宙畑 Sorabatake

解析ノートブック

いつ空いてるの!? 無料衛星データでディズニーランドの混雑予想チャレンジ(前編)

いつも混んでいる(と思われがちな)ディズニーランドもきっと空いているタイミングがあるのでは?と衛星データで解析チャレンジ!

マンガで技術をわかりやすく! わかばちゃんと学ぶ シリーズ著者の湊川あい(@llminatoll)さんに本記事の概要をマンガ化していただきました。

まずはこちらをお楽しみください。

さて、ここからが本編。

ディズニーランドはいつの季節に行ってもとても素敵。何度行っても飽きることがありません。いや、むしろ年を重ねるごとに想いは強くなるといっても良いでしょう。

しかーし、なんといっても気になるのは”混雑状況”。

なんとか少しでも空いている日に夢の国へ繰り出せないものか……。

というわけで、「宇宙データ使ってみた-Space Data Utilization-」の第8弾。今回は今年のディズニーランドの混雑状況を去年の衛星画像を使って予想してみます! はじまりはじまり~。

※本記事は宙畑メンバーが気になったヒト・モノ・コトを衛星画像から探す不定期連載「宇宙データ使ってみた-Space Data Utilization-」の第8弾です。まだまだ修行中の身のため至らない点があるかと思いますがご容赦・アドバイスいただけますと幸いです!

(1)衛星画像でディズニーランドの混雑予想【途中経過報告】

衛星画像でディズニーランドの駐車場を見てみた Credit : sorabatake

最初に申し上げておきますと、この原稿を書いている時点で解析は完了しておりません。やはり、夢の国への切符はそんなに簡単ではなかったわけです。

ただし、上図に示すように、衛星画像を使って駐車場を見ることで車が停まっているエリアはある程度確認することができました。車1台1台は見えずともアスファルトとの区別はつくということです。

(2)衛星データからディズニーランドの混雑を予測する計画の全貌

夢の国の混雑予想大作戦の全貌 Credit : sorabatake

では、どのようにしてディズニーランドの混雑を計測できると考えたか、その全貌をまず紹介します。

【案1】園内の様子を衛星で撮影する

これが最初に思いつく案です。

しかし、これまで宙畑でご紹介してきたように無料の衛星画像では解像度が低く人までは見ることができません。

人影まで見える衛星画像は1枚100万円程度します。

ひとつのシーズンの混雑状況を確認するためには、2カ月分の衛星画像が必要で、すべて買っていてはディズニーランドに行く前に破産してしまいます。これでは本末転倒です。

 

【案2】SNSの投稿数の推移を追ってみる

これも結構いいアイディアですが、実際にディズニーランドにいるのか、ディズニーに行きたいと夢の国へ想いを馳せているのかなかなか判別が難しいなと思いました。

また、SNSを利用している世代が限られており世代の網羅性が低い懸念があります。

園内の様子をSNSから推測するのは難しそうです。

【案3】夢の国までの交通手段を調べる

そこで、交通手段から推測できないかと考えました。

ディズニーランドまでの交通手段は主に2つ。①電車と②自動車です。

①電車

舞浜駅の乗降者数が分かれば、電車でディズニーランドに来る人の数の大枠が分かると考えました。

調べてみると、

国土数値情報 駅別乗降客数データ
しかしこれは日別の乗降者数は書いていない様子……

東京公共交通オープンデータチャレンジ
名前の通り、交通関係のオープンデータを扱っている様子……
データを見るためには申し込みが必要なので、とりあえず申し込んでみることにします。

地域経済分析システムRESAS

政府が運営しているシステムで、観光分析という項目で目的地分析ができる項目があります。
交通手段は自動車と公共交通機関が選べます。

画面左下にNAVITIMEの表示があるので、NAVITIMEのデータを基にしているようです。

RESAS Credit : RESAS

東京ディズニーリゾートで調べてみると、右肩上がりのグラフになりました。

これはこれでなかなか面白そうなデータなのですが、月ごとのデータになっており、今回欲しいデータとはちょっと違う感じです。

月別検索回数の推移(目的地) Credit : RESAS

②自動車

自動車についてもRESASで見ることができます。

目的地検索ランキングの推移 Credit : RESAS

しかし、こちらも月別なのが難点です。

NAVITIMEは目的地を検索するときに使いますが、目的地についたら車をどうするのか……駐車場に停めるでしょう。
では、なんとかして、ディズニーランドの駐車場に停めている車を計測する良い方法はないでしょうか……。

……!

そうです! 衛星で見てみてはどうでしょうかー!

我々はこの時のために衛星データの勉強をしていたと言っても過言ではないのです。

早速、ディズニーランドの駐車場を撮影した衛星画像を見てみることにしました。ちなみに、ランドの駐車場は平面のみで、立体駐車場はありません。

 

(3)衛星からディズニーランドの駐車場をチェック

まずは、ディズニーランドの駐車場の位置を確認します。公式サイトから情報が見つかりました。

https://www.tokyodisneyresort.jp/tdl/access/car.html

サイト内で駐車場となっている場所を衛星画像で見てみればよいということが分かります。
(余談ですが、こういう情報が単なる画像ではなく、位置情報付きで出てくるようになる未来を切に願っております。)

光学画像でディズニーランドの駐車場をみてみた

衛星画像にはいろいろな種類がありますが、最も一般的な光学画像(デジカメのような画像)で見てみることにします。

無料で確認できる解像度の良い衛星はSentinel-2という衛星で、EO Browserというサイトから確認できます。

確認してみた昨年の画像がこちら。

光学画像でみるディズニーランド。車一台一台は見えないが停まっているエリアは見える Credit : EO browser

たしかにディズニーランドの駐車場が見えます。

車の一台一台は見えませんが、アスファルトが見えている部分と車が停まっている(と思われる)ざらざらと見える部分があることが分かります。

しかし、調べてみると思いのほか雲がかかっている画像が多く、光学画像だけではディズニーランドの駐車場を調べるのは難しそうだということが分かりました。

SAR画像でディズニーランドの駐車場をみてみた

雲で見えない時の救世主と言えば?

そう、SAR画像です。

電波を飛ばして観測を行うため雲がかかっていても観測を行うことが可能です。ただし、光学のようにきれいな画像ではなく、妊婦さんのエコーのようなざらざらとした画像になり解釈が難しいと言われています。

先にみた光学衛星Sentinel-2のシリーズで、Sentinel-1というSAR衛星の画像もEO Browserで公開されているため、こちらも確認してみることにしました。

実際の画像がこちら。

SAR画像でみるディズニーランド。車一台一台は見えないが停まっているエリアは見える Credit : EO browser

SAR画像では、アスファルトの地面が見えている部分が黒っぽく、車が停まっている部分は電波を反射することが分かります。

よく分かりにくいという方のために空(から)の状態だと推測される駐車場の画像も見てみます。

SAR画像でみるディズニーランド。駐車場が空と推測される場合。 Credit : EO browser

いかがでしょうか。駐車場全域が黒く見えることが分かります。

このようにSAR画像でも駐車場の空き状況が見えることが確認できました。

少し話がそれますが、なぜこの画像で駐車場が空だと推測したかと言いますと、衛星が撮影している時刻に秘密があります。

このSentinel-1という衛星は世界中どこでもおおよそ午前6時と午後6時に撮影を行っています(くわしくはこちらの記事で解説しています)。

車が入っていると思われる画像は午後6時の画像で、空の駐車場と思われる画像は午前6時です。午前6時はまだ駐車場は空だろうと推定したわけです。

※ただしネットで調べてみると、公式サイトでは駐車場の開門時間が明記されておらず、6時台に閉門していると断言はできません。また、ブログなどによると、通常時の平日は朝5~6時台から、混雑時はより早く開門しているという情報もあります。ただ、午後6時に比較すると圧倒的に駐車数が少ないことは想定できます。

(4)衛星画像解析で駐車場の満車度合いを探る

雲の影響のないSAR画像に狙いを定めて、さらに掘り下げていくことにします。

SAR画像は前の章のように1枚だけではざらざらとしていてなんだかよく分かりにくい画像です。別の日の画像と比べることにより、差をはっきりと見ることができるようになります。

SAR画像のBefore/After合成画像 Credit : sorabatake

この図はSAR画像の前後比較の原理を示しています。

前の画像を青く、後の画像を赤く色づけて画像を合成するとどちらかの画像にしかなかったものが色づいて見えます。

この例ではリンゴがBeforeの画像にはなくAfterの画像で増えているので合成した画像では赤く、反対にフォークはBeforeの画像ではあったのにAfterの画像ではなくなっているので合成した画像では青く見えます。どちらの画像にもあるお皿は合成された画像では白く見えます。

このように時刻の異なる2枚の画像をそれぞれ青と赤に着色して合成することで、その時間で何が変わったのかを知ることができるのです。

ディズニーランドに話を戻します。先ほどの車が停まっているであろうSAR画像と、空の駐車場をそれぞれ赤と青に色づけて合成した画像がこちらです。

2017年12月9日(土)の午後6時頃(赤)と2017年11月9日(木)の午前6時頃(青)の合成画像

いかがでしょうか。たしかに駐車場の一部分が赤くなっており、この部分に車が停まっていることが分かります。

今回解析に用いた画像は
・赤:2017年12月9日(土)の午後6時頃の画像
・青:2017年11月9日(木)の午前6時の画像
です。

さすがに12月の土曜日の画像は停まっている車が多いことが分かります。

12月の平日の画像を赤く合成してみると、このような感じです。

2017年12月21日(木)の午後6時頃(赤)と2017年11月9日(木)の午前6時頃(青)の合成画像 Credit : sorabatake

先ほどの画像と比べて、駐車してある車の台数が少ないことが見て取れます。

今回の解析ではGoogle Earth EngineのCode Editorを用いています。実際のコードは以下のURLから確認できるので、ぜひ開いてみてください。
(閲覧にはGoogleアカウントが必要です)
https://code.earthengine.google.com/12b1c44790d510cc021403f343240f83

(5) 前編のまとめと次回予告(という名の、人員募集)

前編はここまで。

今回分かったことをまとめると以下のようになります。

● 無料公開されている衛星でディズニーの駐車場の停まり具合を見ることができる

● 光学画像でもSAR画像でも見ることができる

● ディズニーの駐車場は混雑時は通常よりも早く開門することがあるらしい

● SAR画像は2枚を重ねることで、より変化が鮮明になる

● Google Earth Engineはめっちゃ重いSAR画像でもそこそこサクサク動くすごい

後編では以下の2つに挑戦したいと思います。

● 時系列の変化を可視化する

今回の解析では、1枚ずつ合成して目視で混雑状況を確認していましたが、これでは2カ月分(60枚!)の画像を解析するのは困難です。

自動的に画像を合成し、赤い成分が広がる面積を拾ってきて時系列で表示させることが必要です。

● 舞浜駅の乗降者数を探る

今回は申し込むだけで終わってしまった東京公共交通オープンデータチャレンジの方のデータを覗いてみたいと思います。

日別データが入っているのか、含めて確認しなければいけません。

ということで、上記2つにチャレンジしていただける方を一般公募したいと思います!
お気軽に、宙畑のtwitterへDM、またはinfo@sorabatake.jpへメールください!

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