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若田宇宙飛行士が5回目の宇宙へ。記者会見で語られた米露・座席交換の意義【宇宙ビジネスニュース】

【2022年7月25日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。

7月21日、JAXAが記者会見を開催し、SpaceXのクルードラゴン宇宙船運用5号機(Crew-5)への搭乗およびISS長期滞在に向けて訓練を行なっているJAXAの若田光一宇宙飛行士が意気込みを語りました。

米露の飛行士とともに5回目の宇宙へ

若田さんが搭乗するCrew-5の打ち上げは、2022年9月以降に予定されています。SpaceXのクルードラゴン宇宙船に日本人が搭乗するのは、野口聡一さんと星出彰彦さんに続く3人目。このことについて若田さんは「日本が長年培ってきた有人宇宙技術分野での信頼の証であり、同時に国際協力の象徴の証」だと説明しました。

Credit : NASA

7月15日には、ロシアの宇宙機関ロスコスモスがNASAとの間で座席交換を行う協定を締結したことを発表。これにより、ソユーズMS-22にNASAのフランク・ルビオさん、Crew-5にはロスコスモスのアンナ・キキナさんが若田さんらとともに搭乗することが決まりました。

座席交換は、ISSを安定的に運用する上で重要なことだと若田さんはいいます。

「宇宙に行く乗り物が一つであると、もしそのシステムに何らかのトラブルがあった場合にその宇宙船を使えなくなってしまうことがあります。ISSを安定的に運用していくためには、バックアップも含めて宇宙往還のシステムを複数持っておくってことは非常に重要です」

「2003年のスペースシャトルコロンビア号の事故後、スペースシャトルは2年半飛べませんでした。その2年半、宇宙セッションが中断したかというと、中断せずに運用を続けられたんですね。それはロシアのソユーズ宇宙船があったからです。ですから、ISSという国際協力プロジェクトのロバスト性(堅牢性)という観点からは、複数の異なる宇宙機によって宇宙ステーションに行く能力を維持することは非常に重要です。そういう意味で、今回の米露の座席交換が成立したということは、非常に重要だと思っています」

また、緊迫する国際情勢の影響について尋ねると、若田さんは、現時点では情勢がISSの運用に大きな影響を与えていることはないと説明した上で、

「私達宇宙⾶⾏⼠たちが有⼈宇宙活動の現場でできることは、世界各国の宇宙⾶⾏⼠たちとチームワークをきちんと取ってISSの利⽤成果を最⼤化できるように⽇々努⼒するということで、この取り組みの考え⽅はこれまでと全く変わらないと思います」

と語りました。

クルードラゴン宇宙船、最新システムの導入で訓練を短縮

宙畑のインタビュー取材で、若田さんはアポロ11号の月面着陸をきっかけに宇宙飛行士を志したことを明かしてくださいました。

記者会見の冒頭の挨拶では、2022年はアルテミス計画の一環でNASAの「SLSロケット」が打ち上げられ、月探査が本格化することが説明されました。ISSは月探査においても貢献が期待されています。若田さんは、

「ISSは月・火星探査に向けた技術実証の場として非常に重要です。そういう点にも留意してISSの長期滞在に臨みたいと思っています」

と意気込みました。また、ISSにある月面や火星の重力を模擬できる遠心加速器の利用例として、月面車のギアなどに使う潤滑オイルが宇宙でどのような挙動をするか調査する実験が紹介されました。

今回の若田さんの宇宙飛行は、日本人としては最多の5回目。楽しみにしていることについて聞かれると、クルードラゴンでISSに訪れることと訓練は実施していたものの機会がなかったという船外活動を挙げました。

「(クルードラゴン宇宙船は)やはり新しい時代の操縦桿もない宇宙船で、タブレットで操縦しているという感覚ですし、かなり⾃動化が進んでいます。そのため訓練時間がかなり少なく済んでいるんですね。より多くの⽅が宇宙⾶⾏、宇宙旅⾏を実現するための新しいシステムになってきていると思いますので、そういうシステムの宇宙⾶⾏を楽しみにしています」

クルードラゴン宇宙船内の様子 Credit : NASA

Crew-5打ち上げやISSへ向かう様子、6カ月にわたるISS滞在中に実際される各ミッションは、見どころ満載のものとなりそうです。

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参考

若田宇宙飛行士ISS長期滞在ミッション特設サイト