花王、清潔を提供する技術を宇宙にも。JAXAがISSに搭載可と判断した10のアイデア【宇宙ビジネスニュース】
【2021年11月29日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。
JAXAが宇宙と地上の生活課題を解決するアイデアを募集し、10製品が選定
JAXAは、宇宙滞在中の生活と地上での生活に共通する課題テーマおよび解決策を合わせたアイデアの募集を2020年7月から9月にかけて実施していました。この募集には94件のアイデアが寄せられ、ISSへ搭載可と判断された10個の生活用品が発表されました。
「アストロソックスTM」ワコール・人間科学研究所
「宇宙船内服」資生堂・シタテル・スノーピーク・三越伊勢丹
「オーラルピース」トライフ・オーラルピースプロジェクト
タブレット型ハミガキ&マウスウオッシュ「mouthpace」TSUYOMI
「すすぎが簡単なハミガキ」ライオン
「3D Space Shampoo Sheet」花王・ヘアケア研究所・包装技術研究所
「ギャツビー スペースシャワーペーパー ボディ用/頭皮用」マンダム・スキンサイエンス開発研究所
「Space Laundry Sheet」 花王・ハウスホールド研究所
「Fixpace®(フィクスペース®)」 久光製薬株式会社
これらの生活用品は、打ち上げに向けた準備を進め、2022年頃にISSに搭載予定とのことです。
花王、清潔を提供する技術を宇宙にも
日用品メーカーの花王が着目したのは、ISSでは使用できる水が限られているという課題でした。
ISSに滞在している宇宙飛行士は、汗がついたり臭いが気になったりしても、何日も同じ衣類を着用し続けなくてはなりません。衣服が汚れてしまった場合も洗濯はできないため、廃棄しているそうです。
また、洗髪はごくわずかな量の水と特殊なシャンプー液を使って行われています。無重力環境下であることから、周囲にシャンプー液が飛散しないよう、注意しながら洗髪を行わなければなりませんでした。
このような課題を踏まえて花王が提案し、採用されたのが、衣類の汚れやニオイを除去する衣類用清浄シート「Space Laundry Sheet」と、簡便に頭皮や髪の汚れを拭きとれる洗髪シート「3D Space Shampoo Sheet」です。
花王は、今回開発した製品から得られた知見は、宇宙空間のみならず、被災時や入院時、さらには水不足の国や地域への応用も期待されると説明しています。
2021年8月から9月に実施された2回目の募集で、JAXAは宇宙ビジネスへの参入機会に繋がることや広告・宣伝への活用が可能であること、地上での実証施設を利用できることなどを応募のメリットとして挙げました。
今後も本枠組を活用して多くの技術や製品が生まれるのではないかと期待されます。
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参考
宇宙生活/地上生活に共通する課題テーマ・解決策の結果報告について
花王の「Space Laundry Sheet」と「3D Space Shampoo Sheet」が国際宇宙ステーション(ISS)に搭載決定