令和8年熊本地震で衛星データを活用。JAXAや企業による緊急観測・被害推定・復旧支援【随時更新】
「令和8年熊本地震」を受け、JAXAや宇宙関連企業各社が、衛星による被災地域の緊急観測やデータの提供、復旧・復興を支えるサービスの無償提供などに取り組んでいます。宇宙技術が災害対応にどのように活かされているのか、各機関や企業の動きをまとめました。
7月28日に発生した「令和8年熊本地震」を受け、JAXAや宇宙関連企業各社が、衛星による被災地域の緊急観測やデータの提供、復旧・復興を支えるサービスの無償提供などに取り組んでいます。
本記事では、宇宙技術が災害対応にどのように活かされているのか、各機関や企業の動きをまとめました。
今後の防災・減災対応を考える参考となりましたら幸いです。
「だいち2号」「だいち4号」が緊急観測、国土地理院が地殻変動を解析
JAXAによると、地震の発生を受け、国内の防災機関などからの要請に基づき、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」と先進レーダ衛星「だいち4号」による緊急観測を行いました。地震が起きた7月28日以降に取得したデータを関係機関へ提供したほか、地震前のアーカイブデータとあわせて、公共利用や研究利用などの非商用目的向けに公開しています。
2024年に打ち上げられた、だいち4号は、高分解能モードでだいち2号と同じ3mの分解能を維持しながら、1回の観測幅を50kmから200kmへ拡大しました。広域に被害が及ぶ災害でも、一度により広い範囲を捉えられるほか、同じ地域を観測できる頻度の向上にもつながります。
(続報・令和8年熊本地震 緊急観測)
JAXAは関係省庁の要請を受け、7/29夜に「だいち4号(ALOS-4)」による緊急観測を実施、衛星データおよび関連情報を提供しました。 pic.twitter.com/x2jROEYcmr— JAXAサテライトナビゲーター (@satellite_jaxa) July 30, 2026
国土地理院は、だいち2号とだいち4号が地震前後に取得したデータを使い、SAR干渉解析を行いました。さらに、異なる方向からの観測結果を組み合わせる2.5次元解析により、日奈久断層帯の北西部で最大約1mの東向きの変動と、最大約50cmの沈降が見られたと発表しました。
なお、今回の解析結果は速報で、今後の詳しい分析によって更新される可能性があります。
各国の研究機関も観測や分析に協力
熊本地震では、国際協力プロジェクト「センチネルアジア」と国際災害チャータも発動しました。
宙畑メモ センチネルアジア
「センチネルアジア(Sentinel Asia)」は、アジア太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF:Asia-Pacific Regional Space Agency Forum)の取り組みとして2006 年に発足した、アジア太平洋地域における防災活動を、宇宙技術を活用して支援すること目的とした国際的な協力枠組みです。
地球観測衛星の観測画像やその解析結果などをインターネット上で共有し、自然災害による被害の軽減を目指しています。
各国の災害に世界の衛星が総結集! センチネルアジアと国際災害チャータの概要と活躍する衛星一覧
センチネルアジアのWebサイトには、JAXAの「だいち2号」のほか、台湾宇宙機関(TASA)の「FORMOSAT-8A」「FORMOSAT-5」、カザフスタンの「KazEOSat-1」が撮影した画像が掲載されています。
解析成果も公開されています。千葉大学は「だいち2号」のデータから、地震前後のレーダー画像の類似度(コヒーレンス)の変化を調べ、建物の倒壊や液状化などで地表の状態が変わった可能性がある場所を抽出しました。
シンガポール南洋理工大学のリモートセンシング研究室(EOS-RS)は、欧州の地球観測衛星「Sentinel-1」のSAR画像を使い、予備的な被害推定図を作成しました。
EOS-RSは、4月4日から7月16日までに撮影された地震前の画像と、地震後の7月28日の画像を比較。翌29日には、八代市、宇土市・宇城市、熊本市周辺で地表の変化が大きかった場所を示す地図を公開しました。色付きの画素は約30m四方で、黄色から赤色になるほど変化が大きかったことを示しています。
On 28 July 2026, a severe earthquake occurred in Kumamoto Prefecture, Japan, @Sentinel_Asia was activated at the request of #ADRC. Information has been uploaded to the Sentinel Asia website.https://t.co/xPCYtFiSKX
Map produced by #EOS pic.twitter.com/6ySQtuLmGB— Sentinel Asia (@Sentinel_Asia) July 30, 2026
一部の地域では、報道や写真、動画と照らし合わせた予備的な検証も行われました。ただし、EOS-RSの分析で、赤く示された場所で実際に被害が確認されたわけではありません。植生の多い場所や山間部では精度が下がり、誤検出や見落としも起こり得ます。現地で確認すべき地域を絞るための手がかりとなる地図です。
民間企業による緊急観測・解析
<国際航業>衛星データと過去の被害統計から建築物被害棟数を推定
国際航業は、Sentinel-1が観測したデータを使い、建造物に被害が発生した可能性のある地域を推定しました。地震前の7月5~17日と、地震前後にあたる17~29日の干渉性の変化を比較し、被害の可能性を4段階で示しています。
令和8年熊本地震の被害状況推定図を公開しました。
地震発生前後の衛星SAR観測データから、建造物の被害や液状化現象などが発生した範囲と状況を推定しています。
被災された方々にお見舞いを申し上げるとともに、この情報が、被災状況の把握ならびに今後の復旧に少しでもお役に立てれば幸いです。 pic.twitter.com/1BtoEbTVAw
— 国際航業株式会社 / Kokusai Kogyo Co., Ltd. (@Kokusai_kogyo) July 30, 2026
この結果と過去の災害の被害統計から、災害救助法が適用された熊本県内21市町村の建築物被害棟数も推定しました。ただし、発災直後の一次スクリーニングを目的として算出した速報的な推計値であり、地域の建築構造の違いや地形条件などにより、推計結果には誤差が含まれます。市町村ごとの建築物総数は国土地理院の「基盤地図情報(建築物)」を採用しているため、住家だけでなく非住家も含まれています。
また、SAR画像で捉えた変化には、倒壊や損壊、火災、液状化だけでなく、建物の増改築や地殻変動なども含まれるため、実際の被害や行政による被害認定とは一致しない場合があります。
日奈久断層と八代港周辺では、航空レーザ計測を実施しました。また、7月30日には熊本県内で斜め写真213枚を撮影し、八代市鏡町に点在する被災家屋や氷川町の「道の駅 竜北」で発生した路面の地割れなどを捉えました。前日の29日にはパスコと共同で421枚を撮影しており、八代宮の社殿の一部倒壊や、長崎県島原市にある眉山の表層崩壊を記録しています。
<スカパーJSAT・QPS研究所・日本工営>
緊急観測を実施。画像と解析結果の一部を公開
QPS研究所は発災直後から、自社の小型SAR衛星「QPS-SAR」で被災地の緊急観測を実施しました。関係省庁と連携し、発表時点で計15回を観測。このうち9回は、発災から48時間以内に行われました。
スカパーJSATと日本工営は、QPS-SARの観測データを使って被災地域を広域に調査・解析しました。3社は、被災自治体や防災関係機関などでの活用を目的に、観測画像と解析結果の一部を8月5日に公開しました。
<パスコ>だいち2号、Sentinel-1、Pléiades Neoの画像を解析
パスコは7月29日から、衛星画像を使って日奈久断層帯周辺の地表変状を調べました。だいち2号とSentinel-1のデータを使ったInSAR解析では位相の不連続ラインを判読し、だいち2号のピクセルオフセット解析では主断層周辺の変位境界を抽出しました。
また、エアバスの高分解能光学衛星「Pléiades Neo」の画像を使い、地表の変状箇所を判読しました。これらの結果をもとに翌30日から現地調査を行い、日奈久断層帯で地表地震断層を確認しました。
衛星画像の解析と並行して、29日には国際航業と共同で、固定翼機による航空写真の撮影も実施しました。八代市では、橋や道路、建物、八代城跡の石垣などの損壊や、貨物列車の脱線を撮影。このほか、熊本市や宇城市、嘉島町の被害、長崎県島原市の眉山や平成新山周辺で発生した斜面崩壊なども捉えています。
<Synspective>緊急観測を実施。判読結果を関係機関へ提供
Synspectiveは、自社の小型SAR衛星「StriX」で熊本県中部一帯を撮像し、取得したデータと判読結果を関係機関へ提供しました。
公開された画像には甲佐町周辺の拡大図も含まれています。撮像範囲全域の斜面災害を判読した結果、判読可能な斜面では大きな崩壊は確認されなかったとしています。
Synspectiveは自社衛星による観測に加え、JAXAのだいち2号のデータを使った地殻変動解析も行いました。地震前の2025年8月12日と地震後の7月28日に撮像された画像をInSARとピクセルオフセット解析の2つの手法で解析し、日奈久断層帯に沿って最大約1mの地表変位を検出しました。この結果は、国土地理院の解析やGNSSで計測された地殻変動とも整合しているということです。
<アクセルスペース>光学衛星で被災地を観測。発災前後の画像を無償公開
アクセルスペースは、自社の小型光学衛星「GRUS-1」で被災地域を複数回観測し、取得した画像データを関係機関へ提供しました。
また、8月6日に撮影した熊本県八代市周辺の画像と、比較に利用できる発災前の5月18日に撮影した熊本県周辺の画像を無償公開しました。いずれも、自然な色合いで表示したトゥルーカラー画像と、マルチスペクトル画像をダウンロードできます。
公開画像は、被害状況の把握や復旧・復興支援などの災害対応のほか、報道や研究を目的に利用できます。詳しい利用方法は、令和8年熊本地震特設ページをご確認ください。
民間企業によるサービス提供
被害情報マップを公開。建物損壊のAI自動判読も
サグリは、公的機関や大手メディア、SNS、衛星解析、現地からの投稿をまとめた「令和8年熊本地震 被害情報マップ」を一般公開しました。マップは10分ごとに自動更新され、JAXAが公開した衛星解析データなども順次反映されます。現地にいる人は、公式LINEを通じて写真と位置情報を投稿できます。
また、サグリは、長距離無人航空機による災害対策情報支援システムの構築を目指すスタートアップ企業のテラ・ラボと連携し、SAR衛星と航空機、AIを組み合わせて建物被害を調べました。
SAR画像の解析結果をもとに調査範囲を絞り込み、翌31日に八代市と益城町を空撮。テラ・ラボが取得した地上画素寸法約7cmの航空画像をサグリがAIで解析し、結果を関係機関に共有しました。公開された解析結果では、被害家屋65棟を自動抽出したとしています。
不動産AIツール「WHERE」を無償提供
WHEREは8月1日から、熊本地震の復旧・復興に携わる企業や自治体を対象に、不動産AIツール「WHERE」の無償提供を始めました。「WHERE」は、衛星データとAIを活用した土地・建物情報のデータベースです。
現場担当者はスマートフォンやタブレットを使い、対象となる土地や建物の位置、周辺状況などを確認できます。現地の写真やコメントを位置情報とともに記録すると、PC版を使う本部や復旧チームにもリアルタイムで共有されます。集めた情報は、安全確認や修繕、解体、現地調査、復旧計画などに利用できます。
利用方法や条件の詳細は、プレスリリースをご確認ください。
参考
ALOS-2 / PALSAR-2 観測プロダクト(JAXA)
2026年7月28日令和8年熊本地震に伴う地殻変動(国土地理院)
Earthquake in Kumamoto Prefecture, Japan on 28 July, 2026
令和8年熊本地震のための緊急観測について(スカパーJSAT)
令和8年熊本地震における光学衛星観測データの無償提供について(アクセルスペース)
「令和8年熊本地震 被害情報マップ」を開設・一般公開のお知らせ
株式会社WHERE、令和8年熊本地震の復旧・復興対応の支援に向け、現場と本部をつなぐ不動産AIツール『WHERE』の無償提供を開始

