月の氷を探すNASAの探査ミッションが中止。探査機の機器等を企業や国際パートナーへ提供する可能性も【宇宙ビジネスニュース】
【2024年7月22日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。
7月17日、NASAは月の周辺で氷の探査を行う無人探査車によるミッション「Volatiles Investigating Polar Exploration Rover(VIPER)」を中止する意向を発表しました。
中止となった理由として、NASAはコスト増と打ち上げ時期の遅れ、さらなるコスト増のリスクがあることを挙げ、「(VIPERの継続は)ほかの商業月面輸送サービス(CLPS)ミッションの中止や中断を招く恐れがあります」とも説明しています。
VIPERは高さ2.5m、重量約430kgの中型ローバーで、1mのドリルや分光計システムなどが搭載される予定でした。
VIPERは、NASAのCLPSに選定されているAstroboticの月面着陸船により2023年後半に月面に輸送される予定でしたが、Astroboticの着陸船の開発や試験にかかる時間を確保するために、NASAは打ち上げを2024年に延期しました。しかし、VIPERの打ち上げはさらに2025年9月にずれ込むことになっていました。
Astroboticは2024年1月に同社初の月面着陸船「Peregrine」を打ち上げましたが、バルブの故障により推進剤が漏洩したと見られ、月面への軟着陸を断念しています。
米ベンチャーAstroboticの月面着陸船、推進剤の漏洩により月面着陸を断念【宇宙ビジネスニュース】
なお、AstroboticはNASAとの契約内で、Peregrineよりもペイロードの搭載容量が大きい月面着陸船によるミッション「Griffin Mission One」を継続し、2025年秋以降の打ち上げを目指すといいます。
NASA本部の科学ミッション本部副本部長であるニコラ・フォックスさんは、VIPERは中止になったものの、今後もNASAの月面の水資源を探す取り組みは継続することを説明しています。
「NASAは今後5年間、月面の氷やその他の資源を探すための一連のミッションを計画しています。今後の取り組みでは、VIPERに投入された技術と作業を最大限に活用しながら、月面探査の強力なポートフォリオを支える重要な資金を確保していきます」
NASA は今後 VIPER の機器とコンポーネントを解体し、将来の月面ミッションに再利用することを計画しているといいます。VIPERのシステムの使用を希望する産業界や国際パートナーからの連絡を受け付けているということです。(※連絡先などの詳細はこちら)