの対処など。

  1. ・要件

合計で10項目の推奨事項。
システム全体におけるテストカバレッジを確保するための、すべてのソフトウェア要件の評価など。

  1. ・プロセスと運用の改善

合計で35項目の推奨事項。
レビューに関わる人員増加、安全性が重要な分野における専門家の関与の増加など。

  1. ・ソフトウェア

合計で7項目の推奨事項。
ミッション経過時間とサービスモジュールの異常値を修正するソフトウェアコード更新など。

  1. ・ハードウェア

合計で7項目の推奨事項。
独立した検証および妥当性確認アプローチ(IV& V)の修正、帯域外干渉の低減のための高周波フィルターの設置など。

今回のレビューを終えてBoeingは、スターライナーの2回目の無人軌道飛行試験を無償で実施することを発表しました。NASAのCommercial Crew ProgramのマネージャーであるSteve Stichは、NASAがソフトウェアのレビューに十分な時間を割くことが出来なかったことを認めています。

また、Stich氏は、既にNASAはBoeingとの親交が深かったために、潜在的な問題に気づかなかった可能性があるとも発言しています。先進的なアプローチを採用している新興企業SpaceXに注目しすぎていたのです。具体的に以下のようなコメントを出しています。

When one provider has a newer approach than another, it’s often natural for a human being to spend more time on that newer approach, and maybe we didn’t quite take the time we needed with the more traditional approach.
(訳:あるプロバイダが他のプロバイダよりも先進的なアプローチを採用している場合、組織が先進的なアプローチのレビューに多くの時間を費やすのは自然なことであり、我々は伝統的なアプローチのレビューに必要な時間を十分に取ることができなかったのかもしれません。)

※上記の新しいアプローチとはSpaceXのクルードラゴンを指し、伝統的なアプローチとはBoeingのスターライナーを指しています。

Stich氏は、2回目の軌道飛行試験の具体的な日程の明言は避けましたが、今後半年以内に実施する予定とのことです。また、スターライナーの有人飛行試験は来年春に実施する可能性があり、BoeingがNASAのCommercial Crew Programから脱落する可能性はないとStich氏はコメントしました。

関係性をより強固にしながら2回目の軌道飛行試験に臨むNASAとBoeingに引き続き注目です。

軌道上を飛行するスターライナーのイメージ図 Credit : Boeing

アリアン6の初打ち上げは早くても2021年後半に

ESA(欧州宇宙機関)は、新型ロケットのアリアン6の初打ち上げは、早くても2021年後半にずれこむことを発表しました。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響から、固体ロケットブースターの燃焼試験、アリアン6の現場稼働率の低下が予定のスケジュールを悪化させた原因と見られています。

ESAの宇宙輸送部門のディレクターであるDaniel Neuenschwander氏は、

While we know that the maiden flight will not take place before the second semester of 2021, we cannot at this moment precisely quantify the delay, and we cannot provide an exact launch date.
(訳:初飛行が2021年の後半までには行われないことは分かっているが、現時点では遅れを正確に定量化することはできず、正確な打ち上げ日を発表することはできない)

と、7月9日にフランス航空ジャーナリスト協会がArianeGroup本社で主催したイベントで発言しています。

また、フランスの宇宙機関CNESが建設しているアリアン6発射台の低温アームの問題も遅延の一因になっていると述べています。
今後のアリアン6の開発を見守っていきましょう。

宇宙空間を航行するアリアン6のイメージ図 Credit : ESA

Kleos Spaceが資金調達に成功

ルクセンブルクのデータ企業であるKleos Spaceが、Red Group Technologies (RGT)との300万ドルの戦略的契約を発表しました。RGTは自社の分析ツール群をKleos Spaceの衛星データと統合する予定です。

RGTは、米国が運営するC5ISR(コマンド、制御、通信、コンピュータ、戦闘システム、情報、監視、偵察)といったソリューションのスペシャリスト企業です。Kleos SpaceはRGTとの間で、中東および北米オフィスの製品のインテグレーターおよび販路拡大パートナーとなる契約を締結しました。

また、Kleos Spaceは180万ユーロ(約2億1000万円)の資金を、Kathmanduの創業者でBellamy’sの取締役であるJanet Cameronが運営する事業団体から獲得したことも発表しています。

Kleos Spaceは、インド宇宙機関(ISRO)のPSLVロケットで小型衛星を打ち上げ予定です。今回の衛星ミッションは、場所の特定が困難な違法船舶を検出することを目的としています。
今後のKleos Spaceに注目です。

Kleos Space Scouting Missionの小型衛星のイメージ図 Credit : Kleos Space S.A

さらに、欧州の宇宙開発関連でもう一つ。
スウェーデンで衛星機器や地上試験機器を扱うAAC Microtecとスコットランドの衛星メーカーClyde Spaceが2018年に合併して作られた企業であるAAC Clydeは、小型衛星のオペレーターとしてコンステレーション事業に取り組むAAC Clydeの事業開発担当副社長としてPeter Anderson氏が就任することを発表しました。

Peter Anderson氏は、グラスゴー大学で機械工学の学士号を取得し、西スコットランド大学院でコンピュータ支援および解析のポストグラデュエートディプロマ(修士課程から修士論文のみを除いた課程)を終了しています。

その後Anderson氏は2015年にAAC Clydeに入社し、事業開発ミッション&サービス部門の責任者として、AAC ClydeのSaaS(Space as a Service)に尽力してきました。また、様々な主要契約の交渉も主導してきた人材です。入社5年で経営に関わることは若手人材の抜擢と言えるでしょう。今後のAAC Clydeにも注目です。

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